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「どうだ、あれから? いい人は見つかったかい?」
「ミスタ博斗。ワタシ、色々スタディしましたが、やっぱりフィアンセはヤマトナデシコがよろしと自分で思いましった」
「はあ? 自分の国の女は嫌なのか?」
「なんというか、こう、セルジナの人、みんなワタシの言う通りね。ミスタ達のように叱ってくれる人いません」
「ふーん」
「ワターシ、ジコシュチョウできるヤマトナデシコがほしいのでっす」
「博斗さん、再会の喜びはもちろんですが、とりあえず急いで片づける当面の問題があるのではありませんか?」
聞き慣れた声がした。
なんのことはない。ひかりが黒スーツの間から顔を覗かせていた。
「当面の問題?」
博斗はきょとんとしたが、すぐに、あやめの鞄をひったくった少年が、黒スーツに釣り上げられたままなのを思い出した。
少年は、博斗にはなんだかわからない言葉でわめき散らしている。
黒スーツの耳が真っ赤に染まっているところをみると、よほどひどい言葉遣いなのだろう。
「あのー、王子? その子を放してやるように言ってもらえない?」
「ホワット? しかし…」
「いや、その子と遊んでただけだから…。鞄をあやめさんに返してあげればそれで一件落着」
「はいー。わかりましった」
セルジナは、いま一つパッとしない表情だったが、黒スーツに何かささやいた。
黒スーツが手を離し、少年は地面にどすんと落ちた。
博斗は、その手からあやめの鞄を取り返すと、手を貸して少年を立たせた。
「今度は、捕まらないようにやるんだぞ」
博斗はそっと耳打ちした。
日本語が伝わったとも思えないが、少年は、自分を解放したのが博斗であることはわかったらしく、にっと歯をむき出すと、ウインクして、ぴゅっと立ち上がり、あっという間に走り去った。
「あやめさん、ほら、鞄」
「あ、ありがと。でも、いっとくけど、お礼なんかなんにもあげませんよ」
「ええい、俺はそんな意地汚い男じゃないぞ。なあ、セルジナ?」
セルジナは、博斗に答えなかった。その瞳は中空を見つめ、口は半開きになっている。まるでアホウな様子だ。
「う、美しいでっす」
「は?」
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