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博斗は、あらためてしげしげと女の顔を眺めた。
「ああ、確か、えーと、グレートようこうのおねえさん!」
博斗は、ぽんと手を打った。
「たなぼたさんでしたっけ?」
「高幡です」
「あ、そうそう、高幡あられさん」
「あ・や・め、です」
「は、はは、そうだった。ところで、こんな異国の地で、顔見知りの日本人同士がばったり出くわすなんて、これもなにかの縁。ということで、ソッタしません?」
「しつこいですよ、えーっと…」
「博斗。瀬谷博斗と言います。以後よろしく」
「あ、そう。じゃあ、ダクトさん」
「は・く・と」
「どっちでもいいです。お返しですから」
「う…」
小さな手が、あやめが小脇に抱えている鞄に伸びていた。
「あのー、あやめさん? 身の回りのものに気をつけたほうが…」
「え? え? あ、なに?」
あやめの鞄がひょいと奪われた。
鞄を奪ったのは、Tシャツに半ズボン姿の小さな少年だった。
「ちょっ…!」
あやめは振り返り、その横を博斗が駆け抜けて少年を追った。
「どろぼーっ!」
あやめは純然たる日本語で叫んだ。
その言葉を正しく理解できたものはまわりにいなかったが、言葉が伝えるだいたいの雰囲気なんてものはどこの国でも同じらしい、。
少年の行く手に、ぬっと男が立ちはだかった。
男は上から下まで黒ずくめのスーツで、日本人としてはそこそこ背が高いはずの博斗でさえ顎を上げて見上げるほどの上背があった。
男はにゅっと手を伸ばして少年の襟首を捕まえ、つまみあげた。
「イデラ、パ、ポッチャハンヌラ?」
男は何か言い、少年のもっている鞄を取り上げた。
「それ私の。返し…」
言いかけたあやめを制して、博斗が前に出た。
博斗は、黒いスーツの男に守られるようにして後ろに立っている男に見覚えがあった。
「セルジナ王子、この子を放すように言ってやってくれないか?」
「オウ! ワターシの名前を知っているユーは、ひょっとしーて…」
後ろの男が、黒スーツの男を横にどかせ、進み出た。
「よっ、プリンスさん」
「オーウ、ミスタ博斗っ! 探してましーた!」
セルジナ新藤は、にこにこと笑いながら、博斗に手を差し出した。
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