13

「…えちゃん!」

遥ははっと目を覚ました。


目の前に、玉次郎の生意気そうな顔が見える。

「おはよう、たまちゃん」

「おはよう、じゃないよ。ぜんぜん出てこないから気になってきてみたら…寝てるんだもん」


「寝てる…?」

遥は、自分がロングシートに座っていることに気づいた。

「み、みんなはっ?」

見回すと、遥の左右に、見慣れた顔が並んで座っていた。皆眠っている。


遥は、順番に起こしてまわった。

最後に遥は、桜を起こしにかかった。

「桜? 桜っ?」

遥は桜の頬を軽く叩いた。


「う…うん」

桜はゆっくりと目を開いた。


「大丈夫? なんともない? 生きてる?」

遥は、心配のあまり次から次へと質問を発した。


「だ、大丈夫だよ。…なんとも、ない」

桜は、にっこりと笑った。

「そう…よかった」

遥はうなずいた。


だが、遥の心は晴れなかった。

次から次へと、ムーの思惑通り。

自分達の力がどんどん吸い取られていく。

いったい何に使われるのかわからないが、いい気分のわけがない。


本気で、新しい必殺技でもなんでも考えて、これ以上ムーの思い通りにさせないようにしなくては。


遥は唇をへの字に結んで前を見つめた。

「どうしたの、お姉ちゃん?」

玉次郎が怪訝な顔つきで、険しい遥の顔を見上げている。

「ちょっと、ね」

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