12
ブルーが行動を起こそうとすると、空中に忽然とシグナルムーが現われ、ブルーとパンダグラフの間に着地した。
「どけっ!」
ブルーは飛び出し、シグナルムーを横から蹴って車両から突き落とした。そして、パンタグラフに向かう。
しかし、ブルーが近づくと、パンタグラフを覆っていた輝きが見る見る薄れていき、いつもの、見慣れた黒いパンタグラフに戻ってしまった。
「????」
ブルーは首を傾げた。
背後から声がした。
「遅かったな。緑色の奴のエネルギーは、これで全部頂いたってわけだ」
振り返ろうとしたブルーに、シグナルムーの容赦のない一撃が背中から加えられた。
空中で足を抱え込んで二回転して、ブルーはすとんと着地したか、着地した場所はホームに変わっていた。
シグナルムーは御満悦だった。
スクールファイブの一人分のエネルギーをそっくり頂いたのだ。
しかも、この特殊な空間のなかに残りの四人もとらわれたまま。
全員の力を奪い取るのも時間の問題だ。そうすれば、四神官様の復活はおろか、このままスクールファイブを倒すこともできる。シータ様もお喜びだろう。
シグナルムーは、屋根に開いた穴から、車内を覗きこんだ。
赤信号にとらわれたスクールレッドとスクールブラックが見える。ひとまず、このどちらかを…。
シグナルムーの横にぴんと張っていた架線が、いきなりだらんと垂れた。がくんと車両が揺れ、速度が見る見る低下していく。
「なんだぁ? 架線が切れちまったらエネルギーは奪えねえわ、この空間は維持出来ねえわ…大変なんだぞ! 何がおきやがっ…」
シグナルムーは言葉を止めた。架線は、何者かによって切られていた。
それどころか、パンタグラフまでもが、下半分だけを株のように残して、上半分がすっかりどこかに消えてしまっている。
シグナルムーの三色のライトが、怒りを示すように滅茶苦茶に輝いた。
「どこのどいつだ! こんなことをしやがったのはっ? 俺様に挑戦するとは、いい度胸…」
シグナルムーは、それ以上言葉を続けることができなかった。突然、シグナルムーの眼前に、真っ白な影が現れたかと思うと、シグナルムーを真ん中から縦に二つに切り裂いた。
「お前は…だれ…だ…」
左右に体が割れていくシグナルムーの最後の言葉は、それだけだった。
白い影は、車両の天井に転がったシグナルムーの二つの体を見下ろしていたが、すぐに姿を消した。
不意に赤信号の呪縛が解けて、レッドとブラックは勢い余って床に倒れこんだ。
「いたた…。みんなは、グリーンは、どうなったの?」
レッドは車両を見渡したが、グリーンはどこにもいなかった。代わりに、床には生身に戻った桜が倒れていた。
「桜さん!」
ブラックは桜に駆け寄った。
「桜、大丈夫なの? 大丈夫…よね?」
レッドはブラックにこわごわ尋ねた。
「…はい。命に別状はないようです」
ブラックはうなずいた。
「よかった。気絶してるだけかな」
レッドはほっと胸をなで下ろした。
「空が!」
イエローとブルーは、空を見て同時に叫んだ。空が赤から青、青から緑、そしてそれぞれの色の交錯へと目まぐるしく変わっていく。
空間が歪み、耳がきんきんと鳴った。
そして、次第に何も見えず、何も聞こえなくなっていった。
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