7
待機中だったモニターの一つに電源が入る。
暗さであまりはっきりとはわからないが、校舎の横のフェンスを飛び越えて、青っぽい影が続々と敷地内に入りこんでいた。
ひかりが操作パネルに取り付いた。
「暗視」
画面に赤いフィルターがかかり、その姿がはっきりと映し出された。
「戦闘員だ」
博斗はつぶやき、理事長は葉巻を灰皿に押し付けて揉み消した。
(聞こえるかスクールファイブ!)
「ん?」
博斗は思わず辺りを見回した。
「なんだ、いまの声は?」
「この声は…ピラコチャ…」
ひかりがぽつりと言った。
「この辺りの、ムーの力を持つ者に念を送っているのですよ」
「ピラコチャと言うと、あのデカブツだな」
博斗は素早く頭を働かせた。シータの次はあいつか。
(新怪人サナギムーを、この学園のどこかに植え付ける。サナギムーは夜明けとともに羽化し、さらに強力な怪人となり、学園を、そして街を破壊する)
「なんだと!」
(そうされたくなければ、夜明けまでに降伏し、パンドラキーを出せ! さもなくば、学園に来る来校者を、無差別に殺していく)
「くそっ!」
博斗はモニターを見上げ、そして、ドアに向かって歩き出そうとした。
「どうするのかね?」
「決まってます! サナギムーとやらを見つけ出して、羽化する前に叩く!」
「それは無理な相談だ。…朝まで待とう。彼女たちが起きてくるまで」
理事長はため息をついた。
「そうしたら夜が明けてしまう! 怪人が羽化する!」
「スクールファイブなら、羽化した怪人でもなんとかなるだろう。少なくとも、君がいくよりもはるかに可能性が高い」
「そしたら陽光祭は?」
「陽光祭は、片がつくまで休止するしかない。こういう事態ならば、君も納得するだろう?」
「納得できません!」
「だったら言ってみたまえ、君にいったい何が出来る? 君に、怪人を倒すことが出来るかね?」
「…で、できます」
「どうやって?」
博斗は黙り込んだ。
いや、待て。
「あれだ、あの、いつだったか貸してもらった、剣みたいな武器。あれなら…」
「あれは、まだ修理中です。桜さんからなんの連絡もまだありません」
ひかりが申し訳なさそうに口を差しはさんだ。
「だったら、俺のこのマッチョな肉体で…」
「冗談を言っている場合かね」
「冗談でもなんでも、あいつらにこれ以上、陽光祭をかき回されるのはごめんだ。…俺は、やります。何もやらないよりはやったほうがいいってのが、俺の持論ですから」
博斗は、理事長の次の言葉も待たずに、大股でずかずかと歩き、シュッとドアを開けて司令室を出た。
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