11

博斗は保健室のベッドにうつ伏せに寝かされた。

「博斗さん…どうしてあんな無茶をしたんですか?」

ひかりが、どこからか怪しげなシートを取り出してきた。

「これは、特製ですから…一時間もしないうちに痛みがひきますよ…」


「すんません…あの子は、悪くないんですから…。あの子を攻撃して、もう一度死なせたら、もうあの子はずっと大人のことなんか信じないまま、いなくなってしまう…」


「キャップ…あの子は、怪人です。シータさんが、あの子の憎悪の部分だけを自分に都合のいいように利用しているだけです…」

「そうかもしれないけど…でも、俺には、できません」

博斗は拳をベッドに叩きつけた。

「俺は、隊長失格ですね。こんな優柔不断じゃあ…」


ひかりは、博斗の背中をむき出しにした。

「まあ、ひどい…。でも、このシートを貼れば、すぐに治りますからね」

「…感謝してます」


ひんやりとした感触が背中を包んだ。

「?」

かと思うと、背中の皮を剥がしてそこにタバスコをこぼしたうえにタワシでこすったかのような、信じられない激痛が博斗を襲い、博斗は悲鳴一つあげる間もなく、あえなく失神した。


「…ただ、このシート…とても染みるんです」

ひかりは、くすりと笑うと、博斗の首筋を撫でた。


「大丈夫。貴方は、立派な隊長です。…貴方が、そういう人でなければ、私もここには…」

ひかりは言葉を飲みこむと、立ち上がった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る