桜は、こほんと咳払いをして、服の埃を落とした。

「それで、探知器ってどういうの?」

「半径二十メートル以内に爆弾があると警報するんだ」

「二十メートル? どういう根拠なの?」


「よくわかんない。出来たらそうなってた」

桜はあっけらかんとした顔で答えた。

「危険じゃないか。爆発に巻き込まれる危険があるんじゃないか?」

「さあ。僕は発明専門。探すのは僕じゃないから」

「…悪魔」


「どういう原理ですの?」

「さあ。僕自身、どうやってつくったかよく覚えてないんだ」

「そんなものをあてにしろといいますの?」


「そこはほら、人徳ってやつかな」

「ぜんぜん使い方が違いますよ」

由布が突き刺した。

「う…」


「にしても、あんた、なんでそんなものポケットに入れて持ち歩いてんの?」

「ほら、その辺の道端に誰かが捨てた爆弾が落ちてることって、よくあるじゃない」

「ぜんぜんありませんよ」

由布が突き刺した。

「う…」


「ま、まあ、試してみるとしよう」

博斗は桜から探知器を受け取ると、スイッチを入れた。


途端に、やかましい警報が鳴り響いた。

「こ、このすぐ近くだ! 二十メートル以内!」

思わず博斗は辺りを見回した。

「あれ、待てよ。司令室にムーの連中が入ってこられるわけがない」


桜は、床に積もっている爆弾のカスを指差した。

「たぶん、これに反応しちゃってるんだと思うよ」

「なーんだ。でも、効果があるって証明されたじゃない。じゃ、これ使って探しにいくわよ、翠?」

「な、なんでわたくしですの?」

「そりゃー、もしものときに、あんただけ生き残るなんて癪でしょ?」

「わけのわからない理由づけですわね。わかりましたわ、わかりました。やってやりますわよ」


「わたし達は、どうします?」

由布は燕を見た。

ところが燕は、真っ青な顔をして、小さく震えていた。

「どうしました、燕さん? やはり、具合が悪いのでは…」

「う、ううん。なんでもないよ」


「なんだ、腹が痛いのか?」

「う、うん。ちょっと…」

「どうせ、その辺に落ちてる饅頭でも拾い食いしたんじゃないの?」

桜がにやにやと燕をつついた。


「そんなことしないもんっ!!!!」

「わわわわっ!」

燕のものすごいボリュームに、桜は思わずのけぞった。


博斗も、燕の激しい反応にどきりとした。

「ど、どうしたんだ、燕君?」

「なんでもない。なんでもないよ。…でも、なんかへんだから、トイレいく」

燕は言うなり、すたすたと司令室を出ていった。


博斗は、燕の気配からなにか微妙なものを感じ取った。少なくとも、タイムーと戦っていたときの燕には、調子の悪い様子など微塵もなかった。なんとなく、気になる。

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