着々と、爆弾つきの時計が司令室に集められてきた。

「ようし、桜君、やってくれ」

「あいあいさー」

桜は、小さなアンテナ状の装置を取り出した。


「なんですの?」

「振動式分子破壊光線砲」

「しんどう…なに?」


「簡単に言えば、超高周波の振動を与えることで、爆弾に爆発する隙を与えずに、分子レベルから粉々に破壊してしまう装置だね」


「なんかよくわからないけど、大丈夫なんだろうな?」

「わ、わたくしたちが分解されたりはしないでしょうね?」

「まあ、見てなって」


光線の触れた範囲にある時計と爆弾は、見る見るぼろぼろと崩れ去り、埃のようになってしまった。

「はい、いっちょあがり。これで、ぜんぶ終わったよ。キャップ、壊れた時計は、必要経費で落としといてね」


桜は振動式分子破壊光線砲のスイッチを切ると、博斗のほうを向いた。

「うわぁぁぁぁぁぁ! こっちに向けるな!」

「どうして?」

「どうしてもだ!」

博斗は体の位置をずらした。こんなんでは命がいくつあっても足りない。


「とにかく、これで、十二個の爆弾を破壊した」

博斗はもう一度、数を確かめた。

「校内にある時計はすべてビデオでチェック済みだ」


「じゃあ、あと一個はどこ? もう調べてないところなんてないんでしょ?」

「怪人がまちがえたんだよ、きっと」


「いえ。まだそう判断を下すには早いと思います。時計以外のものに仕掛けられているという可能性はありせんか?」

由布が指摘した。

「その可能性も考えて、戦闘員と怪人の動きをチェックしましたが、それらしき動きはありません」


「時計は十二時までしかありませんもの、きっと、怪人は算数が苦手だったのですわ」

「燕みたいな怪人ね~」

遥が笑って、燕を見た。

「あれ? 燕、どうしたの? 冴えない顔して?」

「あはは、おなかへっちゃって…」


博斗は腕組みをしながら、確かめるようにつぶやいた。

「調査が徒労に終わっても誰も傷つかないだろうけど、もし十三個目が本当にあるとしたら、ほったらかしにして怪人を倒すと、たいへんなことになる」


「そうですね。もう一度、探してみたほうがよろしいのではないでしょうか?」

「でも、いったいどこを? 学園を隅から隅まで探すなんて、それこそ日が暮れちゃいますよ?」


「それに、他の生徒達がそんなに長い間おとなしくしていられるとは思えません。皮肉ですけど、この無限の時間のなかで、わたし達に残された時間は少ない気がします」


「そうだな。ビデオでチェックできなかった範囲を重点的に探してもらうことになるんだけど、ただ、その場合、爆弾は時計以外のものに仕掛けられていることになる」

「それは気が遠くなりますわ」

「でもまあ、探すしかないだろ?」


「大丈夫! 任せて!」

突然、桜が勢いよくVサインを出した。

「こんなこともあろうかと…」


桜は、さっきからいじくりまわしていた小型の機械を掲げた。

「僕はいつも、爆弾探知機をポケットに忍ばせてあるんだ! …って、あ、あれ、どうしたの、遥、翠?」


遥と翠は桜を袋叩きにした。

「はじめっから使え~!」

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