博斗は、壁をどんと叩いた。

「いまの俺達がするべきことは、一刻も早く学園を正常な時空間に戻すことだ。そのためには、怪人タイムーを倒さなければならない」


「でも、ばくだんは?」

「たぶん、連中はほんとうに学園中に爆弾をしかけているはずだ。したがって、タイムーを倒す前に、十三個の爆弾をすべて見つけ出し、処分する必要がある」


「どうやって?」

「とにかく片っ端から爆弾を探し出すしかない。手分けして、校内の時計を調べるんだ。俺とひかりさんが、いまから司令室のビデオをチェックするから、それで、タイムーと戦闘員が触った時計を一つずつ調べていけばいい」


「でも、爆弾を見つけたとして、どうすればいいのですか?」

「それは、これから考える。ひとまず発見することが先決だ」


ひかりはすでに席につき、端末の処理を開始した。モニターが分割表示され、学園の随所に設置された監視カメラの映像をスキャンし始めた。


一つのモニター画面が静止した。教員室前の廊下だ。青い戦闘員が、壁にかかった時計の下側に何かをとりつけている。


「さっそく一個目だ」

博斗は端末を操作して画面を拡大した。

「桜君、これだけでどんな構造の爆弾かわかるか?」


「…結線は時計にしかされていないみたいだから、時計ごと外せば大丈夫だと思うよ。強いショックを与えなければ爆発しないはずだ」


「オッケー! そうとわかればさっそく!」

遥が司令室を飛び出した。


「桜君、あの爆弾を解体する装置を作れるかい?」

「よ・ゆ・う。へそで茶ー沸かすより簡単だね」


遥と翠は校内を駆け回り、廊下と教室の爆弾を集めた。授業中に爆弾をしかけたためか、一般教室のなかにはひとつも爆弾がなく、教室では、音楽室に一個、調理室に一個あっただけだった。


桜は実験室にこもり、黙々と解体装置の開発に励んだ。

「…解体なんてヤボなことは言いっこなしだね。どうせなら…へへへ」


由布は、時を刻まない時計塔をみながら考えこんでいる。

何か、気になる。胸騒ぎがする。タイムーは、何かを隠している気がする。


燕は校庭を走り回った。

難航したのはグラウンドの時計で、三メートル近いポールのてっぺんに時計がとりつけられており、おまけにポールと一体構造になっているため、時計だけ外すというわけにはいかない。

しかしこれは、燕がポールを途中からぼきりとへし折ることで解決してしまった。


「はあ。智恵たん、うごかないかな?」

燕は、抱えていた時計をそっと地面に置くと、智恵たんC-ショックを腕から外して調べてみることにした。

ところが、C-ショックは、ぴたりと腕にはまったまま外れない。

バンドもがっちりと組み合わさったままで、どんなに燕が力を込めて鼻息を荒くしても、びくともしない。


「?」

首を傾げた燕は、腕を上げて、C-ショックをじっと見た。

コチコチと時を刻む音がする。


さすがの燕も、なにがおかしいのか気がついた。

C-ショックはデジタル時計だ。なぜコチコチと音がするのだろう。


再び歩き始めた燕の表情は青ざめていた。

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