レッドとイエローは木陰から飛び出し、タイムーンと正面で向き合った。

「おう? 死ぬ覚悟がようやくできたか?」


「死ぬのはお前達ですわ!」

イエローはびしっとタイムーンを指差すと、顔をタイムーンに向けたままレッドにささやいた。


「わたくしがさっきから考えていたことなのですが、わたくしの武器はハリケームという風を吸い込む相手に効果なしですわ。そして、あなたの武器では、サイクロムという、風を吐き出す相手に弾かれますわ」


「そう。あたしの武器のスピードじゃあ、サイクロムの風の壁には弾かれちゃう」

「わたくしの、最高マッハ7を超えるスマッシュでも?」


レッドが思わずイエローに振り向いた。

「いけるかも! それに、あたしのリボンは、逆に、吸い込む相手にだったら…ほら、洗濯機みたいに…!」


「案ずるより、生むが易し! ですわっ!」

イエローは手を伸ばし、レッドを引き寄せた。

「いきますわっ!」


イエローはラケットを突き出し、全力で駆け出した。

レッドは身を出来るだけかがめて低くして、そのイエローの背後に、まるで影のようにぴったりとくっついて駆けた。


二人は、ハリケームに向けて突っ込んだ。

「くらいなさいっ!」


イエローのラケットが、轟然とボールを打ち出した。

歪んだボールが唸りを上げてハリケームに突っ込むが、強力な吸引力によってコースをねじ曲げられ、あらぬ方向から弾き出された。


「いったはずよ、あなたの攻撃は効かないわ!」

ハリケームが高笑いし、宙に浮いたイエローを狙って風の渦を打ち出した。


渦はイエローを直撃し、イエローは勢いよく弾かれたが、にやりとしていた。


「いかん! ハリケーム、目くらましだ!」

サイクロムが横から叫んだ。


ハリケームは一瞬首を傾げ、イエローのすぐ後ろに控えていたレッドの存在にようやく気付いた。


「レッドリボンっ!」

レッドはリボンをしゅるしゅるとハリケームに突き出した。赤いリボンがハリケームの体を覆う竜巻に吸い込まれる。


リボンは猛烈な勢いで巻き取られていった。そして、ぴんと張り詰めたところで止まった。


「くっ、くっ!」

ハリケームはなんとかして、本体に絡まったリボンをほどこうとしているのだが、自らの風の勢いで絡み付いたリボンは、同じ風向きでいる限り、決して外れることはない。


「くぅっーーーー! やむを得ないわ!」

ハリケームはついに、ぶるんと身を震わせると、体を覆っていた渦を消し去った。その胴体は、ほとんど針金のような細い心棒のみであった。


「ハリケーム、いかん、渦を止めるな!」

サイクロムが叫んだが、すでにレッドは、リボンの柄から手を放し、クラブを両手に握り、ハリケームの正面に立っていた。


レッドは両側からクラブで挟み込むようにして、ハリケームの細い胴体をねじ曲げた。

「ぎ、ぎぃぇぇぇぇぇぇっ!」


ハリケームは絶叫し、消滅した。


「うぉぉぉぉっ、ハリケーム、ハリケーム!」

相方を倒されたサイクロムは雄たけびをあげた。

「許さん、許さーん!」


だが、そのサイクロムの真後ろにはすでにイエローが控えていた。


「すぐに、奥さんのところに送って差し上げますわ」

イエローはラケットを振りかざした。


周囲の空気を引き裂き、真空を生み出し、ボールがサイクロムの渦に突っ込んだ。

マッハ7のボールは、渦によってまったくコースを歪められることなく、ぼきりという鈍い音とともに、サイクロムの体を突きぬけて地面に突き刺さった。


サイクロムの体を覆っていた渦が消え、へし折られた胴体が、上下ばらばらの動きで地面に転がった。


レッドとイエローは、お互いにぜえぜえと息をつきながら、顔を見合わせた。

「1+1は?」

「11に決まってますわ」

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