7
レッドとイエローは木陰から飛び出し、タイムーンと正面で向き合った。
「おう? 死ぬ覚悟がようやくできたか?」
「死ぬのはお前達ですわ!」
イエローはびしっとタイムーンを指差すと、顔をタイムーンに向けたままレッドにささやいた。
「わたくしがさっきから考えていたことなのですが、わたくしの武器はハリケームという風を吸い込む相手に効果なしですわ。そして、あなたの武器では、サイクロムという、風を吐き出す相手に弾かれますわ」
「そう。あたしの武器のスピードじゃあ、サイクロムの風の壁には弾かれちゃう」
「わたくしの、最高マッハ7を超えるスマッシュでも?」
レッドが思わずイエローに振り向いた。
「いけるかも! それに、あたしのリボンは、逆に、吸い込む相手にだったら…ほら、洗濯機みたいに…!」
「案ずるより、生むが易し! ですわっ!」
イエローは手を伸ばし、レッドを引き寄せた。
「いきますわっ!」
イエローはラケットを突き出し、全力で駆け出した。
レッドは身を出来るだけかがめて低くして、そのイエローの背後に、まるで影のようにぴったりとくっついて駆けた。
二人は、ハリケームに向けて突っ込んだ。
「くらいなさいっ!」
イエローのラケットが、轟然とボールを打ち出した。
歪んだボールが唸りを上げてハリケームに突っ込むが、強力な吸引力によってコースをねじ曲げられ、あらぬ方向から弾き出された。
「いったはずよ、あなたの攻撃は効かないわ!」
ハリケームが高笑いし、宙に浮いたイエローを狙って風の渦を打ち出した。
渦はイエローを直撃し、イエローは勢いよく弾かれたが、にやりとしていた。
「いかん! ハリケーム、目くらましだ!」
サイクロムが横から叫んだ。
ハリケームは一瞬首を傾げ、イエローのすぐ後ろに控えていたレッドの存在にようやく気付いた。
「レッドリボンっ!」
レッドはリボンをしゅるしゅるとハリケームに突き出した。赤いリボンがハリケームの体を覆う竜巻に吸い込まれる。
リボンは猛烈な勢いで巻き取られていった。そして、ぴんと張り詰めたところで止まった。
「くっ、くっ!」
ハリケームはなんとかして、本体に絡まったリボンをほどこうとしているのだが、自らの風の勢いで絡み付いたリボンは、同じ風向きでいる限り、決して外れることはない。
「くぅっーーーー! やむを得ないわ!」
ハリケームはついに、ぶるんと身を震わせると、体を覆っていた渦を消し去った。その胴体は、ほとんど針金のような細い心棒のみであった。
「ハリケーム、いかん、渦を止めるな!」
サイクロムが叫んだが、すでにレッドは、リボンの柄から手を放し、クラブを両手に握り、ハリケームの正面に立っていた。
レッドは両側からクラブで挟み込むようにして、ハリケームの細い胴体をねじ曲げた。
「ぎ、ぎぃぇぇぇぇぇぇっ!」
ハリケームは絶叫し、消滅した。
「うぉぉぉぉっ、ハリケーム、ハリケーム!」
相方を倒されたサイクロムは雄たけびをあげた。
「許さん、許さーん!」
だが、そのサイクロムの真後ろにはすでにイエローが控えていた。
「すぐに、奥さんのところに送って差し上げますわ」
イエローはラケットを振りかざした。
周囲の空気を引き裂き、真空を生み出し、ボールがサイクロムの渦に突っ込んだ。
マッハ7のボールは、渦によってまったくコースを歪められることなく、ぼきりという鈍い音とともに、サイクロムの体を突きぬけて地面に突き刺さった。
サイクロムの体を覆っていた渦が消え、へし折られた胴体が、上下ばらばらの動きで地面に転がった。
レッドとイエローは、お互いにぜえぜえと息をつきながら、顔を見合わせた。
「1+1は?」
「11に決まってますわ」
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