三人は飛ぶように森を抜け、とたんに広い空間に飛び出した。


「来たか、ここだ!」

博斗が頂上で手を振っている。


グリーンはじめ三人は、頂上に立っていた博斗たちにすぐさま合流した。


「レッドとイエローは?」

「まだ怪人と戦っています。私達を逃がすために、たった二人で…」


「キャップ、時間がありません」

ひかりが口を挟んだ。


「ああ。とにかく、俺達は、あのロボット三等兵を宇宙に返さなければならない。それが最優先だ」

博斗は頭上に悠然と浮かぶタイタンを見上げた。幸い、まだ動き出す様子はない。シータがホルス達に話しかけて、うまく時間稼ぎをしているのだろう。


「私達はどうすればいいのですか?」

ブラックが尋ねた。


「するべきことは二つ。一つは、このテーブル石を壊して地下に侵入して、タイタンの制御機構をのっとること。もう一つは、タイタンの制御をのっとるまでの間、なんとかしてその動きを封じること」


「石をこわせばいいのね!」

ブルーが、答えるやいなやテーブル石に手刀を振り下ろした。


テーブル石はものの見事に粉々に砕け散った。

「こわしたよ!」


「君は、こういうことの理解は早いな」

博斗は苦笑した。


「瀬谷君、二手に分かれよう。地下に向かうものと、タイタンを食い止めるものと」

理事長が言う。


博斗はこくりとうなずいた。


「僕はこっちに残る」

グリーンが言った。

「それと、二人、人手がほしい」


「私と理事長さんが残りましょう。地下にはホルスとピラコチャがいます。できるなら、スクールファイブと博斗さんがいいはずです」

「ひかりさんが一緒に来てくれないんですか? 無理ですよ、俺にはタイタンを操るなんて!」


「博斗さん、あなたにはきっとできます」

ひかりは博斗の目を見据えた。


「瀬谷君…酒々井君が君を信じているように、君も酒々井君を信じたまえ。君には、力があるのだから」


「キャップ、迷ってる時間はないんでしょ。…心配しないで。地球が滅びたらキャップのこと恨んであげるからさ」


「はやく~!」

ブルーがテーブル石のあったところに開いた穴に足をかけている。


「行きましょう、キャップ?」

ブラックが博斗に並んだ。


「自分の意志を、信じることです、キャップ」

ひかりが博斗にうなずいた。


「だが、タイタンの動きを止めるなんて、できるのか、グリーン?」

「やってみる。科学者の端くれとしての誇りにかけてね」


グリーンは左の手首に装着された小さな腕輪に向けて叫んだ。

「アンドロメダ~っ!」

「なんだ? アンドロメダというのは?」


「来た来た!」

小さな黒い影が、こっちをめがけてまっすぐ接近してくる。


次第に影は大きくなり、その正体が明らかになった。

「あ、あの車…アンドロメダっつー名前だったのか?」


「そ! 桜様発明の万能カー、アンドロメダ号だよ!」


突っ込んできたアンドロメダ号は、ぶわっと床下から逆噴射すると、スピードを緩めて頂上の平らな地面に着地した。横には水平翼が突き出し、屋根には小さな尾翼まである。

「この車はなんなんだ、いったい?」


「いいでしょ。この一台があれば、水・陸・空どこにだって行き放題。それどころか、特別オプションのドリルをつければ地底にも…さらにニトロエンジンのエネルギーをリークさせて自爆すれば、一点収縮型の超高密度な空間破壊爆弾にも早変わり! タイヤには…」


「わかった、わかった。たいした発明品だ。んで、これでどうやってタイタンを止める?」


「うん、アンドロメダには電磁バリヤー生成用のアンテナがあるんだけど、その回路を変換して、頭上に放射させる。たぶん、五分…いや、十分ぐらいは、耐えられると思う」


博斗は無言でうなずいた。


「みんなの期待が、かかっているぞ」

理事長が博斗の背に声をかけた。


博斗は後ろ手に手を振ると、ブルー、ブラックに続いて、暗い穴に身を投じた。

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