突然、木々の間から青服の戦闘員達が躍り出てきた。

「さっそくお出ましか!」

「キャップ達は、あたし達の後ろに!」

遥達は、博斗、ひかり、理事長を内側にして、円形の陣を組んだ。

戦闘員達が四方からそれを囲む。


五人が姿を変えた。

「スクールファイブ!」


そのとき、いままでとは比較にならないほど激しい風が吹いた。


「くっ!」

博斗は目をつぶり、近くの木の幹に掴まって必死にこらえた。

ひかりと理事長も同じ木に掴まっている。


変身した五人はその場で足を踏ん張り、風に耐えた。

轟々と荒れる風が止んだとき、戦闘員達の前に、二人の新しい影が立っていた。


どちらも、体があるのかないのかよくわからない。

なにしろ、胴体に当たる部分は渦を巻く風の塊なのだ。


左側の怪人が拳を突き出した。

「俺の名は、サイクロム!」

右側の怪人が左側の怪人に手を重ねた。

「私は、ハリケーム!」


二人の怪人が揃って手を突き出した。

途端に、ぶおっと風が吹き出し、博斗は再び顔をしかめた。

「二人揃って、夫婦怪人ダブルタイムーン!」


「なんなんだ、こいつらは。怪人も結婚するのか?」

博斗が指示を出そうとしたときには、すでにレッドとイエローが飛び出していた。

「任せて! キャップ!」

「あなたに先は超させませんですことよっ!」


レッドはサイクロムに、イエローはハリケームに、それぞれつかみかかった。

怪人を中心に風が吹き荒れ、雨足が強くなる。


「この雨と風は、この怪人の仕業なんですよ!」

ひかりが叫んだ。


四方から躍りかかってくる戦闘員を、ブラックは剣でなぎ払い、ブルーはまとめてぶんぶんと放り投げ、グリーンは片っ端からしばき倒し、博斗達の元にたどり着かないように奮闘している。


「レッドリボン!」

レッドが突き出したリボンは、サイクロムの体に弾かれた。

「俺様の体はどんなものでも弾き返す! お前の攻撃など効かんぞ!」


イエローの放ったスマッシュはことごとくハリケームの体に吸い込まれ、あらぬ方向にはじき出された。

「私の体はどんなものでも吸い込むのよ。お前の攻撃など効かないわ!」


ここまでの戦況はほぼ互角か、ややスクールファイブがおされているというところか。

なにしろ怪人が二人だ! これは手強いに決まってる!


「瀬谷君!」

理事長が叫んだ。

「これは我々を頂上に行かせないための単なる足止めだ」


博斗は辺りを見渡した。

ひどい雨と風で、スクールファイブも戦闘員も入り乱れて混戦となっている。

そのなかで、ちょうど博斗達三人だけが、すっかり取り残された格好になっている。


行くならいましかない。


博斗はスクールファイブを見た。決して戦況は芳しくない。

「キャップ」

ひかりが濡れた髪を払いながら博斗を声をかけた。

「あの子達は、キャップがここでグズグズしていることを望んでいませんよ」


博斗は頷いた。

「…頼んだ、みんな。負けるなよ」

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