5
次の日もよく晴れていた。
博斗、ひかり、理事長を先頭に、一行は御笠山に向かった。
三十分ほど歩くと、次第に木々がせまり、視界がだんだんと遮られてきた。
足元の草も膝まで被さるようになってきている。御笠山の斜面にも木々がうっそうと茂り、その合間を縫うようにして進んでいくしかないようだ。
「これは見れば見るほどピラミッドみたいですね」
博斗は、木々の葉の間から、頂上を透かすように眺めた。
「もう少し東のほうに、人が踏み固めた道があります。そこを使いましょう」
博斗は顎に手を当てた。
「もし、ムーがすでにここにいるんだとしたら、そんなわかりやすい道は見張られていると思いますが…」
「それは、杞憂ですよ」
「なぜ?」
「博斗さんは、ほんとうに何も感じないのですか?」
「何を?」
「みんなは、どう? なにか、感じませんか?」
「なんとなく…」
遥は首を傾げた。
「なにか、頭がずきずきします」
由布は顔をしかめている。
「彼らの気配と、でもそれとはまた別に、押し寄せるものが…」
「力が強いんですよ、ここは。そして、私達は、常に彼らに居場所を知られているようなものです。私達に必要なのは、隠密ではなくスピードだと考えます」
「ねえ、博斗せんせ、考えてる暇、ないかもよ。…ほら、雲行きも怪しくなってきた」
見上げると、さっきまで雲一つなかった空に、いつのまにかどんよりとした灰色の雲が立ち込めている。
「ひと雨来られるとほんとに洒落にならない。よし! 行こう! ムーなんて怖くないさ!」
「不吉な天気ですね」
由布が呟いた。
「こころなしか、風も強くなってきたようですね」
ひかりが髪を押さえて言った。
「あっ!」
燕がものの見事に転んでころころと転がった。
「あっはは、燕、ばっかねえ」
「う~、なんか、ひっかかったの」
燕は転んだ足元を指差した。
「なんだ、これは?」
博斗は、すべすべとした球体の石を拾い上げた。
「これにつまずいたのか?」
「うん」
ひかりが博斗の手の石を眺めた。
「完全な球体ですね」
「手触りも、ほら、墓石かなんかみたいにすべすべですよ」
「せんせー、こっちにも、ありますよ」
遥が少し外れたところを指差している。
「あら、こっちにも」
翠はまた別のところを指している。
博斗は、石を地面に降ろした。
「よく見れば、これは完全な球体ではない。やや、中心部が膨らんだ楕円形だ。おそらく、太陽系の惑星のどれかを意味しているんだろうな」
「何の意味があってこんなことを?」
「何かの、シンボルなのでしょうね。この御笠山が、宇宙となにか関係があるという…」
ひかりが天を指した。
「宇宙か…。確かに、ムーの遺産はすべて宇宙に結びついている。ギザのピラミッドも、太陽のピラミッドも、ナスカの地上絵も、あらゆる神話、伝承が、すべて宇宙に通じている。いったい、何がある? ここに?」
と、ひときわ激しい風が吹き、木々を揺らした。ぽつぽつと、大粒の雨が頬に当たった。
「誰!」
由布が鋭く叫んだ。
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