翌日の昼下がり、博斗は陽光学園に来ていた。


博斗は生徒会室から指令室に戻り、由布から渡された黒い腕章を手のなかで転がしていた。


「博斗さん…それは?」

「ひかりさん…。由布から昨日、電話があって。話があるってことでしたが、さっき、これを返却されました」


「まあ…! あの子が抜けるとすると、かなり痛いですね」


「稲穂に頼むか?」

博斗は呟いた。


「いえ。いまの彼女はスクールファイブにはならないかと思います」

ひかりが首を振った。


「どうして、そんなことがわかるんです?」

「どうしてと言われても困りますが…彼女はスクールファイブにはなりませんよ」


博斗には、ひかりがなぜそこまで断言するのかはさっぱりわからなかったが、とにかく、稲穂もダメとなれば、スクールファイブはいよいよ窮地である。


名前もスクールフォーとかに変えなければ。

だいたい、いまだかつて四人戦隊がうまくいったという話はないのだし…。

いかん! こんなことを考えている時点でもう現実逃避している。


「博斗さん、まだ時間はあります。由布をもう一度説得してみませんか?」

「そうだな。スクールファイブからは、一人として欠けちゃいけない」


考えるまでもないことだ。

由布が博斗達を必要とするかどうか、ではない。

いまの博斗には、そしてスクールファイブには、由布がどうしても必要だ。


当たり前すぎて気がつかなかったことだ。

こうして、いなくなるということがわかってはじめて気がつく。


博斗は立ち上がった。

「もう少し由布と話をしてみる。なりふり構わなくてもなんでも、彼女に戻ってきてもらわないと」

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