そのとき、頭上から風のように青い影が舞い下りると、博斗とタンザクムーの間に立ちはだかった。


「ブルー!」

博斗は歓喜の声を上げた。やった、さすがだ!


「おこった。おこったぞ! お前、だいっきらいだっ!」

ブルーは、ぐんとタンザクムーに突っ込んだ。


「ぱーんち!」

驚くべき速度で迫るブルーの拳は、よける間もなくタンザクムーに吸い込まれていったが、手応えなくタンザクムーを突き抜けた。

拳に続いてブルーの体も、ガサガサとタンザクムーの体をかすめるだけで、突きぬけてしまった。


ブルーは、かわされても、かわされても、すぐにタンザクムーに攻撃を繰り返した。しかし、タンザクムーには、これといってヒットしない。


博斗は、はっと気づき、ブルーに向けて叫んだ。

「ゲームだ! ゲームを思い出せ! ワンパターンすぎるんだよ、もっといろんなパターンで攻撃するんだ!」


ブルーはタンザクムーから間合いを取った。両手に、円盤が現れた。


「えんばん、えんばん、えんばん!」

ブルーは、次から次へと円盤を放ち、タンザクムーを狙う。


「そんなもの、いくらやってもあたらんぞっ、と」

タンザクムーはひょいひょいと円盤をかわしていたが、飛んできた円盤をすべてかわしたとき、すでに眼前からブルーが消えていた。


宙から大きく弧を描き、ブルーがタンザクムーの横にすっと降り立った。その手には、二色に塗り分けられた長い棒が握られている。高跳びのバーだ。


「たつまき、せんぷうぼう!」

ブルーは真横から、バーをなぎ払った。

ぶぉんという鋭い音が空気を引き裂き、バーが描く円弧の延長上にあったタンザクムーの胴体に、真横から迫った。


「う、うおいっ、しまったっ、とぉぉぉぉ!」

ブルーの振るったバーは、タンザクムーの胴体である竹筒を、ぼきりとあっさりへし折る。


真っ二つに折られたタンザクムーは、甲高い悲鳴をあげ、地面に崩れ爆死した。


「…困ったわね。あたし達の出番なかったじゃない」

遥と翠は顔を見合わせた。


「だから尾行しないほうがいいって、言ったのに」

後ろでは桜がぶつぶつと言っている。

「でも桜さん、二人のこと、すごく気にしてましたよね」

と由布。


「それにしても燕、ほんとにたいしたもんね。あたし達の出る幕なし」

「一人で怪人を倒すとは、まったく、あの子は敵にしたくないですわね、ほんと」


「さあ、あの子のところに、いきましょう?」

由布が三人に声をかけた。

「そだね。勝ったって言っても、傷ついてるはずだから」


四人は、隠れていた建物の影から姿を現し、博斗と燕の元に、駆け寄った。

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