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「そんなとこにいないで、さっさと降りてきたらどうなんだ!」
「言われなくてもいま行くぜっ、と。俺様、てめえらみたいな夢見るバカどもに虫ずが走るんだ!」
タンザクムーは、ざわざわざわと葉をこすりあわせる音を立てながら、倒れた笹飾りの上に降り立った。
「夢やロマンじゃ人間、生きてけないんだよっ、と。福引きを全部外れにしたのは俺様さ! まったく、たかが福引きで、こんなくだらねえことまでしやがって」
タンザクムーは一歩踏み出すと、不格好な足をぐりぐりと地面に擦り付けた。
その足元から、ボリッという、耳障りな嫌な音がした。
「けけっ。こうして、願い事をぜんぶ台無しにしてやれば、人間は夢もやる気もなくすはずだっ、と」
タンザクムーが足元からつまみあげ、これみよがしに博斗と燕に見せつけたのは、真ん中で無残にも割れてしまった、燕の小さなキーホルダーだった。
博斗は、タンザクムーを睨んだ。
「おい、人間、いろんな夢見てられるから人間なんだぞ。…それを潰して、楽しいかお前?」
「ああ。楽しいなっ、と」
タンザクムーは博斗の凄みなど意にも会さず、キーホルダーをつまむと、宙に放り投げた。
「短冊カッター、っと!」
タンザクムーの全身を覆う短冊が一列に吹き出し、二つに分かれているキーホルダーを、さらに細切れに刻んだ。
ちりちりと、寂しげな音を立てて、かつて燕のキーホルダーだった金属片が、地面に散らばった。
燕はうつむいていたが、散らばった金属片に歩み寄ると、ぺたんと膝をついた。
両手で、かけらをかき集める。
「ひどいよ。ひどいよ。つばめ、なんにもしてないのに…」
「けけっ、そんなもん集めてる暇があったら、逃げたほうがいいぜっ、と!」
タンザクムーは両手を突き出した。手首から先がパコンと折れ、腕となっている竹筒が、燕に向けられた。
「いけない! 何か出るぞ、よけろ、燕君!」
こもったような爆発が、燕のいた辺りを中心に巻き起こった。
爆発音でじ~んと耳鳴りがする。
爆発から顔をかばうためにかざした博斗の腕に、何かのかけらがぱらぱらと降ってきた。
博斗はかざした手を降ろし、細めた目で辺りの様子を見た。
にこにこ銀座の路面に敷き詰められているレンガが吹き飛び、辺りに散乱している。
福引のステージは、その半分が崩れ、屋根は半ば落ちかけていた。随分派手にやってくれたもんだ。
ステージにいた人間達は、度肝を抜かれて、地面にへたりと腰を落としている。
だが、そのなかに燕の姿はない。
「いない。いないぞ。どこにいったんだ? まさか、爆発で?」
土埃の向こうから、タンザクムーがのっそりと姿を現した。
「さて、ガキは消えた。あとは、お前だなっと」
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