6
博斗の見守るなか、燕の再チャレンジの番がやってきた。
ガラガラガラ。
燕の横に手ぬぐいが積み重ねられていく。
ガラガラガラ。
燕は、むすっと集中したまま、最後のひとまわしに移った。
「おねがいなの! 七夕さま!」
だが、出てきた玉は、無情にも白い玉であった。
「う~ん、残念でしたね! こんなにたくさんやってくれたのにねぇ。ま、サービスで手ぬぐい、もう一つ、つけてあげるからね」
燕はしょぼくれて小さくなっている。
博斗は、下からステージに呼ばわった。
「なあ、ほんとに当たり、入ってるんですか? さっきから、白い玉ばっかりじゃないですか? Tシャツの一つも出やしない」
「いやあ、間違いなく入ってるんですけどね。どうしたことか、今日は朝っから一個も当たりが出てなくて…」
「朝から一個も?」
それはまた、おかしな話だ。
燕が、とぼとぼとステージから降りてきた。
「ぐずっ。七夕さま、いないのかな。おねがいしたのに、きいてくれなかったよ」
燕は、ぐるりと上を向いた。そして、一息吸い込むと、突然叫んだ。
「七夕さまのばかーーーーっ!」
「バカで悪かったなあっ、と」
二人の上から、甲高い声が響いた。
博斗は頭上を見上げた。
特大の笹飾りが、ゆらゆらと揺らぎ、博斗と燕に覆いかぶさらんと、倒れてきたではないか。
博斗は、沈んでいる燕の腰を抱え、大きく横っ跳びした。
一瞬前まで二人のいた場所に、どしーんと、笹飾りが突っ込んでくる。
「あ、危ないな、誰だ、こんないたずらしやがった奴は?」
アーケードの照明に、こんもりとした笹の塊が居座っている。全身には無数の短冊。笹と短冊に隠れるように、かすかに竹状の四肢が見える。
「タンザクムー!」
「そういうことか」
博斗は吐き捨てるように言った。このテスト前のクソ忙しいときに! おまけにこっちには意気消沈した燕しかいないというのに!
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