時を同じくして、ブルーは、最後の一人の戦闘員を倒すと、そのまま止まらずにグラウンドに降り立った。


「はいはい、ここはスタッフ専用ね、と」

グリーンがひょっこりと現れ、本部テントに居座っていた数人の戦闘員を吹き飛ばし、放送機具の前に陣取った。


最初のアナウンスをしてからきっかり三分。

観客席が解放され、ブルーとイエローが当面の敵を退けてグラウンドに降り立ったことを見たグリーンは、レッドとブラックに、次の段階に進んだことを知らせるべく、マイクを取った。


「平和な学園に、突如現れた暗黒の使者! 僕らのビッグイベント体育祭に途中から来た暴れん坊たち! このピンチに、学園を救うべく、五人の戦士がさっそうと現れたのだ!」


『文化部のボス』の異名をとる桜のことは、ほとんどの生徒達が知っている。

すると先ほどからのこの大騒ぎも、彼女のいつものお遊びなのだと、生徒達は悟り、逆に盛り上がり始めた。


「さあさあさあ、ついに出たぞ~、学園の平和を守る正義のヒーロー、僕らのスクールファイブ! さあ、悪い奴等なんかやっつけちゃえっ!」


レッドはシータから距離をとると、芝居がかった声で呼ばわった。

「さあ、あたし達が来たからには、あなた達の好きにはさせないわ!」


「なにおう…」

いきり立って踏み出そうとしたピラコチャを、シータが近寄って留めた。


「待て、ピラコチャ。スクールファイブよ、ここまでの戦いは見事だ。我々の注意を逸らし、分断させようという戦術、感嘆に値する」

「それは、どうもありがとね」

「もはや容赦はせん」

シータは刀を再び抜いた。


ところが、グリーンの熱い声がその出鼻をくじいた。

「おおっ! あれはなんだあっ?」


見ると、本部のほぼ正面にいる一同から、ちょうどトラックの直線部分をいったところに、地面から透明の箱がせり出してきている。


赤いクッションに、突き刺さった薄いカード。


「あれは…パンドラキー!」

ホルスがいち早くその正体を確認し、思わず飛び出した。


「ホルス! 罠だ!」

シータは制止しようとしたが、そのシータの横を、スクールファイブ達が全力で駆け抜け、ホルスを追っていった。


罠ではないのか? あれが本当のパンドラキーである可能性は?

シータはためらった。


「なにぐずぐすしてやがる! 俺はいくぜ! こい、ブルマムー!」

ピラコチャはブルマムーを率いてどすどすと駆け始めた。


「…ちっ。止むを得ん。あいつらに任せては、さらに事態が悪化するかもしれん」

シータは呟くと、一歩遅れて、パンドラキーを求める一団への追跡を開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る