10
グリーンの実況がグラウンドに響く。今度は競馬調だ。
「さあ、先頭をきって飛び出した、ホルス、ホルス。そのパンドラキーに対する情熱は強い。続くスクールファイブ、スクールブルーが先頭、運動神経抜群、その他の各人は横一線、横一線。ブルーが後ろから差し込む、ホルス、かわされた。先頭はブルー。後ろから来る、ブルマムー、ブルマムー強い、強い、スクールファイブをどんどん突き飛ばしてやってくる。ブルマムー、ホルスもかわした。ブルーとブルマムー、先頭争い!」
転がったイエローは、体についた汚れをぽんぽんと払った。
「あの怪人、な、なんて馬鹿力ですの! 見事に吹っ飛ばされましたわ」
「ま、いいじゃない、用は、あいつらが走り出してくれればそれでよかったわけだから」
「まあ、そうですけれども」
「しばらく、グリーンの実況でも聞いてましょ。もう、バリバリね、グリーン」
これまたコースからはじき出されてきたブラックが、レッドとイエローに合流した。
「グリーンは、ああいうことが好きそうですからね。あとは、うまくやってくれるでしょうか、ブルーが」
「大丈夫よ。あたし、ブルーに、『とにかく百メートル全力で突っ走るだけよ』って言ったから」
「ブルーがあのパンドラキーを取ったら、たいへんですわね」
「あたし達、逃げなきゃね」
レッドは笑った。
「ブルマムー、スクールブルー、先頭争い。ホルス、ピラコチャ、シータは遅れている。ブルマムー、スクールブルー、ブルマ、ブルー、ブルマブルマ、ブルブルブルマー!」
ゴールである直線コースの終わりは目前に迫り、ややブルーが先に出て、そのまま一気に駆け抜けた。
駆け抜けたブルーは、そのまま走って走って、どこかに行ってしまった。
ゴールにはケースに入ったパンドラキーが、もちろんそのまま野ざらしにされている。
「は、はははははっ! 素晴らしい! スクールファイブも、最後の最後でたいへんなミスをしたな!こうもあっけなくパンドラキーが手に入るなんて! ブルマムー! パンドラキーを奪え!」
スクールブルーに続いてわずかな差でゴールに飛び込んだブルマムーは、その言葉を聞き、ぼんとジャンプしてパンドラキーのケースに飛び乗った。
「ブルマムー、必殺、窒息昇天プレス!」
圧力に耐えかね、ケースはもろくも崩れ去った。
ブルマムーは、その破片の中から小さなカードを拾い出す。
駆けつけたホルスとピラコチャが歩み寄った。
「よーし、よくやった、ブルマムー。パンドラキーには傷一つ与えずにケースだけを破壊するとは…いい仕事だぜ」
パンドラキーを持ったブルマムーと、ピラコチャ、ホルスが一か所に接近していることを確認して、グリーンは、手に持った小さなスイッチを押した。
「ポチっとな」
ブルマムーの手にあったパンドラキーが、太陽のような明るさに輝いたかと思うと、爆発が起こった。
「!」
爆発がやむと、三つの影がゆらゆらと立ち尽くしていた。
「あ、危ないところでした…とっさにシールドをはらなければ、即死でしたね」
ホルスは、傷ついた半身をかばいながら、よろよろと二、三歩歩き、膝をついた。
「…うぉぉぉ、おおお」
ピラコチャは全身を真っ赤に染め、歯をむき出し、荒い息をついていた。
むき出しの体に、パンドラキー爆弾の破片や、透明ケースの破片が突き刺さっている。
そして、爆発の中心にいたブルマムーは、力尽き地面に倒れ、今度は自ら爆発して敗れ去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます