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「博斗先生。変身なんか出来なくっても…あたしは戦います。あたし達の体育祭なんだもの。いっぱい、準備してきたんだもの。ちゃんと、成功させたいもの!」
「ま、待て、落ち着け、冷静になれ、遥君」
「今回は、珍しくわたくし、遥さんと意見が合うことが多いですわね」
「ぜったい、つばめ、おこってるもんね」
「みんながそうするのならば、私も。卑怯な戦い方は、許せません」
博斗の制止の声は、彼女たちの耳には届かない。
先陣をきって遥と翠が飛び出した。
燕が、由布が、後に続く。
彼女たちは、生身の体のままで、戦闘員たちとの戦いを始めた。
「博斗せんせ」
桜が博斗の手のひらに、何かを押し付けた。
トランシーバーだ。三台ある。
「僕は、ガラじゃないし、あんまり役には立てない気がするけど、まあ、みんながやるなら、なんとかやってみるよ」
「お、おい、桜君…」
桜は振り向くとにやりとした。
「僕は自棄になってはいないよ。いい? 赤いダイヤルをまわして7チャンネルに合わせて、そこで左側の黒いボタンを三回押すんだ。頼んだよ、博斗せんせっ」
そこまで言い終わったところで、桜にも戦闘員が飛びかかってきた。
トランシーバーを託された博斗は、遠くから戦況を見つめているシータを睨んだ。
ムーが本気を出せばこんなものなのだ。
スクールファイブも、博斗も、はじめからムーの敵ではなかったのだ。
それを、世界を救うだのどうだのと、いい気になっていただけだ。
このままでは、負ける。
いや、負けることよりも、勝ち目のない戦いを挑んだ彼女たちの傷つく姿が、見たくなかった。
このままでは、彼女たちは、心も、体も、ボロボロにされてしまう。
彼女たちの悲鳴が、博斗の耳を痛めつけていた。
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