第九話「100メートルを突っ走れ!」 窒息怪人ブルマムー登場

第九話「100メートルを突っ走れ!」 1

遥は、ぐっと体を縮めると戦闘員の一人に頭から突っ込んだ。

が、強化服のない遥に勢いはなく、やすやすと戦闘員にかわされ、地面に転がった。

そのはずみにすりむいたらしく、左の膝小僧から泥交じりの血が滲み出てきた。

はっと我に返ったとき、遥の両腕は、すでに戦闘員に抱え込まれていた。


翠は、なんとかここまで戦闘員をあしらってきたが、視界の隅に、倒れた遥の姿を認め、思わず叫んでいた。

「遥さんっ!?」

その注意のそれた一瞬の隙に、左右から戦闘員に鈍い拳をあてられ、急速に意識が遠のいていくのを感じた。


由布は、近くにあったパイプを竹刀代わりに、桜をかばいながら戦っていたが、鉄パイプは急速に体力を奪い、次第に動きが緩慢に、大振りになっていった。

背後にすっと現れた戦闘員から桜を守ろうとしたとき、横から別の戦闘員に当て身をくらい、パイプを手放し転倒した。


唯一、奮闘していたのは燕だった。

ひょいひょいとステップを踏んで戦闘員を翻弄し、ヒットアンドアウェイで、確実に戦闘員の数を減らしていた。


だがそれも、戦況を見据えていたシータが動き始めるまでのことであった。

シータは大きく跳躍すると、燕の真後ろに着地し、着地の勢いのまま、両手を燕の脳天に振り下ろした。


「これで、全員だ」

倒れた燕を押さえ、シータは本部のテントを見た。

「奴はどこだ?」

さっきまでそこにいたはずの瀬谷博斗がいない。

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