6
次の朝。
ちゅんちゅんと小鳥のさえずりが耳に心地よい。
空には雲一つなく、まさに体育祭向けの絶好の快晴であった。
寝ぼけ眼をこすりながら、博斗は生徒会室に向かった。
まだ時計は七時さえまわっていないのだが、すでに生徒会室には、三人の姿があった。
遥はきゅっと頭に赤いハチマキを巻いて、落ち着かない様子でうろうろしている。
もしゃもしゃとサンドイッチをかじりながらマミーに口をつける燕。
桜はトランシーバーの最終確認に余念がない。
「翠、遅いわね。…やっぱり遅刻かしら。ま、いつものことね」
「お嬢様ってのは寝起き悪そうだからね。それにほら、朝シャンとか時間かけそうだし、絶対朝食抜きなんてしないタイプだよね」
そのとき、ドアが疾風のように開け放たれ、息を切らした翠が飛び込んできた。
「はあ、はあ、はぁ。せ、セーフ、ですわね?」
「なに、どうしたの、翠? そんな般若みたいな顔で?」
「…事故で渋滞があって、途中から走ってきたに決まってるじゃありませんですか! あ、朝からこんな運動させられるなんて、まったく今日は体育祭ですわ!」
「ふーん。偉いじゃないか。遅れないためにそれだけ必死に走ってきたなんて」
「か、勘違いなさらないでいただけませんでございますですか? 遅れると、遥さんにまたネチネチ言われるのがイヤで走ってきたんですわよ? べ、別に、遅れて他の方々にご迷惑をかけては申し訳ないとか、そ、そんなこと、ピンセットの先ほども考えていませんでしたわよ?」
「ま、とにかく、バスの由布は七時半に来るっていってたから、これでオッケーね。じゃ、早速、準備しましょ?」
グラウンドはすっかり水気もはけ、からっとしていた。
生徒会と同じように、準備のため、すでに何人もの生徒たちが作業を開始していた。
七時半を多少まわった頃、由布が顔を出し、準備に参加した。
まだ充分にあるかと思われた時間は、驚くべき速さで過ぎていき、観客席の各クラスの指定場所にやってくる生徒の姿が目立ち始めた。
博斗に理事長が声をかけてきた。
「調子はどうかね、瀬谷君」
「理事長」
「…敵意がある。普段の学園にはない敵意を感じる。何者か、すでに侵入しているようだ」
「連中ですか?」
「おそらく。くれぐれも、油断するな。酒々井君にも伝えておくが、君も充分に気をつけておくんだ」
「はい」
「それから、彼女たちには競技中も腕章をつけさせ、居場所を常に把握しておくように。いつ何が起こるかわからん」
あまり好ましくない状況になってきた。彼女たちには、心おきなく体育祭を楽しんでほしいのだが、そうもいっていられない。
「瀬谷君。君の気持ちはよくわかる。…だが、攻撃を防ぐことと、体育祭を成功させることは、一つの結果につながっているのだ。なんとか切り抜けるしかないだろう」
博斗は渋面で肯いた。
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