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いっぽうで、戦いは続いていた。
オオヅタムーは、シンプルだが実に効果的な攻撃方法で、スクールファイブを翻弄していた。
「ええーい、なんなんですの、こいつは! きりがないですわよ!」
イエローがいったん間合いを取って、息を整えながら言った。
「こう蔦が多くちゃねえ。このままじゃ、負けちゃうよ、キャップ!」
レッドが情けない声を出して博斗に助けを求めた。
「博斗さん。私がなんとかしてみます」
博斗の代わりにひかりが応じた。
「へ? あ、危ないですよ! ひかりさん!」
ひかりは窓際まで進むと、蠢くオオヅタムーに向かって声をかけた。
「まだ聞こえますか? セルジナさん?」
セルジナからの返事はない。怪人に取り込まれてしまったのだろうか。
ひかりは声を振り絞った。
「セルジナさん! セルジナさん! まだ、あなたは死んではいけないのですよ!」
ぴたりとオオヅタムーの動きが止まった。
その静止はわずかで、すぐにオオヅタムーは再び蠢き始めた。
しかし、以前よりも動きが緩慢になっている。
するとこの呼びかけに、レッド達も参加してきた。
「セルジナ先生! 先生の授業を、あたし達、待ってるんですよ!」
再び静止。
博斗もピンと来て、声を合わせた。
「王子! あんたを必要としてる人が、国にはたくさんいるんだろ!」
オオヅタムーが、はじめて、腹の鳴るような低いうなり声をあげた。
「セルジナ! あんたの夢はあんた一人のものじゃないんだろ? セルジナの国を立派にするのが、あんたとセルジナのみんなの夢なんじゃないのか?」
うなるような声は、赤ん坊の悲鳴のように甲高くなり、そしてバリバリという音とともに、ついに、毒々しい花と蔦を左右に引き裂くようにして、セルジナが姿を現した。
どっとその裂け口から、真っ赤な血が溢れ出した。
蔦を掻き分けて出てきたセルジナは、よろよろと二、三歩歩くと、力尽きてバランスを失い、そのまま崩れ落ちた。
博斗は、そのセルジナの体をしっかりと受け止めた。
セルジナの体はびっしょり濡れ、ぬるぬるした液体とオオヅタムーの血にまみれていた。
だが、すーすーと規則正しい呼吸の音がし、その顔も、うっすらと微笑んで見えた。
「おかえり、王子様」
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