7
博斗は倒れた三人を前に、マイクムーとピラコチャに向き合っていた。
感情的になりすぎたレッドは、音程を外してしまい、80点で敗れ去った。グリーンの推薦で次にチャレンジしたブルーもまた、83点で散った。
博斗は、グリーンを見た。
「い、いや、ダメ、ダメ、ぼ、僕、音楽だけはからっきしで…」
「他に誰が歌うんだ? 頼むよ」
グリーンは折れた。
渋々といった感じでマイクを握ると、博斗のほうを一度振り返った。
「どうなっても、知らないよ」
そして。
「ホゲ~~~~~~~~~~」
「!!!!!!」
この世のものとは思えぬ奇怪な音がグリーンの持つマイクから発せられた。
博斗は慌てて耳を塞いだ。
しかし、その程度の防音はものともせず、恐るべき毒声は鼓膜から脳髄を刺激する。
空気が歪み、辺りの温度が上昇する。
体育館のガラス窓が次々に砕け散っていき、激しい衝撃音とともに、天井のライトまで墜落して来た。
ステージのカーテンはぶちぶちと落下し、バスケットゴールがめきめきと割れて、床に落ちた。眠っているはずの一般生徒達までうめき声を上げている。
遠くのほうのあちこちで、救急車のサイレンが鳴り始めた。体育館を通り越して市街地にまで被害が及んでいるらしい。
「こ、これじゃ怪人よりタチが悪いじゃないか!」
博斗達だけではない。ピラコチャとマイクムーも、同じように悶えている。
強化ブレザーに包まれているはずのスクールブラックまでうなっているではないか。
「やめ、やめーっ! グリーン! 中止、中止!」
ぴたりとグリーンは歌をやめた。
「だからやめたほうがいいって言ったのに…」
「はあ、はあ…ま、まさかこれほどとは。『ホゲー』は、ジャイ●ンにしか使う事の出来ない擬音だと思っていたのだが…」
いっぽうマイクムーも、いまのはさすがに応えたらしかったが、ルールは忘れていなかった。
「け、結果は分かってると思うが、いちおう採点だ」
採点は一瞬で終わった。
それほど、わかりやすい結果だったということだろう。
「よ、4点」
博斗は失望を通り越して苦笑いした。
マイクムーの腕からしゅるしゅるとコードが伸びてグリーンに巻き付いたかと思うと、激しい火花が飛び散った。
「きゅうっ」
グリーンは一声上げると床に突っ伏した。
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