6
遥を中心に五人がステージに立った。そして、ピラコチャとマイクムーを指差す。
「あたし達の大事な出番を台無しにする、卑劣な作戦! 許さないわ!」
五人が腕章をかざした。
ステージが五色の光に包まれ、次の瞬間、そこには強化ブレザーに身を包み、目元をゴーグルで覆ったスクールファイブが立っていた。
「いくぞ、マイクムー!」
「ありがてぇ、ピラコチャ。おい、スクールファイブ! …ただ戦ってもつまらねぇ。見たところ、お前らもいっぱしにマイクを使うらしいなぁ。どうだ? ここは一つ、マイクで俺と勝負しねぇか?」
「どういうこと?」
レッドが尋ねた。
「簡単なことだぁ。どっちが上手く歌を歌うか、それだけの勝負だ」
「カラオケってこと?」
「お前らの言い方ではそうなるなぁ」
「その挑戦、受けて立ちますわよ!」
と、イエローが身を乗り出した。
「カラオケと聞いては黙っていられませんですわ!」
「よし。じゃあ、さっそく俺から歌うぜぇ」
マイクムーは、自分の体のどこかからマイクを取り出すと、胸のスイッチを押した。どこからともなくイントロが流れてくる。
「!!!!!」
マイクムーの歌唱は、完璧であった。音程も、音の長さも、そして、強弱のつけかたも。
歌い終わって荒い息をつくマイクムーに、ピラコチャはもちろん、なぜかスクールファイブも拍手を送っていた。
博斗も、敵の歌声であることなど忘れて思わず聞き入っていた。
「ようし、それじゃあ、採点だぜ」
マイクムーは、再び胸のボタンを押した。パカリとマイクムーの胸が開き、デジタル数字が表示される。
「98点?」
博斗は数字を読み取った。いかさまではないだろう。確かに、98点に値する歌だった。
マイクムーは有頂天である。
「さあ、誰が最初に来る? 一人でも俺に勝ったら、俺は潔く自爆してやるぜ」
「一番、スクールイエロー、いきますわ。陽光の歌姫と言われた美声をお聞かせして差し上げますわよ」
イエローは、マイクムーが放り投げたマイクを掴むと、ポーズをとって身構えた。やる気満々である。
「ミュージック、スタート!」
あっという間にイントロが流れきり、Aパートが始まった。
イエローの自信は伊達ではなかった。よく通るメリハリの効いた声、音程もまったく外れない。
観客席(?)に時折ポージングすることも忘れない。
「か、完璧だ」
博斗はうなった。
唄い終わったイエローを、博斗達の拍手が包んだ。
「意外とやるもんねー」
レッドがうんうんと頷いている。
「意外と、は余計ですわよ。ふふん」
マイクムーが、胸のスイッチを押した。
「嬢ちゃん、なかなかいい線いってたねえ。こいつは高得点かなぁ?」
デジタル数字がカウントされ、点数を表示した。
「92…点」
「残念だったな、嬢ちゃん! 90点台出すとはたいしたもんだが、しょせん俺様の敵じゃあなかったってことよ!」
マイクムーが左手を突き出すと、するするとコードが伸びてきて、呆然としているイエローを素早く絡めた。
コードが青白くスパークし、強力な電流がイエローを包んだ。
電流に打たれたイエローは床に倒れた。
レッドが、気を失ったイエローに真っ先に駆け寄った。
「よかった! 命に別状はないわ」
博斗はレッドの新たな一面を見出した。
喧嘩していても、やはりレッドにとってイエローは大切な仲間なのだ。
そして、レッドは仲間が傷つくのを黙ってみていられるような性格ではない。
「美しい友情ってやつかい? だが、そこの黄色い嬢ちゃんより上手いやつぁ、そうそういないぜ? お前さん、自信ないならやめときな」
「誰がなんといおうと、次はあたしがやるわよ」
レッドはマイクを受け取った。もちろん、イエローと同じ曲である。
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