女将と別れた博斗とひかりは、数時間前までは清涼であった山葵園に向かった。


赤紫の毒々しい水が、山葵園を満たしている。その水を見ていたひかりが、あることに気づき博斗を呼んだ。

「博斗さん、見てください」

「うん?」

「この水は流水です」

「ということは…いまもどこからか赤紫の毒が脈々と注ぎ込まれている、と…」


博斗とひかりは、流れを逆にたどり、少しずつ園の奥へと進んでいった。

激しい水の音が耳につくようになってきた。すすむごとに音は激しさを増す。


「あそこを」

ひかりは言って、二十メートルほど先を指差した。


うっそうとした茂みはちょうどそのあたりで途切れ、広場のようになっている。

さきほどからの轟音は、その広場にある小さな滝が原因なのだ。博斗達がたどってきた流れの源流はこの滝というわけだ。


そして、予期していた通り、滝の周辺にはムー戦闘員が徘徊している。


「キャップ、見てください。滝の水は汚れていません」

博斗は視線を滝壷に移した。滝壷の脇に、奇怪な怪人がいる。

怪人は岩に腰掛け、足を滝壷の中に下ろしていた。その足先から、見る間に水が赤紫に染まっていくではないか。


「あの怪人が、すべての元凶のようですね」

「…どうする?」


「怪人が相手では、私達には荷が重すぎます。彼女たちを呼びましょう」

「そうするしかないか。…彼女たちには申し訳ないな」


「やむを得ませ…キャップ!」

ひかりが悲鳴を上げた。


「?」

博斗は振り返った。


眼前に真っ青な戦闘員が立っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る