「ピラコチャ、ケムシムーの作戦はうまくいっているのか? ずいぶん時間がかかっているな」

黒装束の幹部が、巨漢の幹部に向かって訊ねた。

「シータ。なにしろパンドラキーの気配がうまくつかめなくてな。ちょっとてこずってるだけさ」

「気配か。ピラコチャ、お前は気がつかないか?」

「何だ?」

「異常な気配だ。…このあたりに、ムーの気配が集中している。そのなかにパンドラキーの気配が紛れてしまっているのだ」

「どういうことだ、そりゃあ? ムーの生き残りがいたっておかしくはないが、なんだって、ここに集中するんだ?」

「私にもわからないが、嫌な予感がするな」


「ちっ。おいケムシムー、どこだ?」

ピラコチャが怒鳴ると、草陰から一匹の黒い毛虫が這い出して来た。

毛虫というより、ほとんど毛玉といったほうがいいほど巨大なその毛虫は、見る間にさらにむくむくと膨れ上り、奇怪なその正体を現した。黒い毛虫の容姿はそのままに、身の丈は二メートルほど、そして人間状の四肢が不格好に突き出している。


「おい、ケムシムー! まだパンドラキーは見つからないのか?」

ピラコチャはどんどんと足を踏み鳴らした。

「わかったわかった。んじゃ、もう少し毛虫人間を増やしてくらぁ」

ケムシムーはもぞもぞと振り返った。だが。


「そこまでよ!」

不意に、空を切り裂く鋭い声が辺りに響き渡った。


校舎の屋上に、五つの人影が立っている。

「なんだありゃあ?」

とピラコチャ。


「あれは…まさか?」

シータは目を凝らした。


「平和な街を乱す者は、あたし達が許さないわ!」

五人の腕章がキラリと五色の光を放った。

「とおぉぉぉっ!」

そして、滝が流れるように、校舎の屋上から飛び降りた。すとんと、ふらつくこともなく地面に降り立つ。


そこまで見届けて、博斗は一息ついた。

「たいしたもんだな、あの高さから飛び降りて怪我一つ負わないなんて」

「さあ、あの毛虫の怪人を倒しましょう!」

「ああ。…みんなっ、聞こえるか? もう自分達の強さはわかっているはずだ。安心して戦うといい」

「はいっ」

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