10
シータは、ピラコチャに声をかけた。
「ピラコチャ、いまのうちに逃げるぞ」
「正気かシータ?」
「いたって正気だよ。奴等を覚えているだろう? 我々を追いこんだあの五人だ」
「んなこたぁわかってる! だからいま恨みをはらしてやるんじゃねえか!」
「頭を冷やせ、ピラコチャ。なぜ奴等がパンドラキーがあるこの場所にいる? 少し様子を探ったほうがいい!」
言い終わるや否や、シータは素早く姿を消した。
「あ、おい、ほんとに逃げやがって。…おい、ケムシムー!」
「へいっ!」
「お前は戦闘員と一緒にあいつらをちょっと揉んでやれ。出来るものなら、殺したって構わん」
「へいっ! 承知」
こうして時間稼ぎの手はずを整えると、ピラコチャはシータに続いて姿を消した。
ケムシムーは、ずいと五人に近づいた。
「ケムシムー、毛虫吹雪!」
ケムシムーの両手の平から、大きさ・色よりどりみどりの毛虫がわらわらと飛び出し、遥=スクールレッドと翠=スクールイエローにへばりつく。
右往左往し、パニックに陥る二人に、束になって戦闘員達が飛びかかった。
「お、おいおい、いきなりピンチだぞ。ほんとに大丈夫なのか、彼女たちは?」
「心配いりませんよ、キャップ。彼女たちはそれぞれの欠点を補い合うように戦ってくれるはずですから」
「ほんとか?」
スクールグリーンこと桜が、スクールブラックこと由布に顔を近づけ、何やら耳打ちをした。
ブラックは無言で頷くと、腰に手を当て、何かを引き抜く仕草をした。するとその手にはぎらりと光る日本刀が握られている。
「今度はお前が相手か! くらえ、毛虫吹雪!」
ケムシムーの手から再び毛虫が吹き出す。だが、ブラックはそれを避けようともせず、突然、叫んだ。
「はいやぁぁあああっ!」
毛虫たちは度肝を抜かれたらしく、空中でぴたりと静止して、そのままぼとぼとと地面に落ちてしまった。
「な、なんなんだ、いまのは?」
博斗はひかりに尋ねた。
「彼女の気合ですね。気合といえども、力が増幅されていますから、あのぐらいのことはすぐ出来るのですよ」
「今度はわたしの番です」
ブラックはさらに一歩進みでて、刀を一閃させた。
その瞬間、ケムシムーの全身を覆う黒い毛がバサリと地面に落ちた。
「な、なんだとぉ! お、俺様の大事な毛がぁぁぁっ!」
「大事な毛だなんて、乙女の前でいやらしいね」
とグリーン。彼女は切り落とされた黒い毛をせっせと袋に集めている。
「…グリーンは何をしてるんだ?」
「さあ? 私にもよくわかりません」
「とにかくチャンスだな。…みんな、いまのうちにフィニッシュだ!」
戦闘員をいつの間にか退けたレッドが呼びかける。
「はいっ! みんな、いくわよ!」
すかさず一同がV字に並び、腕章の腕を前にかざした。
「スクールウェーブ!」
レッドのかけ声とともに、五人の腕章から五色の光が放たれ、集束して怪人に吸い込まれた。
「う、うっぎゃあああああっ!」
ケムシムーは断末魔の悲鳴を上げると、粉々に爆死した。
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