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「こちらが今日からあなたたちの指導にあたる生徒会顧問の瀬谷博斗先生です。私は校医ですが、あなたたちの副顧問でもあります。酒々井ひかりといいます。それから、理事長の布施快治先生です。理事長もときどきあなたたちと顔を合わせると思いますからね」
博斗は苦虫を噛み潰したような表情をしながら、大きく息を吸いこむと、一同に声をかけた。
「実は、みんなにこれから話さなければならないことがある」
博斗は黒板の横に立つと、隠しボタンを押した。各自の椅子が床に沈み込み、博斗の立っている床板も、すっと沈んだ。
数秒後、一同は司令室にいた。役員達は、なにが起きたのかときょとんとしている。ただ一人、桜だけはなぜか元気だ。目をらんらんと輝かせ、部屋中を見回している。
「さて、では本題に入ろう」
博斗は、意を決して話し始めた。生徒会の真の任務のことを。
ひと通り話を終えた博斗は、腕章のケースを開いた。
「この腕章が、君たちの武器であり、防具でもある。…この腕章を、受け取るも受け取らないも、君たちの自由だ」
博斗には密かに狙いがあった。こう言っておけば、普通は腕章を取らないだろう。こんな怪しい仕事をやりたがる女子校生が、いまどきいるわけがない。そうすれば、博斗もお役御免となって、晴れて生徒会顧問だけを務めればいいわけだ。
ところが。
「…みんな、もってっちゃったの?」
五人とも、腕章をすでに左腕につけ始めている。遥が赤、翠が黄色、由布が黒、燕が青、桜が緑だ。
「お、おーい、ほんとにいいのか、大変だぞ、つらいぞ、し、死ぬかもしれないんだぞ?」
しかし、一同は黙々と腕章をつけている。
「地球の平和を守るために戦うなんて、素晴らしいじゃないですか! それに、隊長と隊員の禁断の愛ってのもロマンチックだし…」
と遥。その目はうるうると感動に潤って、完全に自分の世界にトリップしてる。
「世界を支配するのは豪徳寺グループですわよ。それをどこぞのおかしな連中に先取りされては困りますわ」
…ムーより先にこいつを退治したほうがいいんじゃないだろうか?
「わたしは、出来るだけ自分が必要とされる場所にいたほうがいいんです。そうしなければ、わたしは駄目になってしまう…」
これもまずい。腕章を渡さないと自殺でもしかねない。
「戦う、ファイト、オーっ! ヒーロー、カッコイイのよ!」
燕も…こういうこと好きそうだなあ。
「悪の帝国…正義のヒーロー…グッズつくればもうかるかもしれないでしょ?」
…な、なんなんだ、この子は。
「ところで、キャップ、あたし達の名前は、なんていうんですか?」
「名前?」
「色々あるでしょ、なんとかムーンとかナントカスマイルとかカントカレンジャーとか…」
「名前が決まってないと、変身した後もビシッと決められないし、普段も色々と困るわね」
「名前は理事長に決められてるんだ。かつての戦士たちも現代で言うところの学生達で、それを象徴する名前で呼ばれていた。今の言葉にそれを直して…スクールファイブ」
「スクールファイブ?」
「そ、そうだ。シンプルがいちばんだろう?」
「スクールファイブかぁ、あたしはそれでいいと思うな」
と遥。
他の四人も首を縦に振った。
そのときだった。モニターを見ていたひかりが鋭く叫んだ。
「正門付近に未確認の存在あり!」
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