6
それでも博斗は、時計が一時ちょうどを指していることを確かめ、生徒会室に向かった。
生徒会室は、部室棟の一階にある。大きさは一般教室と同じ。そこをたった五人足らずが使うのだから贅沢なものである。だがいまの博斗には、生徒会がそれだけの贅沢を許されている理由がわかっている。
博斗はノブをまわして、生徒会室に入った。博斗が入った瞬間、中にいた人間達はすべて、動きを止めて博斗を見た。
博斗は素早く部屋を眺め回した。七人いる。生徒が五人、これは役員達だ。そしてひかり、理事長。役者は揃っているというわけだ。
博斗の眼前には、待ち構えていたかのように、一人の生徒が立っていた。肩口までのストレートパーマ、眉毛が太く、意志が強そうである。
「え、えー、君は、確か、中津川君だったね…」
「きゃー、きゃー、先生、あたしの名前覚えててくれたんですね! でもどうせだったら、遥って呼んでくださいっ!」
「お待ちなさい! 抜け駆けは許しませんわ」
と部屋の奥から鋭い声が響いた。
ゆっくりと立ち上がる人影。黄金のように輝く金髪は、肩口でカールして巻き毛になっている。ツンと澄ましたその表情といい、豪徳寺翠に決まってる。博斗の目は顔を素通りしてその胸にひきつけられた。冬服を介してもはっきりとわかるその盛り上がり。88のEと博斗は目算した。うひひひ。
「先生、あんな貧乏人の言うことは無視したほうがよろしいですわよ」
「何よ! 貧乏は青春に不可欠の要素なのよ!」
「おーーーーーっほっ、ほっ、ほっ。古い古い。青春はもっと優雅に楽しむものよ、ねえ、みなさん?」
「ま、それも一理はあるね」
と返事を返したのは、特徴のあるボブカットにぐりぐり眼鏡、佐倉桜。
「…」
漆黒のポニーテールに美しい流し目、烏丸由布は何も答えない。やはり陰がある。
「あはははははっ」
さっぱりしたショートカットの豊岡燕が、突然不気味な笑い声を出し、その頭を桜がハリセンで容赦なくしばいた。
「あーん、いったーいっ!」
「燕、また会議前に漫画読んで! 僕も我慢してるんだから、駄目なものは駄目!」
「はいはい、そのへんにしておきなさい」
と、ひかりが手を叩くと各自が席に戻る。
…幼稚園じゃないんだからと博斗はため息をついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます