第9話
にんげんがいたころ
ぼくは水中にあるポストとして有名だった
集配の度に担当者さんがアクアラングつけてくる
大変だろなと思ってたけど、
それもいたからで、
長い歳月を経たいま、
いないことになれてしまった
にんげんがこなくなって、
さかなたちは安心して、
僕のそばまでくるようになった
蛸の子なんか這って中に入ろうとしたり、
ちょっとワヤだ
でも、
おかげで寂しくない
ほーしゃのーとかの影響で、
その蛸の子の足が18本あっても、
別に何がおかしいわけでなし、
ぼくに対する疑問や興味ではちきれそうになってる彼がひたすらかわいいだけで
ぼくは海のポスト
にんげんのいない今、
海水の塩分に浸食されて、
だんだん目減りしてくぼくは、
そのうち蛸の子に、
腹の中の手紙を読まれてしまうだろう
でも
それもさだめ
手紙は読まれないより読まれた方がいい
水中結婚式の人
初めてアクアラングしたひと
リピーター
そういういろいろなにんげんの暮らしや思いを、
さかなたちがわけあうことになるんだと思うと、
ぼくは少しだけあったかい気持ちになる
だんだん朽ちていくぼく
さいごは海底に同化するのだろうか
珊瑚はぼくを覆ってくれるかしら
遠いようで近いだろうその日を
ぼくは静かに待っている
これはポストのものがたり めるえむ2018 @meruem2018
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