第7話 

さて、これでやっと本当に冒険の一歩を踏み出した訳だが。




「最初は…仲間探しですかね。生憎私には冒険者の知り合いが居ないので、自分達で探すしかありません。」




ですよね。かと言って流石に俺とエリーの二人だと無理がある。エリーは中々顔が広いが、冒険者ギルドにいる奴らとは面識がないらしい。俺も異世界に来てコミュ力が上がったものの、やはり人は苦手だ。どう近づけばいいか分からない。




考えてみると、ゴルデのおっちゃんやエリーからも話しかけられてただけで、俺から関わりを持とうとした訳ではない。うん。よし、これからは積極的に行くぞ!




なんて思ってみても、今までの性格をいきなり変える事は不可能だ。という訳で俺達は仲間探しに行き詰まっている訳だが…




その時、ふと視界に見知ってる男が見えた。俺がこの世界で見知ってる奴は少ない。まぁ、前世でも少なかったんだが…故にその男が誰かはすぐに分かった。




「あ、お前、銭湯に居たホモじゃ無いか!」




「あ、お前この前銭湯に居た俺の好みだった奴じゃ無いか!」




ゾクゾクっと背筋が凍り、笑顔が引き攣る。振り返ると、後ろでエリーも震えている。




「ヤマダさんこの人と知り合いなんですか?この人変な性癖で悪名高いんですよ。一体どこで…」




「お前ヤマダって言うのか。あとこの人は無いだろ、俺の名前はアルスだ。変な性癖は否定しないがな!」




と、本人は大口を開けて笑っている。




「名前はアルスだったのか。こいつとは銭湯で会ったことがあるんだ。それより何でお前が冒険者ギルドに居るんだよ?もしかしてあれか?冒険者のガチムチが好みなのか?」




「否定は出来ねぇが…でもお前という奴が居るのに他の奴に惚れるなんてこたぁねぇよ。っと冗談はともかく、俺はこれでもそこそこ腕の立つ剣士なんだぜ?」




冗談には聞こえなかったんだが…しかし剣士か、前に思った通りだ。風呂で一緒になったとき、身体には引き締まった筋肉と切り傷が沢山見えたからな。




「んでアルスはどこのパーティに入ってるんだ?」




「俺か?俺は孤独な一匹狼さ。」




なんてドヤ顔で言ってるが、要はこいつぼっちか。一匹狼なんてまさにぼっちが言い訳に使う言葉だ。俺も生前はお世話になった。よし、丁度いい。こいつをパーティに引きずり入れよう。まぁ俺の身の安全は保証できないがな。モンスターに殺されるよりはモンスター(アルス)に犯される方がマシだろう。




「よし、アルス。俺らとパーティ組まないか? 今は俺とエリーしか居ないからお前がいると助かる。」




「ちょっとヤマダさん!この人同性愛者ですよ!ヤマダさんの童貞がこんな人に奪われちゃいますよ!」




するとアルスは心外そうな顔をした。男と身体の関係は持たねぇ!なんて言うと思ったら、




「エリー、安心してくれ。俺は童貞は襲わないぞ。」




なんて真顔で言ってきやがった。どんな自分ルールだよまったく。でも了承してくれたみたいで良かった。しかし、これで三人か。まぁ充分かな。後からでも増やせるし。




ーーー




アルスを引き連れギルドから出ると、外は大分暗くなっていた。仲間集めに焦り過ぎていて昼を食べて無いからか、腹の虫が騒ぎ立てている。エリーも同様らしく、




「夕食をとりにいきましょう」




と言って、俺とアルスを連れ酒場に入っていった。前に酒場に居た奴等にボコられた為、若干トラウマになりかけていたが、ここの酒場は比較的穏やかな様子だ。




冒険者達が集まり、料理をつまみながら酒を交わしている。見てるだけでウキウキしてくる光景だ。ザ・異世界酒場って感じだな。




適当に空いている席に座った俺たちは、端に置いてあるメニューを覗いた。異世界語も大分板について来たが、やはりスラスラとはいかない。しっかり読むのも面倒なので、エリーとアルスがおすすめしていたトゥルーナを頼んでみた。




しばらくして、若いウェイトレスが料理と酒を持ってきて、俺達三人の前に置いた。俺は今18歳だが、この世界の成人は16歳らしい。よって16歳から酒が飲める。今までにもバイト帰りに仲間のおっちゃんに酒やつまみを奢ってもらっていたので、アルコールには慣れていた。




運ばれてきた料理は、豆や野菜などの炒め物と肉の塊をトロトロにした物。流石現地の人のおススメだけあって、どちらも美味しそうだ。我慢しきれなくなり料理に手を出しそうになった所をアルスに止められた。




「折角だし乾杯しようぜ!新たなパーティの誕生…そうだな、名前はデッドスカルでどうだ?」




「おお、かっこいいしそれでいいぞ。それじゃ、デッドスカルの誕生を祝って、乾杯!」




若干厨二感漂わせる名前を叫び、俺達は盃を交わす。


ぐびぐび、冷たい酒が喉を通る。あー、久し振りに疲れた。酒が美味い。あれ、そういえば、




「飯前の祈りはいいのか?」




「ああ、冒険者はいう必要が無いんだ。そもそも国毎で祈りは違うからな。面倒くせえし。」




感謝など所詮そんな物なのか。まぁ、今は目の前の食べ物に集中しよう。豆と野菜などの炒め物は酒に合うし、肉は沢山食べても飽きないほど美味しい。酒も仲間と飲むとこんなにも美味しいのか。一人ホモが混じっているが、我ながら素敵な仲間が出来たと思う。




待ってろ青春!少し遅れたが取り戻してみせるぜ!




ーーー




今日はアルスの家が近いという事で、アルスの家に泊まらせてもらう事にした。彼もまたエリーと同様、一人暮らしらしい。この世界は独り立ちする人が多いのだろうか。俺?無理無理。一ヶ月で野垂れ死にそうだ。




その晩、アルスの家のリビングで作戦会議が行われた。作戦会議といっても、これからのパーティの方針だから作戦もへったくれもない。




主な目的は魔王討伐。しかし魔王城に行くには翼の持つ種族、パリエルとダスケルの何れかの種族が必要らしい。そのため、ギルドの依頼を受けながら金を貯め、あらゆる国を歩き、その路の途中でパリエル人かダスケル人の誰かをパーティに引き入れる。また、ほかのパーティメンバーも随時募集中という事になっている。




あと、パーティのルールだが、




1. 無闇な暴行はやめましょう


2. 仲間どうしで喧嘩はやめましょう


3. 全てにおいて割り勘です


4. ホモは性欲を押さえましょう




特に4は大切だ。俺の尻の処女を仲間に奪われるわけにはいかないからな。童貞を襲わないという言葉が何処まで本気なのか、俺には分からないし。




とまぁ、こんな事を決めて、各自自分の部屋に戻った。早速明日にはこの街を出るらしい。魔物も結構出るらしいから気をつけなければ。いや、その前に今晩は仲間のホモに気をつけなければ。




ーーー




勇者lv. 1




魔法: 治癒魔法を使われた事がある


剣術: 剣を持っているが使った事はない。


知能: 積極的に行く予定


仲間: エリー、アルス




職業: 賢者


特技: 知能


趣味: 仲間と冒険

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異世界転移は甘くない! 七草粥 @nanakusa1219

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