3話「蝉のラブソング」
なんで夏のトウモロコシというのはこんなにも
目の前で
まあ調理で
なにせ
けれど
「あのー、洗い物手伝いますか?」
そして
外見は
具体的には
「
俺の
鏡テオもつられて
「まあ
「はい、雑賀さん」
お、笑った。ついでにきゅんとした。俺には似合わない単語が出るくらいに、青路ミチルの
もう少し成長して、
意外と好みドストライクかもしれない。問題は妹の一人と同い年くらいにしか見えないことだ。そういう視点しか持てない。
「あ」
若干
こん、と軽い音が俺の近くの
「悪い悪い。それにしても茹で加減か……枝豆
「そ、そりゃあ良かった……」
照れた青路シュウは、豆を拾いながら俺を
綺麗なんだが、
「ん? お兄さんの顔に
「ははは……じゃあ妹は父親似か?」
美形な表情で自画自賛する青路シュウの
しかし青路シュウと青路ミチルはあまり似ていない。まあ俺も妹
なので話の流れ的に聞いても問題ないと思いながら
「……似てねぇよ」
小声で、
「そういえばチヅルはミチルにそっくりだったね!」
空気を読まない鏡テオだが、俺にとっては救いの手だった。
再び豆を拾い上げた青路シュウの気配が明るくなった。デレデレとした顔で、どうやら
「だろうー? どちらも可愛いだろう!」
「うん!」
なるほど。なんとなく鏡テオと
枢クルリが動かない
三秒ルールが適用されなかった豆は残念ながらゴミ箱へ。席に
「またチヅルの話……」
不満そうに青路ミチルが
いいなあ。うちの妹もこれくらいの可愛げがあればな。
調理も
『どうも。
それにしても電話なんて
『ビースト……じゃなくて青路さんのことなんですけど』
「ん? ああ」
なんか
だが
『なるべく
「無理だろ」
電話の向こう側から深い
『じゃあ一つ付け加えますと、俺の副業先の仕事仲間なんですよ』
「ああ、本業よりも楽しんでるという
『
「結果出る前に俺達か」
重い
しかも期末テストの時期なのに昼間にやっているとか、計画の一つとしか思えない。実際は計算
『こっちは
通話が切られた。もう一度、心の中で言っておくぞ。無理だろ。
こちとら好きで問題を起こしているわけじゃないし、むしろ勝手にやってくる始末なんだぞ。
予防もなにもないんだよ。携帯電話をポケットに入れて、
「じゃあ俺も食べるか。全部食われる前に……」
鏡テオが食べる量が赤子に見えてきた。大食い二人を初めて
もちろんテストで脳を
天鳥ヤクモは単語帳片手に食べているが、そんなことでは素麺はあっという間になくなる。枢クルリに
「わ、若いな……」
青路シュウの苦い
そうして俺達の
期末テスト
過去なんて
おかげで先生達もようやく
「あの……雑賀くん」
帰ろうと
顔を赤らめた様子は
なんだか
「放課後……ここで待ってるから!」
俺が受け取るのを
そして俺はというと、同じクラスの男子から
冷やかされる前に
携帯電話でメールを一斉送信。用事ができたから、各自で昼食準備するように。まあお
しかし岩泉ノアか。意外な相手だが、俺としてはありかなしで言えば――ありだ。
指定されたファミレスに辿り着いた俺は、現実を知る。
「……こんにちは」
小指で眼鏡をくいっと上げるおじさんが声をかけてきた。全てを
これ、
全部俺のことなんだけどな!!
「なんでアンタが!?」
「職場の昼
よーし、社会人の
まずはハンバーグセットにデザートは定番で、ついでにつまめるサイドメニューでドリンクバーもつける。
「ちなみに私はこのかき氷が食べたい」
若者が大好きなSNS
噂のかき氷はハートや星の形にカットされた固形ゼリーに果物、さらにはとろっと練乳まで盛りだくさん。多々良ララと似たセンスか。
ウェイトレスさんが俺とおっさんの顔を
「……ここに色欲の候補リストがある」
まるで町内会のお知らせを
ドリンクを取りに行こうとした俺は、
いや、いきなり札束を出されても困るだろう? それと似たような
冷房が効きすぎていると冷たいものだけではお
机に出された小さな冊子。その上に
「いらねぇ」
当たり前の返答。見知らぬ誰かの情報なんて、俺は抱えたくない。
「だが候補を集め、きたるべき時に備えるのだろう?」
「……?」
少し考えても、なにを言われたか要領が
上りと下りの電車が同時に駅構内を過ぎ去っていくような、日常にありふれた感覚。
「きたるべき時ってなんだよ?」
「
まあ
でも開くかどうかなんて決めていない。いや、それ以前に――俺達は大和ヤマトの家族を
なんだろう。扉という言葉に嫌な予感を覚える。激しい
「私は閉じたままにしておきたいが……鍵が
「引っかかる言い方だな」
「単刀直入に告げよう。青路シュウだけはやめろ」
ああ、そんなことか。
「
まあな。けれど。
「彼以外の誰でも良い。他を選べ」
無理だろ。そんな
ウェイトレスさんが笑顔で持ってきたハンバーグセットはじゅうじゅうと音がしていて、米もふっくらと
だけれど俺は味わうというより、
サイドメニューのフライドポテトも同じだ。無言で平らげていき、炭酸飲料を一気飲み。肉体的に
「ごちそうさん」
目の前でかき氷がようやく届いた。眼鏡の位置を直しながら、岩泉洋行は
「俺、
もちろん青路シュウを
「そういうやり口は
選ばれない。他の誰でも良い。そんなのは大嫌いな童話を思い出す。
助けてくれた相手ならば、誤解したままでも構わない王子。それを
痛む二本足で地面を
五千円札をテーブルに
ガキっぽく
「……ならば
そして
真っ黒な重い雲から、
それも無数に増えて、コンクリートを真っ黒にしてしまう。青や白がよく似合う気候が、あっという間に重苦しくなってしまった。
「まいったなぁ」
バケツをひっくり返したような雨を、閉店した
コンクリートジャングルという言葉がとてもよく似合う。建ち並ぶビル群が灰色の木々で、路面を流れる水が小さな川だ。
「ねえ。チヅルは帰らなくていいの?」
音もなく横に立っていた彼に、視線を向けないまま声をかける。
本当は気配なんて掴めなかったし、今だって横にいる自信なんて
そんな童話も知っている。昔、大好きな人に読み聞かせてもらったから。
「どこに?」
返事があった。そしてとても難しい質問をされてしまった。
僕はクルリみたいに考えるのが得意ではないし、正しい答えなんてよくわからない。
だから
「チヅルが帰りたい場所」
雨音で消えてしまったのか、返事はなかった。
ゲリラ
世界が雨のせいで区切られたみたいだ。行き止まりに立ち尽くして、どうにかならないかと
「人を殺したんだ」
今日の給食にカレーが出たみたいな、気軽な声だった。
だから僕も同じ調子で、
「どれくらい?」
なんて尋ねてみた。
「たくさん。多分ね」
「変なの。まるで覚えがないみたい」
「うん。だってそういうものだから。人間も、幸せも」
最近の流行は達観なのかもしれない。
共感できるかって言われたら、少し
本当はもっと身近な視点がいいな。たとえば明日は
「生きるってそういうことさ」
「違うよ」
明確な
真っ黒な雲が少しずつ
「七年間眠った蝉が、七日間生きるために鳴く。まるで歌ってるみたいだよね」
「うるさいだけさ」
「あれは
もしかしたらフラれたのかもね。だけど運命の蝉に出会って、なにかを残したのかもしれない。
だから来年も恋の歌が耳に痛いほど
「生きるってそういうことだよ」
「……」
「僕達は生命を
太陽の光が雲を割って、目に
「生まれてこない命もあるのさ」
ゆっくりと瞼を上げれば、横には誰もいなかった。
駄菓子屋の軒先には僕一人だけ。立つ鳥が
青空が姿を見せて、世界が
「……うーん、シュウはやっぱり気付いてないのかな」
梓が色々調べているみたいだけど、多分それはあまり必要ないだろうな。
だって根底が
歩き出した僕は、水たまりにあえて足を
「
「その話、詳しく聞かせてもらおうか」
目の前に白い服がよく似合う女の子が立っていた。綺麗な
「
「……そうだ」
僕の言い方に引っかかりを覚えたのか、返事に間が空いた。まあそれはどうでもいいかな。
必要なのは「彼」が僕に声をかけたきたということなんだろうね。
だから僕はこっそりと、秘密の計画を打ち明けた。
錬金術師機関から「錠」を全部
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