5話「セピア色の思い出と契約」

 長い時間、現世を漂っていたような気がする。彷徨うのとは違う。あれは道を知っている者が終点を見つけられないような物だ。

 波に揺られるのではなく、煽られるわけでもなく、流されるわけでもなく、ただひたすらに静かな冷たく暗い水中を動き回っている気分だった。

 手足の動きだけでなく頭の中も痺れるように鈍っていく。考えるのも億劫で、蛾のように光を求めて目だけを動かしていたような、それさえも覚束ない。


 よく晴れた日だっただろうか。遠目では黒胡麻がまるで小石のように軽く地面に落ちてきたように思える。風で吹き飛ばされればいいのに、真っ直ぐにそれは地面に激突した。

 ここまで進んでしまったかと他人事だった。大きな茸雲があらゆる命と叫びと絶望を空に舞い上げて、雨のように降らすのではないかと思う光景だった。

 遠くにいたはずなのに、爆風が僅かに届いた。向日葵が大きな頭を揺らして、種をいくつも地面へと零していく。誰かの代わりに嘆いているようで、涙の形に似た種を拾い上げた。


「それ頂戴、おじさん」


 そう言って伸ばされた手は土で汚れていた。日に焼けた肌と布切れのような服。麦わら帽子さえ、この子には与えられなかったのだろう。そういう時代だ。

 多くの人間が逃げ惑い、中には家族が心配で爆心地へと走りだすような状況の中で少年は向日葵のように僕を見上げていた。爛々と輝く目が、思考を鮮明にしていく。

 少年は僕から種を受け取ると、嬉しそうに首から下げていた小さな巾着袋に入れていく。それだけは不釣り合いなほど豪華な錦模様で、使い古されていたとはいえ目にも鮮やかだった。


「これで油を出すんだ!そんで庭に植えて、もっと増やすんだ!母ちゃんに一面の向日葵畑を死ぬ前に見せてやんだ!」

「……君は何処に住んでいるんですか?」


 なんとなく気になって屈んで視線を合わす。少年は真っ直ぐに茸雲がある方向を指差した。そして気付いたように、力のない声で呟いた。


「あ、だめだ。母ちゃん死んじゃった」

「……その、他の家族は?」

「父ちゃんも兄ちゃんも戦争に行ったよ。あのお空から船に向かって突撃するんだ!!だから死んだ」


 声が続けられなかった。こんな子供にこんなにも軽く死の言葉を吐かせる時代に、状況に、なにもできない自分がいるだけだった。

 一番怖かったのは、少年はもう死に動じないのだ。いつ誰が死んでもおかしくない。家族でさえ例外でなく、あっさりと受け止めて流してしまう。

 涙一つ流さず、目の前の光景を見てつまらなさそうに巾着袋を握りしめている。こんなにも正確に理解しているのに、この子は恐れを知らないのだ。


 感情さえも教えてくれる時代じゃなかった。嬉しいこと、やりたいこと、楽しかったこと。その全てを知識として、この子は持っていない。

 それが悲しいと知らないことの、なんと空腹なことか。なんと虚しく、罪なことか。それなのに少年は爛々と茸雲の向こうで輝く太陽を見上げている。

 不格好な向日葵のように、少年は立ち上がって背伸びをする。警報が少し遅く鳴り響き、それが重複して耳に痛いほどなのに、少年の声はよく聞こえた。


「おじさん、近くの街に行こう。母ちゃんは死んじゃったから、戻る必要ないもん。ありったけの種を持って、闇市場で交換してもらおう」

「僕はおじさんじゃなくてナレッジです……君の名前は?」

「ゲンジロウ!!大和ゲンジロウだよ、よろしくな!」


 漂っていた僕の手を風船の紐で引っ張るかのように握るゲンジロウ。この子はなにも知らないのだ。幸せさえも、知らない。誰かが教えなくては、知らないまま死んでしまうだろう。

 これも運命なのだろうか。それとも最後のチャンスなのだろうか。わかるのは、少年の手が汗ばんで熱いことだけ。今にも滑って離れそうなのに、子供なりの握力で必死に握り返してくる。

 そういえばあの子もこんな風に僕の手を握ってくれた。僕の天使、最愛の赤ん坊、親指しか握れなかった小さな手が成長するのを待っていたはずなのに、叶うこともなかった小さな命。


 魔女の呪いとはいえ、感謝しよう。もしかしたら僕にとって、本当に叶えたかったことを遂げられるかもしれない。それならば世界なんか滅んでもいい。

 まずはこの子に一人で生きる術を教えよう。あれだけの爆撃を受けてしまえば、今の本国には降伏が最善の道となるだろう。例え国民全てが悔しさで涙を流したとしても、悲しさや苦痛で流すよりはいい。

 わかっている。負けを認めるのは屈辱だろう。勝つためならば手段を選べられないことも、僕はよく知っている。大切な物を失えばなおさらに選ぶことなどできない。だから僕はあの選択しかできなかった。


 でもこの子には不幸になる選択も、幸せになる選択もある。あとはどちらを選ぶか判断できる知識が必要だ。それも僕が全て教えよう。

 これからはあらゆる物資が必要になる。そうすれば値段は高騰していく。今の内に物々交換で可能な限り衣服を集めておこう。衣食住の中でも、持ち運びが楽で大量に持てるのは衣だからだ。

 夏が終われば秋が来る。それまで事態は上手く落ち着かないはずだ。できれば布がいい。温かい素材であれば、これからの冷たい風に対抗することができる。




 あれから何度も危機的な状況に陥ったものの、知識で対処できる内容で良かった。おかげでゲンジロウとハナコの結婚式費用も貯めることができた。

 ハナコは素朴で素敵な女性だ。正直に言えばゲンジロウには少しもったいないような気もするが、彼女ならば彼の突拍子もない思い付きや行動にも付き合ってくれるだろう。

 戦争が終わり、洋物が解禁となって十何年だろうか。まさか和式と洋式両方やりたいと、婿側から言ってくるとは思わず僕はハナコの両親に何度も頭を下げる羽目になった。


 とりあえず式費用は全て婿側で持つことにしたが、なんとか笑顔を作ろうと筋肉を強張らせているハナコの両親には頭が上がらない。

 ゲンジロウを叱りつつも、二人の挙式を見て目に浮かぶ熱い物が随分久しく感じた。僕も空腹だったのだろう。飢えて、飢えて、なにもなかった。いや、なくしてしまった。

 やっと一つ。叶えられた。だけどまだ足りない。まだ叶えたいことが沢山ある。それはゲンジロウも同じのようで、新婚旅行が熱海の温泉ではなくハワイと言った時は時代を考えろと怒鳴ったのは少し悪かった。


 僕の予想よりも遥か斜め上を爆走するゲンジロウを健気に献身を注ぐハナコに何度も同情し、いつまでも子供の頃と変わらない爛々とした瞳があの日の向日葵を思い出させる。

 東京の下町に建てた一軒家の庭に向日葵を植えて、毎年そこからゲンジロウの子供達と種を集めた。向日葵油の作り方を教えれば、皆ゲンジロウと同じ瞳で喜ぶのだ。

 孫もできて、大家族のようになっていくゲンジロウの家を離れようとした時だった。ハナコが急に倒れて病院に搬送された。祈るように手術中の灯りを眺めていた。


 少し怖かった。ゲンジロウは昔と変わらない。ならばハナコの死も、母親の時と同じように流してしまうのではないだろうか。この子は、哀しみを覚えただろうか。

 僕は年を取らなくなったのではなく、外見が変わらないだけだ。しかし人間には恐ろしく見えてしまうだろう。そう思って離れようとしたのに、ハナコが倒れるなんて。

 怖い。愛しい人の死に目に会えなかった僕だけど、誰かの愛しい人が目の前で弱っていくのはもっと怖い。忍び寄ってくる不安に、心がゆで卵のように脆く潰されていくようだ。


 手術は成功した。けどハナコは高齢による体力の低下で、余命は幾許もないと宣言された。こんな時に僕の呪いを与えられたら、僕はハナコを永らえさせたかもしれない。あの言葉を聞くまでは。


「ゲンジロウさん。待ってますよ。ナレッジさんにはできないことが、私の役目ですから」


 ハナコは知っていたのだ。僕がゲンジロウよりも長く生きることを。いや、死ねないことを。当たり前だ、何十年もこの姿で生きてきたのだから。

 それなのに彼女は僕を家族として受け入れてくれた。僕では叶えられないことを叶えてくれる。彼女はやっぱりゲンジロウにはもったいないほどの女性だった。

 子供達が涙を堪えている眼前なのに、僕がハナコの皺くちゃになった枯れ木のような冷たい手を握って泣いてしまった。まるで向日葵の種みたいに、いくつも目から涙が零れていく。


 辛くて辛くて、鼻の奥が痛いほど長い時間をかけて泣いた。かけたい言葉はたくさんあるのに、全部嗚咽に潰されて声にならない。これから曾孫だって生まれる時に。

 それなのになんて安らかな顔で笑うんだろうか。ゲンジロウはちゃんと彼女を幸せにしていたんだと実感できた。そんな彼女も誰かと同じように煙となって空へと昇っていった。

 あの日見た茸雲よりか細くて、風に煽られて今にも消えそうなのに、彼女らしくしっかりと天にも届きそうなほど長く伸びていく。秋の遠い青空でも、彼女の煙は一本の芯があるようだった。


「……うっ、ぐぅ」


 横から聞こえてきた声に振り向く。胸元と口元、それぞれを片手で押さえながらゲンジロウは背中を丸めている。強く瞼を閉じているのに、大粒の涙は堰き止められないようだ。

 僕はもう一度泣いた。あんなに枯れそうなほど泣いたのに、こんなにも涙が零れることを大事な二人が教えてくれた。ああ、この子は知ったのだ。大事な人を失う悲しみを、誰かのために泣くことを。

 鼻頭を真っ赤にして、すっかり老人の体になったゲンジロウの体を抱きしめる。今にも折れそうで、青年の時よりも小さくなった体が年月を思い知らせてくる。


「……う、ああ、ああ……っぁ────」


 音にもならない泣き声は、きっと何十年も連れ添った人を失う時でしか出せない。それくらい掠れて、すり減って、絞り出すように愛しさと悲しみを叫んでいるようだった。





 ハナコを失った悲しみが消えることはない。それでも心を豊かにしてくれるのはいつだって周囲の人間だ。ゲンジロウの曾孫も、これまたゲンジロウによく似ていた。

 特にヤマトは幼い頃のゲンジロウそっくりで、思わずゲンジロウと一緒にお菓子を与えすぎてしまう。飽食時代と言うが、これはこれで幸せなことだと思える。

 曾孫達も可愛くて仕方がない、とはりきっていたゲンジロウにも死の気配が忍び寄っていたようだ。ある夜、僕はゲンジロウの寝室に呼ばれた。


「……ナレッジ、儂はもう長くない。お前は色んなことを儂に教えてくれた。魔人と聞いた時は、三つも願い事を叶えてくれるのかと思ったが、お前はそれ以上の物を儂に与えてくれた」


 厳粛な顔で語るゲンジロウの言葉に耳を傾ける。こんなにもはっきりと喋れるのに、それでも本人には寿命の終わりが近いことがわかるらしい。


「幸せ、喜び、哀しみ、怒り……子供の頃、儂はそんな単純なことも知らなかった。知れば死にたくなるような時代だった。だから母ちゃんが死んだ時のこと、この年になってようやく後悔した」


 年のせいで少し濁った目から透明な滴がぽろぽろと零れていく。手を伸ばせば掴めそうなほど、明確な形の大きな粒。布団の上に落ちては染みとなって消えていく。

 僕もつられて泣いた。この子はやっと、肉親を失った悲しみを知ってくれたのだと。嬉しいとは思えない。それでもこの子はもう飢えた子供ではなくなったのだ。

 なんと長い旅路だったことだろうか。暴食は罪と言うが、空腹は罰になるのだろうか。いや、きっとそうじゃない。なにも知らないことこそが、苦しいくらいの罰なのだ。


「儂は母ちゃんを見捨てた。それで生き延びた……けど、あの時助けに行ってればよかったとも思う!正解がわからない!知りたい、儂は正しかったのかを!?」

「ゲンジロウ……」

「儂は生きた!でも母ちゃんも生きたかったんじゃないか!?例え死ぬとしても、最後の肉親である儂が来ることを願っていたのではないか!?一緒に、死ねばよかったのか!?」

「それは違います!!」


 僕は力強く断言する。あれはどう見ても間に合わなかった。後で調べて判明したことだが、ゲンジロウの母親がいた病院は跡形しか残っていなかった。命は全部あの茸雲が巻き上げてしまった。

 戻ったとしても悲惨な状況しか残っていなかった。幼いゲンジロウは死んでいたことだろう。そうすればハナコと出会うことも、子供に孫、そして曾孫達にも僕は会えなかった。

 五百年の孤独を、妻と赤ん坊だった子供を失った僕の心を温かい涙で埋めてくれたのは、ゲンジロウが生きたからだ。あの時、種欲しさに手を伸ばした向日葵のような少年のおかげだ。


「違います……だから、死ねばよかったなど口にしないでください……貴方が生きて、嬉しかった人もいるんですよ……」

「……すまない。ナレッジ。わかってしまったんだ、死ねば……なにも知ることはできない。儂を助けてくれたナレッジが、幸せになるかどうかすらも」

「貴方は……貴方がっ、気にしなくていいことです。僕は罪人なんです。持てる知識全て使って……一方的な虐殺を行いました」


 今ではもう知る人は少ない過去を話す。人間相手に話すの初めてだった。その昔、戦争で苦しんでいた敵が、将であった僕の子供と妻を暗殺した。

 赤ん坊だった僕の天使。穏やかで野に咲く花のような妻。全てを失った僕は、報復として敵全てを殺せる策を用いた。目論見は大成功し、味方陣営の被害も大きかったが、殲滅できた。

 知ったのは、復讐を果たした僕にはなにも残っていなかったこと。それなのに空腹になれば浅ましく食べ物に手を伸ばすことを嫌悪して、自ら命を絶った。


 それを魔女が蘇えらせてきたのだ。絶望も希望もない、空虚な世界を漂うように旅をした。ただ一つ、魔女だけはあの扉から出てこないように。


「僕が幸せになる必要はないんです……だからゲンジロウ。貴方は、っ、幸せでしたか?」


 詰まりそうになりながらも尋ねる。これではいつもと立場が逆転している。まるで僕の方が縋る子供のようで、それでもゲンジロウから答えを聞きたかった。


「……ああ、もちろん。全然足りないくらいだ!!もっと、もっと!!幸せに……なりたかったなぁ」


 ごめんなさい。僕が知識を与えたばかりに、貴方は暴食になってしまったようだ。飽くなき、幸せへの欲求。お腹一杯のはずなのに、まだ求めている。

 普通の人は曾孫に会うことすらもできないのに、貴方はもっと色んな家族に出会いたかった。悲しみも、怒りも、幸せや喜びを増幅させる香辛料スパイスのように、貴方は味を知った。

 お互いに抱きしめながらすすり泣く。僕もね、貴方ともっと生きたかった。色んなことを貴方と知りたかった。僕の親友で、家族で、かけがえのない人。ゲンジロウがいたから、僕は────。




 遺品整理中、懐かしい物が出てきた。綺麗な真綿に包まれた錦模様の巾着袋。どうせ向日葵の種を残したまま入れたのだろうと思い、口を開ける。

 出てきたのは折りたたまれた数枚の写真。道理で膨れた腹のように広がっていたと思ったら、一枚と決めることはできなかったらしい。その理由に、僕はすぐ納得した。

 結婚式の写真、子供が生まれて家族集合させた写真、その次は孫が生まれまくって親族写真、曾孫が生まれて最早一族写真、そして最後はハナコとゲンジロウ、そして僕を含めた三人の白黒写真。


 ゲンジロウの歴史だった。生きてきた証だった。それを少年時代から大切にしていた巾着袋に破れそうなほど詰め込んで、それなのに死の間際まで幸せを求めていた。

 僕は何度目かわからない涙を流した。少年の宝箱のように、彼にとってこの巾着袋こそが大事な物を詰め込む道具だった。母親が贈ってくれた、大切な巾着袋に大事な思い出を詰め込んでいたのだ。

 壊さないように握りしめる。大丈夫だよ、ゲンジロウ。貴方に代わって、僕が貴方の一族を守ります。貴方が一度失くした家族を、自らの手で取り戻したのだから。もう二度と失わないように、僕が守ります。





 なーんて、意気込んでみたのも十年くらい前だったかな。考えてみれば、大体大和家に被害が出るとしたら僕のせいだったことを失念していた。

 まさかカーディナルと錬金術師機関が回りくどくも青い血の人外を使って仕掛けるだなんて、扉の向こうにいる魔女も抱腹絶倒する事態だ。しかも六番だなんて、世界恐慌の引き金だった数字じゃないか。

 青い血は金に絡む場面に必ずと言っていいほど出てくる。個人的な理由で動くというが、どちらかと言えば個人的な金を得るために動く、ことの方が正しい気もする。


 一番であれば太刀打ちできなかっただろうし、十三番は規格外、七番と八番はまだまともだが、二番は最悪の事態を引き起こすことで有名だ。十番は宗教絡みだっただろうか。

 そして噂の六番は裏社会と言うべきか、表沙汰にはできない金稼ぎが得意と聞いている。十三人の血族と言うが、正直あれは人外の領域だ。血が青い、なんて人間じゃない。

 いや知識の魔人である僕が人間じゃないと言うのも変なことではあるけど、青い血は社会に影響をもたらす。つまり一人が死ねば、社会が震度七並みの地震に襲われたように荒れるのだ。最早災害だ。


 なんでそんなことを僕が知っているかと言うと、無駄に長生きしたせいで知ってしまったとしか言うしかない。特に戦時下は金の動きが大きい分、普段は見えない者が姿を現す魔性の時だ。

 これも全ては僕を蘇らせた魔女の呪いのせいだ。絶対にあの扉に閉じ込めたまま出さないようにしてやる。暴食候補なんか選んでやるもんか。そう……ゲンジロウのような相手でなければ、選ぶ気も起きない。

 食い散らかすこと、大食漢、食べ残しを漁る、など食事に関することは多々あるが、七つの罪として数えるならばそれらは些細な行儀の悪さで済んでしまう。本当の罪は幸せを知らないまま、満たされないと嘆くことだ。


 なにを幸せとするか、基準を知らない。悲しみを知らない、怒りを知らない。知らないまま与えられても、幸福を感じることはできずに飢えてしまう。それは罪だ。

 そしていつかはなにもわからないまま暴れるように食い潰していくことになる。無知は罪ではない。罰を与えるならば、知らないままにした周囲に与えるべきのことだ。

 無知を放置することは罪深い。しかし大罪とは、もっと話が違うと僕は思う。だからこそ僕は大食いであるヤマトを選ぶつもりはないってのに、浅はかな判断を下したものだ。


 しかもその判断を下したのが錬金術師機関であることを考えると、あの骸骨親父が五百年前のことを一切反省してないと見える。流石は一人で七つの罪を網羅してあらゆる元凶となっただけはある。

 さらに腹立つのは煽られてカーディナルまで攻勢に出たことだ。つまりは優男風味婚約者が口では綺麗事を騙りつつも、彼女を骸骨親父よりも先に取り戻そうと慌てたようだ。

 あー、手に取るようにわかるのが怒りを増長させる要因だ。大体、二人が考えるよりもあの「姉妹」は厄介なのに、これまた魔人の内四人というか三人と一匹はあっさり骸骨親父の手中に収まるし。


「どいつもこいつも知識が足りないパンチ!!!!」


 苛立ちのあまり無辜な民家の壁を殴ってしまった。もちろん痛い。魔人とはいえ、痛みは感じる仕様なのも魔女の趣味としか思えず、腸が煮えくり返るようだ。

 魔法を使わないと一応約束しているため、痛みを軽減することもできずに歩くしかできない。現時刻は九時三分。街灯なしでも歩ける近現代の東京とはいえ、今は薄暗い。

 というのも、目の前で蔓延る茨の壁が街灯を潰すように呑み込んでしまったからだ。少しずつ茨は広がっており、事態に気付いた者は逃げる前に呑み込まれるほど侵食が速い。


 最早一区画近くはあと十分もしない内に覆うだろう。危ないからという理由でリンさんは少し遠めのファストフード店で待機してもらっている。知識人とはいえ、この先はその場の対処しかできないからだ。

 賢者の石。かつては錬金術師が第五元素であるエーテルから作られるエリクサー製造の過程として目指した物品だが、今の世では人工エネルギー含有物質であるエリクサー製造の過程で生成される副産物であると順序が逆になっている。テレビ報道などでは、の話だが。

 真実を知っている身としては、逆なのである。大量の賢者の石から極僅かに抽出されるエーテルを物質として固めたものが、人工エネルギー含有物質エリクサーとなるのだ。


 薬品となるのはその絞り粕となった賢者の石だ。エーテルで整合性を保っていた石が、抽出によって粉や液体など、形を保てなくなる。薬品と言ったが、人体には使用できない。

 代わりに鉱石の類に使えるのだ。伝説で賢者の石が変哲もない石を金に変えたように、薬品となった賢者の石は元素に干渉してあえて乱す。物理法則や元素記号など無視して、根本から搔き乱すのだ。

 今のところ指向性は決められないので、あくまで研究段階ではあるが、実用性が出るとなると金相場が崩れるかもしれないが、レアメタル量産が叶えられるかもしれない。


 しかし困ったことに賢者の石は魔法とすこぶる相性が悪い。どうにも固有魔法にも元素が存在するらしく、賢者の石は体内に入った後は真っ先に固有魔法へと干渉する性質があるようだ。

 今だってそうだ。ヤマトの固有魔法【野に蔓延る茨ロサ・エグランテーリア】によって発生する茨が爆発的に増えている。ゲンジロウの孫ながら、やけにメルヘンな魔法名を付けられたものだ。

 視界に入る範囲に茨を生やすことができる。しかし操れるのは二本まで。出せるのは五本と、限界数は低い。ただし伸びる距離で言うならば、無限。なんの邪魔もなければどこまでも伸びるだろう。


 ただし茨の強度自体が普通の植物と変わらない。しかし今は違う。牛革の鞭のようにしなやかで強い耐性を宿している上に、大人の腹を思う存分殴れそうな丸太に近い太さ。

 それが十何本、そろそろ百に到達するだろうかという数まで増えている。しかし制御できてない。動く者を捉えれば、攻撃して捕獲しているようだ。そうなるとヤマトの現在の状況は把握できる。

 おそらく寝ている。茨自体が意志を持ったように動いては襲うならば、魔法を暴走させている本人は自己防衛として眠って動きを止めるしかない。しかし放置するわけにはいかない。


 茨は増えている。しかし手当たり次第にではない。よく観察すれば、茨は伸び続けている。つまり根元自体の範囲は極狭い。ヤマトの視界範囲からしか生えていないだろう。

 だがこれだえ爆発的に増えているとなると、いつかは自分の魔法で出した茨に圧迫されて潰される。もしも行き止まりの袋小路ならば最悪だ。早く見つけださなくては。

 と思った矢先の、風切り音と共に頭上から茨が棍棒のように落ちてくる。痛いだろうが、死にはしないだろう。足だけでも動くならば、問題ない。


「大人の階段のぉおおぼぉおおるぅうううううううううううううう!!」


 ミュージカル歌手というには自由すぎる発声とどこかで聞いたような歌詞フレーズとバイクの排気音。うーん、彼もここに来ていたか。

 てっきり僕と同じで魔女を扉から出さないようにするため、好き勝手に街中を走り回りながら逃げていると思えば、相変わらず自由な男だ。

 おかげで僕の頭上を襲おうとした茨は回転するタイヤに巻き込まれて破裂した。飛び散る緑色の残骸と、芝を刈った後のような青臭さ。


「二週間ぶりだなぁナレッジ!なにはともあれ心配ないさぁああああああ!!この我が尊き相棒と共に来た!」

「わー、ありがとう。うれしいな」


 思わず棒読みになる。多分著作権とか気にしないとは思っていたが、好き勝手すぎる。というか、普段の口調はミュージカル風味の癖に実際は音痴なのをそろそろ自覚しよう。

 彼の愛車の後ろには気を失っている少女を片手に抱く……少女が立っている。一瞬顔がイケメンすぎるせいで女装かなと勘違いしそうになったが、そういえば嫉妬の候補……ではなく鍵に選ばれた多々良ララか。

 灰色の美しいレオタードドレスが血で汚れるのも気にせず、多々良さんは急げと焦らせている。実はその男は催促すると逆効果なのを知っていると後が楽なんだが。


「我が知的好奇心が疼くのだが、ナレッジ。お前はどちらにつく?」

「……なんのことやら」

「事態は進んだ。五百年の膠着は終わった。そしてお前は必ず魔法を使うだろう。愛しきを知るお前は、確実に魔法を使う。断言しようじゃないか」


 珍しく真剣に、それでいて愉しそうに問いかけてくる男だ。しかしバイクの後部座席にガラスの靴で立っている多々良さんは、そんな男の肩を片手で掴んでいる。

 そこから現在進行形で骨が砕ける音がしている。だというのに、僕から目を逸らそうとしない。そうか、彼が彼女を決めたのは、飽きたのだろう。

 五百年だ。彼にしては辛抱強く待った方だと思うが、うんざりするには充分な時間だ。なにより、彼女は彼好みだ。嫉妬深い、のに、湿度がない。


「……流れに任せますよ。僕も君と同じです」


 決定権は僕達には委ねられていない。僕達は扉を封鎖する錠。あの魔女を世界の外側に締め出して閉じ込める鎖。それが魔人。魔法の人柱。

 だからこそ鍵が必要なのだ。でも錠にも意地があるように、鍵にも意思が必要だ。愚かなくらい、強く、揺るがない一本筋。清々しいほど罪深い心。

 でも一つだけ。鍵は七本揃えなければ意味がない。だから僕は絶対に鍵を選ばない。あの魔女をこの世界に招く事態に陥ることだけは、避けてみせる。


「そうか。では我が魔法を一つ。十二時までの守護をお前に与えよう。十二時まで、茨はお前を襲わない」

「ありがとう、ナルキズム。それにしても相変わらず魔法の使い方が下手ですね。僕達の魔法の癖を弱点とするのは君くらいですよ」

「はははは。完璧超人よりは親しみが持てるだろう?それではさらばだ、ナレッジ!!」


 お互いに笑みを交わして背中を向ける。後味を残さないというか、爽やかに去る男だ。あのライダースーツの下が全裸だとは思えないくらいだ。

 どうにもあの男は湿度を嫌う。蒸れるのも嫌がるし、水も嫌いだったはず。だからこそ彼は死に際も水の中でないことに喜んで、炎の中を踊っていた。

 いや、踊らされていたと言うべきか。熱くて、少しでも足を止めれば溶けた皮膚が鉄板にくっつくような状況だった。その中で笑いながら動き回った男は、死んでも変わらないらしい。


 懐かしい嫌な思い出を頭に描きながら、暗い路地を進む。茨が道を開けてくれるようになったが、街灯や家の灯りも封じ込めるように、視界全てが重い緑色に染まっていく。

 時折美術品のように人間が茨に埋め込まれているが、大体は茨に攻撃されて気絶させられたらしく動かない。そんな中、腰だけを茨に絡められながら携帯電話を操作する青年に出会う。

 青と緑色の目。確か強欲候補のテオバルド・鏡・エーレンベルクだったかな。眠そうに欠伸しながらゆっくりとした手付きで誰かにメールを送ろうとしているらしい。


「ふぁ……ん?こんにちは……えっと、あれ?おじいちゃんでいいの?」

「よくわかりましたね」


 確か彼とは一度も会ったことがないはずなのだが、子供の目は誤魔化せないらしい。いやでも、彼は二十代、大学生でもおかしくない年齢なのだが。


「やっぱり!おじいちゃんはうねうねに捕まらないの?」

「うね……茨のことですか?知人に魔法をかけてもらったので大丈夫なんです。そういう君こそ、魔法……」


 言いかけて気づく。鏡さんの固有魔法は【貴方に贈る毒薬ギフト】という凶悪な物だったはず。しかも本人も自滅できる内容だ。

 毒薬を混合して溶解液に近い物を作ることはできるだろうが、発生する溶解による煙も毒性があるのだから、こんな茨で囲まれた密閉空間では逃げ場がない。

 下手したらヤマトも巻き添えになるかもしれない。うっかりしていた僕の心配を余所に、目の前で鏡さんは気が抜けた笑顔を見せる。


「サイタがね、使っちゃ駄目って。それで椚と梢に連絡してるの。茨に絡まって動けない、って。そろそろオヤスミの時間なのになぁ」

「そ、そうですか……」


 心の中で傲慢候補グッジョブ、と褒めておく。子供のような青年で良かった。こんなにも素直に言うことを聞くなんて。


「カノンに驚いて後ろ下がったら、ひょい、って捕まっちゃったの。怖くて動けなかったら、なんか壁の一部になっちゃった」

「動きが小さいと襲い掛かってくる反応も鈍る、ということでしょうか。なんにせよ、暴れたり魔法を使っては駄目ですよ?僕は先に進みますが、君はここで迎えを待っているといいでしょう」

「はーい!おじいちゃんも気をつけてねー!」


 呑気に笑顔で見送ってくれる鏡さんを背中越しに眺めながら前へと進む。少しずつ密閉具合が強くなっている。息が詰まるような、太い茨の圧迫感。

 まるで根が蔓延る地中を進む気分だ。ああでも、五百年くらい現世を彷徨っていた身としては、こちらの方が少し気が楽かもしれない。

 進むべき道が決められていて、逃げられない。その方が諦めもつきやすい。僕の運命もこれくらいわかりやすかったら良かったのに。


 そう考えていた矢先、今度は涙を流しながら気絶している少女が壁に埋め込まれていた。傷のある手首には紫色の猫の痣。そして赤く染まった爪。

 しかし爪なんかよりも赤い液体が入った注射器が茨の上を転がっている。光源などほぼ消えているのに、いやに輝いて見えるのが不気味だった。

 いらないので爪先で蹴れば軽く転がっていく。すると浮かび上がる携帯ゲーム機の灯り。猫耳を付けた少年が、疲れたような目元でこちらを見ている。


「……魔人?」

「ええ。正解です」


 どこをどう見て判断したのかわからないが、彼とも初対面のはずなのに正体がばれてしまった。勘が良すぎて逆に怖い。

 先程の鏡テオとは違い、彼は茨によって雁字搦めに絡まれていた。辛うじて手首の先が動かせるくらいで、おそらくどうにか抜け出せないかと少し抵抗したらしい。

 赤い爪の少女も固有魔法で抵抗して首でも絞められたのだろう。息は聞こえるため、死んではいない。予想でしかないが、多くの者は死ぬ前に気絶しているだろう。


「……その注射器、いらないなら俺に寄越して。この場では使わないけど、調べたいし……使うことになるかもしれない」

「中身は御存じで?」

「わかる。ついでに、どうしてこんな状況になったか、教えてあげようか?」


 僕でも把握しきれていないというのに、随分冷静に話しかけてくる少年だ。確か怠惰候補だったかな。名前は枢クルリだったはず。可愛い名前だったから、つい覚えていた。


「大丈夫です。今は知るよりも、解決するのが先決ですから」

「できるの?」

「ええ、もちろん。簡単なことですから」


 枢さんが持っている携帯ゲーム機の灯りを頼りに注射器を拾い上げ、もう片方の手に渡す。彼は特に追及することもなく、無言でゲーム機を片手で動かし始めた。

 どうやら暇を持て余し過ぎて縛りプレイ的なことをやり始めたようだ。いや本当に、物理的に縛られているゲームプレイというのも中々味わえないだろうけど、意外と豪胆な少年だ。

 だけどこんな暗闇でゲームをすると目が悪くなるぞ、と言ってやりたい年寄り心もあるが、今はヤマトが先だ。まあ、ゲームする余裕があるならば大丈夫だろう。


 しかし先に進んでいくと腰を屈めなくてはいけないほど狭くなってきた。さすがにそろそろ体の節々が痛むかと思った瞬間、頭上の茨が花開くように動く。

 新鮮な夜の空気が胸に入ってくるが、結局は日本の夏。蒸し暑い空気が喉に重く流れ込んでくる。それでも青臭い茨に囲まれて酸素不足よりはましだろうか。

 近くに落ちていた腕時計を確認すれば、どうやら十時近いらしい。大分遠くから警察の避難誘導や消防隊員の声が聞こえる。かなり騒ぎが大きくなり、いつもの隠蔽工作もできないようだ。


 本当にこういう時に限って無能な二つの組織め。もう秘密とか名乗れない時点まで来ているというのに、本人達は隠し通している気分なのだから始末に負えない。

 とりあえず蠢く茨の上を歩いていく。波の上を歩いていると言えば綺麗かもしれないが、波打つ蛇の上を歩いているの方が感覚的に近い。

 もしくはエスカレーター逆走でもいい。進んでいるのに、遠ざかっている。仕方ないので、和服ながら懸命に走り出す。全力疾走なんて数年ぶりだ。


 しかし魔法が使えない僕に辿り着ける芸当ができるはずもなく、あっという間に息切れ。その場に膝をつけば、あっという間に波にさらわれる浮き輪のように位置が変わる。

 でも僕は外見通り文官系というか、最近の運動不足も祟って色々と残念な感じの身体能力しかない。ご、五百年も生きた魔人だからって、万能な訳じゃない。

 特に魔法が使えない魔人なんて、一般人と比べても遜色がない。やっぱり魔法を使うしかないと考えた僕の頭上に、落ちてくる小さな影が二つ。


「ナレッジ様、魔法を使ってはいけません!」

「というか魔人と名乗っていた割に役立たっどぶふぉっ!?」


 滅多に僕の前に姿を現さないフェデルタが、空から傲慢候補を連れて落ちてきた。そして僕に暴言を吐きかけていた彼を、雑賀サイタを茨の上に強く叩きつけた。


「なにしやがるっ、忠義はどこにいった!?」

「黙れ!この御方はお前が気安く話しかけていい身分じゃない!」

「とかなんとか言って、さっきお前はこいつを対等な奴みたいに説明してたのを俺はしっかり覚えているからな!!」

「そ、それは……とにかく!お前はこの御方にもう少し敬意を払え!!」


 驚いた。あのフェデルタが年相応、今は外見通りか、の会話をするなんて。なんかこう、小さい頃から見てきた子供がはしゃいでいる姿を見る老婆心が沸き起こる。いや、爺なんだけどね。

 少し大人びていた彼がこんなにも感情をむき出しに年頃の少年と喧嘩するなんて。少しは長生きしてみるものだな。いやでもやっぱり魔女は絶対許さないけど。


「フェデルタ、身分などもう役に立たないほど長く生きました。君もです。もう、彼女の下僕として行動しなくてもいいんですよ」

「げ、ぼく?」

「お前には関係ない。それよりも今からこいつと俺が暴食候補の少年を救出に向かいます。貴方は大和家で待機を……」


 うーん、しっかりした子だ。昔からこういう性格だから、どうやら死ぬ間際までこうだったようだけど。僕もこの子は伝聞でしか最期を聞いてないしな。

 というか、この子は最後だったのだから、他の魔人達も伝聞でしかない。真相を知っているのは魔女だけ。そう思うと、本当にこんな子供にも容赦しない女だよ、彼女は。


「なに言ってんだよ?こいつがヤマトを起こしに行くべきだ」

「……お前は、俺をどれだけ苦労させたいんだ?」

「だってそうだろ?ヤマトの家族なんだから。ヤマトもその方が喜ぶ」


 喧嘩腰でフェデルタと睨み合いしながら、僕に人差し指を向ける雑賀さん。実は少しだけ……嬉しかったりする。

 そうか、僕は他人から見てもヤマトの……ゲンジロウの曾孫と家族の関係を築けていると見えていたのか。僕は、彼の家族と思われてもいいのか。

 ああ、僕はやっと本当に欲しかった物が手に入った。ゲンジロウ、君のおかげだ。君がいたから僕は────家族を持てた。


「……そうですね。僕も、ヤマトを起こしに行きたいです」

「ナレッジ様!?」

「よっし、決定!ほら、ささっと俺とそいつ抱えて走れよ!」

「……はぁ」


 フェデルタが心底嫌そうに大きな溜息をついた。溜息の付き方も、昔と変わらない。けど回数は増えているようだ。

 雑賀さんを小脇に、僕は片腕で持ち上げながらフェデルタが走り出す。扱いの差に雑賀さんが文句を零しているが、完全に無視している。

 僕にはもう心残りはない。だからフェデルタ、君には心から謝ろう。僕は君の優しさを無視する。ゲンジロウの大切な家族のために。


 僕は魔法を使う契約を破る

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