EPⅠ×Ⅸ【紅茶の時間《tea×time》】
馬車の運行を制限する警官と
しかし労働する者
今も新聞紙の
「全く、最高位魔導士様様だぜ! これで今夜は
「いいや女神様も忘れんなって! 丁度ここ
ユーナが見ているのは緑鉛玉の富豪の
大人気
「なーにが、女神様に最高位魔導士だ! ウチの硝子を
「これこれ
大声を出して腰を痛めた夫に対し、
少しダムズ川から
いつも
早朝には散水車が
オーダーリー・ボーイという馬糞を拾って箒で掃く少年達も活動
新聞を移動
職斡旋を
若手の社員にはいまだ現地の言葉に不慣れな者が多いらしく、友好の意味も
「故郷に帰る……いや、
感動する浮浪者を横目にユーナは
さらに援助を自ら申し出た紳士としての顔と貴族としての責任を保つ。なによりザキル団と関わった件をなかったことにと、必死になっているようだ。
新聞を
警官達は交通整理に蒸気灯が損失された
そのためコージも負傷の身ながら指揮系統の一部に
パードリー・クラッカーが
警察に確保されたザキル団は経歴を調べ、軽い罪の者はカンド帝国に強制
おそらく
目が潰れてはこれまでのような悪行も無理であろう。そして
あくまで黄金
黄金龍は人すら殺せない。そういう意味では最弱の存在でもある。しかし相手が精神体でも物理体であっても、光の
そして黄金龍がメルを
しかし前述した通り黄金龍は殺す力を持っていない。なのでメルは
なので破片だけでも自分の作品を
さすがのマグナスも黄金龍の『
仕方ないのでユーナはあることを
細長い塔の内部、その最も高い位置には船の
工房にも
「ユーナ、一週間ぶり! 筋肉痛はもういいのか?」
「それはお忘れになってジタン。あんな
ジタンの明るい様子に
女神が大暴れした翌日から筋肉痛でひたすら痛いと
「
「おほほほ、
二週間前、ジタンは女神の手で下半身を潰された。それを
かなり
代わりに
しかしジタンの疑問はすぐには
「あ、ユーナちゃんだ。おはよう。それともこんにちは?」
簡単に説明すると、絶命する一歩手前でジタンの生命時間が止まるように
しかしトキナガ
おかげで目の前のジタンは赤茶の作業着や白シャツなど、
ユーナはトキナガに向き直り、深々と溜め息をつく。どうにもこうにも神様は
「こんにちは、トキナガさん。マグナスさんとサハラさんは
「マグナスは発明受注が多くて喜んでるけど、たまに
「フーマオさんも会計処理として臨時
「そうだよー。あとね、おばさんと名乗る人物から、ジタンとメルの学費
そう言ってトキナガは
ジタンは
さすが二つ名に富豪がつくだけはあると思いつつ、マグナスが認める若い才能を今の内に確保しようという
「
「そうですわね。師範学校はコージさんが通ってたらしいですわ。そしてアルトさんは私立予備小学校から
「へー。でもコージの方がまともそうだし、俺ラテン語は興味ないな」
霊薬を使うために大量の魔力を消費して二日間は筋肉痛だったアルトの人望の低さが
クイーンズエイジ1870に労働者階級にも初等教育を受けさせる教育法が成立していたが、これは
クロリック天主聖教会がそれまで教育を
今はまだ義務教育無償化は遠い話であり、労働者階級のために作られた
メルはもう少し成長してから基礎学校に通学、ジタンは師範学校に通いながらマグナスの教えを受けて発明品を制作するとのこと。
「メルが通学可能になるまで、サハラが
「……
「うん。よくわからないけど……こだわるポイントだって」
確かサハラもアルト並みのエリートコースを進んだ良家の出なのだが、相変わらず変なこだわりがあるのにユーナは納得する。
どちらにせよ、サハラの授業ならば下手な者より格段に成績が
そんな中、地下から
「ユーナ、
「全員元気ですわよ。ただハトリさんとチドリさんが弟がいなくなったみたいで
「……でも俺、なにも返せない……
「じゃあ出世しなさい。胸を張れる大人になって、元気な姿で新聞の一面に
それでも額を
「……ありがとう、ユーナ」
ユーナは
「
「う……うん。俺、頑張るよ……でも、もうユーナには助けを求めない!」
「あらー? そんなこと強がりでいいのかしら? わたくしは
「だからだよ! 嫌と言っても助けるなら、もう言わない! ユーナが助ける必要がないくらい、立派な大人になってやる!」
頬を
「だからユーナが
しかし続きの言葉にユーナの笑顔が固まる。工房で無心に発明品や受注品を作っていた制作ギルド【唐獅子】のメンバーも
今にも暴れ出しそうな黒い杖刀を手で押さえながら、ユーナの口元が引くついた。螺旋階段の一番下にいたトキナガは腹を抱えて笑い出し、マグナスは
からかわれたと思ったジタンは怒り続けるが、ユーナは深々と息を
「あの……わたくし、こう見えて百
「え!? ババアじゃん!!」
失言を口に出したジタンは頭上に重い
そして始まるユーナの弁明という名の言い訳。子供に気を
ジタンはジタンで涙目のまま、子供だけれどすぐに大人になると反論。最終的にジタンがユーナよりも
「はぁ、はぁ……それじゃあ
「ユーナより大人しくて
「出世と合わせて長い人生の楽しみとさせていただきますわ!! それではごきげんよう!」
「ユーナ!! あのさ……俺、ユーナのこと他人に話す時どう言えばいいの!?」
細長い渡り板を歩いていくユーナに声をかけたジタン。相手はただの少女ではない。だからこそ迷ってしまう。
人生を変えてくれた恩人か、助けてくれた
「
そう言いながらポケットに入れていたチケットを赤
友人。
赤と緑の
「クリスマスの……
想像でしか味わったことがない、夢に見ていた食べ物。いつか妹のメルに食べさせたいと、願うしかできなかった特別。
チケットの
涙を
「
「サハラ氏!? ちょっと受注品多くて嬉しいけど、死にそう!」
いつの間にか現れたやつれ顔のサハラが泣いているジタンの頭の上に腕を乗せる。手には濃いコーヒーが入ったカップ。
そして階段を動く
「仕方ないだろう? 女神の一件で
「ぐずっ……ん? そういえばサハラはユーナが最高位魔導士とわかってたの?」
「当たり前だろう。けどあの子が広めたくない、そう言われたくない、と嫌がるから知らない振りに付き合ってあげているのさ」
しかし本人が名前を放置するというならば、商売や取り引きの点では活用するしかない。マグナスは涙目で「その名前が出れば必ずユーナ氏が関わるじゃん」と
自信作が宣言通り灰も残されなかった心痛は工房を持つギルドメンバーは察することはできるが、サハラやトキナガは仕方ないと苦笑いするだけだ。
「さ、きびきび働こうじゃないか! 泣いている
「うう……ジタン氏、死ぬ気で頑張ってね」
「は、はい……」
コーヒーのように
しかしその働きぶりが逆に周囲を
ユーナは再度新聞を見ながら歩く。もう一度カロック・アームズの活躍を読みたかったからだ。そしてセント・キャリー・ドックへ続く道を進む。
かなり
それよりも手前、女神と破滅竜が相対した道路であり、パードリーが女神の血を使って
血が付いた縄を中心に四角形の
常に断続的な魔力供給が必要とされる結界
青と緑、色は
「ここから先は
「ああ。わたくしはこういう者ですわ」
新聞を畳みながらやる気のない様子のまま紫水晶で作られた竜のブローチを
卵が下位、魚が中位、鳥が上位。そして竜は最高位魔導士の形。受け取った緑色のローブの男は動揺し、魔導士の資格を落としそうになる。
「し、失礼いたしました!! まさか貴方が有名な……」
「そういう扱いが
「血が少しずつ縄全体に広がり、もう黒く
「貴方もパードリーと同じ
血に
シヴァが止めるほど暴れたカーリーならば、傷など負わない。細かく追求すると機械仕掛けの女神となっても、血を零したのは
賛歌を
「そして……破壊の女神でしか倒せない悪魔。それだけ強力な悪魔なのに、名前はない……それもそうでしょう。本来ならばその『
「ど、どういうことですか!? パードリーは確かに女神の血でシヴァの第三の目を得るために、あの血を求めたと……」
「あれも
言いながらユーナは綺麗に
異形であるが故の
だからこそ女神が暴れていた時、火蜥蜴と破滅竜を使って全て血を燃やし
コージが縄を回収しようとして
ユーナは手に握った杖刀で結界に
上位魔導士が使用していた伝播する鐘は
しかし新聞を預けられた男は安心していた。紫水晶宮の魔導士、その活躍は杖刀という武器を抜刀することにより破滅竜の魔力を得ての高火力戦。
法則を重視する青魔法の精密な操作と魔力を重視する赤魔法の素早さを
しかしユーナは刀を
「ちょっとぉ!? 貴方、さっきそれやばいものって説明しましたよね!? なんで抜刀しないんですか!?」
「疲れるんですの!! 二週間前もそれで醜態を晒したのに、これ以上わたくしの主義に反することはしたくないのです!!」
動きは
今は一番近くにいるユーナに
「早く破滅竜とか出して燃やしてくださいよ! その方が絶対速攻でかっこいいのに!」
「それも黄金龍に魔力
「……まさか貴方、実は
「
叫ぶように話しながらユーナは紐の片方の
すぐさまユーナは紐を手放すが、縄は動きを
しかし破滅竜の鱗で作られたため折れはしないが、
痛みで額に
腰も足も絡めとっては骨を砕こうと
ユーナは全魔力を左手に集め、現在使える最高の白魔法で杖刀を引っ張ると同時に、逆に縄を千切ろうとする。しかしゴムのように伸びた紐が、
「そんな!? 最高位魔導士でも……」
「
叫んだユーナの口元めがけて縄の先端が
全身が黒い縄で
「――はらはらとはらり、桜の花は
黒い縄が動きを止める。動き回っていた物体が少しずつ
ロンダニアの街に
数分後には右腕の調子を確かめるために
「……今のは?」
「魔力を別の形に変化させる魔法ですけど。相手の魔法に
事もなげに言うが、新聞紙を預かっていた男は知っている。相手の魔力や魔法に
血は少量ではあるが、濃い魔力で魔法もなしに
「もしもあれが正式な手順を
「
「わたくし
言いながら男から新聞を受け取り、カロック・アームズの記事面が無事か確かめるユーナ。命がけの戦闘後とは思えない姿である。
そして男に簡単な礼を
しかし男は慌てて追いかける。ユーナが魔導士の資格である紫水晶のブローチを忘れたからだ。受け取ったユーナも、記事に夢中になって
「では、さようなら。わたくしはこれから優雅な
アイリッシュ連合王国らしい別れの言葉を残し、ユーナは
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