EPⅠ×Ⅷ【紫水晶宮の魔導士《amethyst×palace×magica》】
黒い
機械仕掛けの
髪で隠された
その
しかし
男は
最初は緑
しかし
才能は
魔力は物質に宿る。肉体、大地、海、風、目に見えなくとも存在する全てに宿る。そこでパードリーは音の
伝播する鐘にしか出せない音域による
包囲された空間に法則文を書きだすことにより
しかし上流社会には多くの
自分の魔力を使わず、多数の他人を
儀式の成否は語られていない。しかし後にパードリーはとり
その
パードリーはなんとか金を工面しながら生贄による儀式を続行する。自分の魔力では『
せめて
次に調査したのは妻の存在である。多数神である場合、よく似た存在が近くにいるはず。そして見つけたのは破壊の女神、絶大なる力と
だがパードリーには金がなかった。生贄を集めるための人手も、なにもかも。しかし時の運は彼に味方した。
ザキル団。カンド
さらにマティウス・アソルダが魔導士の
ただのパードリー・クラッカーでは意味がない。だから彼は
誰もが信じた。上位魔導士としての実績が彼を本物のように見せていく。名前に宿る
資格を剥奪されていなければ、そんな理不尽な社会でなければ、自分こそが最高位魔導士になっていたのに。得体の知れない人物が最高位魔導士にいながら名を
そして今、パードリーは
制御はできない。制御役に選んだ少年は千切れてしまったし、それ以前に儀式が失敗している。しかし経験は得ていた。
額に第三の目を
パードリーは女神の血に宿る
世界に光をもたらすシヴァの第三の目。その後は世界でもなんでも壊れてしまえばいい。自分は『
シヴァの第三の目が成立した
犬の耳を
暗殺に使うような
機械仕掛けの腕を下から走り寄ったナギサが
「――送り犬、出番だ――」
ヤシロが空中で
黒い犬達は一
腕の
激しい
しかし横から巨大な蒸気灯を
女神は三つの目を動かして視線全てをナギサに向ける。
「あわわ……す、すいません、ヤシロさん!」
「い、今は大声を出さないでくれ……耳が……」
大声で
数多く存在する『
パードリーがカンド帝国の少女をカーリーの贄に選んだのは関連が強かったから。それと同じようにヤシロは自分を犬と
それだけではなく
しかし資格を持っているようには見えない。黒魔導士なのだろうとアタリを付けて、これ以上
「――針よ――」
幾千の針がヤシロとナギサの上に
「――はらはらとはらり――」
しかし針は白い花弁に姿を変えて
他人の魔法に
一体どういうことだとパードリーが目を丸くするが、
女神の足に刀は
「――ゆらゆらとゆらり――」
石畳の下、地面を砕きながら大口を開けた黒い
女神が初めて
ユーナは竜の歯間に杖刀が
それでもユーナの紫の瞳から戦意が消えることはない。一度刀を手放し、重力に任せて落ちていく。途中で竜の体に見合わぬ小さな手の上に着地する。
その靄は竜が
「
ユーナの一声と共に竜が
幾万の軍勢となって火蜥蜴は女神の体を
しかし
血に
ユーナは竜の手からそれを見下ろしていたが、気にも
「あと十分かしら。足が
火蜥蜴が
ユーナは視線を
「それよりも最悪なことは、ジタンとメルを助けられないという結末」
ユーナは巨大な質量を受けたせいで
カーリーを倒したとしてもメルが無事でないと意味はない。なにより額の魔方陣で女神と密接に
女神は笑いながら
苦しそうに
しかし女神の首飾りである骸骨から流れ出る血によって一進一退。ユーナを乗せている手も腕を掴もうと動き始めた。
ユーナはその手から飛び降りて石畳の上に着地する。黒い靄に姿を隠しながら、当たり前のように呟く。
「だから幼い
杖刀が石畳に
黄金
まるで王族を
破滅竜は首を絞めてくる女神の力に負けず、その巨大な顎で腕に噛みつく。そして一本、機械仕掛けの腕が壊れて地面へ落下していく。
落ちてきた機械を
そして油断していたパードリーの後ろから静かに迫っていたアルトが、その後頭部を盛大に
呆気なく倒れたパードリーの体を
「ユーナ……あいつは、一体なんなんだ?」
「ま、見てろって。姫さんの本気なんて
体がほぼ元通りに治ったジタンの問いに答えず、アルトは炎の中に
「――ひらひらとひらり、青い海と空が辿り着く果て、その城に住まう
始まる長い詠唱。鼓動すらも一部とするような
女神が笑うのを止めた。破滅竜の胴体を掴んでいた方の
まずは
城門と
「紫水晶の
門を中心に紫水晶が広がっていく、
その紫水晶には花畑で飛ぶように黄金の蝶が映る。しかしユーナの周囲、炎の中に蝶はいない。紫水晶の内部を埋め尽くすように黄金の蝶は増えていく。
同時に火の粉を散らすほど激しい風が広がっていく。ユーナは両足を広げ、風で吹き飛ばされないように杖刀で石畳を突き刺す。
破滅竜に組みつかれた女神は空中で四本の曲刀を出現させ、ユーナに向けて四方から
しかし飛んできた曲刀を火蜥蜴達が飛び上がって群がり、刃を溶かしていく。熱された鋼鉄から蒸気が立ち上っていき、姿を保てなくなる。
「
石畳に突き刺さった杖刀から激しい鼓動のように地面が震える。脈打つような震えは
震動に合わせて割れた石畳の
そして
「夜を越える願いを捧げよう!! 存分に受け取るがいい、
女神がとうとう
邪魔する火蜥蜴達は骸骨から流される血によって消えていく。血の道が広がると同時に炎は散っていき、三本の腕全てがユーナへと
そこへ少し
それでも女神は腕を伸ばすが、起き上がった破滅竜がユーナに向かってまっすぐと
砕けた機械の腕が地上に降り注ぎ、火蜥蜴達は我先にと燃やしていく。新たな餌に火蜥蜴達は吐き出す
紫水晶の反射する奥。黄金の蝶で作られた一本道の上に緑色の
その光は迷うことなく進んでいく。滝を
「白き蒸気よ、煙るがいい! 彼の者の輝きは一切
ユーナの周囲だけでなく紫水晶の城すら隠すほど霧が濃くなっていく。そして切り取ったように上空の星空だけ丸く浮かび上がっている。
女神は紫水晶の中を動いていく光と一瞬目が合った。女神とは
城門を閉ざす鎖が本格的に暴れ始める。内側から迫る
一本道が少しずつ
ユーナの全身は
最後の力を
「黄金龍は止まらない!!――」
弾け飛ぶ鎖。開かれる城門。世界を覆いつくさんと広がっていた霧が
細く小さな手は紫水晶の城を支えにし、
それは破滅竜とはまた違う、龍。その
女神は立ち上がる。腕を全て失くしたが、足は既に九割完成していた。足りないのは指だけだが、地面を
ゆったりとした様子で
「ああ、お気をつけあそばせ……
とうとう膝を折って地面に倒れそうになるユーナが、女神を見上げながら
「黄金龍は一瞬ですから」
その言葉が終わる前に、女神の巨大な体の半分が消失した。訳もわからないまま下半身を失った女神の上体が
しかし三つの目、特に額の第三の目は全てを捉えていた。雄大でどこまでも続く川のように、時には曲がり、時には直線的に、女神の体を
賛歌を続けていた
残った顔全てを洗い流しながら、内部で
杖刀を支えにしても立ち上がれないユーナの後ろで、黄金龍が泳ぐように門の中へと去っていく。同時に
残ったのは割れ砕けた石畳などの破壊された
「あ、あの
黄金龍が呑み込んだ後、散らばる鱗が集まった先でメルは姿を現した。額の魔方陣は洗ったように消えていて、
ジタンはチドリのスーツを腰に巻いているが、潰された下半身は再生され、慣れていない赤子のような歩き方ながら地面へと降りてメルへ近づく。
「メル……良かったぁ……」
「さすがは
妹を抱えて泣き出すジタンの頭を
「――納刀――」
呟くと同時に
アルトとコージに引きずられるように連れてこられるパードリーは
「な、なんなんだ? 女神だぞ? しかも破壊の
「それではもう一度
「わたくしは人助けギルド【流星の旗】の一員にして、紫水晶宮の魔導士ユーナ・ヴィオレッドですわ」
パードリーだけでなくジタンの思考も止まった。おそらく今回の件で一番の問題であり、最悪の存在で、
それを否定する力を二人は持っていない。確かにその目で見てしまったのだ、
ヤシロとナギサにそれぞれ
「……え?」
「本当は名乗るの
「…………え?」
「でもそろそろ誤解を解かないと
壊れた
しかもパードリーはその名を借りて悪行
ジタンも同様に驚いていた。紫水晶宮の魔導士という名前で、男か女もわからなかったが、マグナス並みの外見
「それにしてもまさか破滅竜の杖刀を抜刀するところまで行くとは思いませんでしたわ」
「……そういえば、なんで、その……え? 破滅竜って、そこの?」
「ええ。この杖刀は黒い部分は鱗、白い刀身は牙、
ジタンは指差した先にある黒の
最初に感じた
そして改めてユーナの杖刀を見る。黒い柄に鞘、白い刀身。見比べれば確かに破滅竜の鱗と牙と同じ色であり、材質も似ていた。
「納刀している時は魔力を吸われ続けるのですが、抜刀すれば逆に破滅竜の魔力をわたくしが使えますの。そういう
「……え、ええ、えええ……」
「で、破滅竜とわたくしの魔力を
「
説明の半分もわからなかったが、女神カーリーをあっという間に倒す存在である龍。ジタンは
「さて……と。そろそろ説明も
ユーナが振り返った先で、女神の血で溶けた
「ユーナ、どうする!? あいつ、あのままじゃ……」
「
生まれた火蜥蜴は砕けた石畳の上を焼け
「もう今日は疲れましたから、
「い、いいの?」
「もちろん。さ、ジュオンさんも経過観察のため、きびきび歩く!」
「本当、お前達に関わると厄介ばかりだぁ……」
霧の中に消えていく破滅竜を他所に進み出したユーナ。ジタンはメルを抱え、転びそうになったらチドリやアルトのフォローで留まる。
ジュオンは足を動かす最中に見える街の
ハトリとナギサはユーナの
「うう……残業確定だ」
ただ一人、全裸のパードリーを確保して署に連行しなくてはいけないコージは、帰っていくギルドメンバーを見送ったのであった。
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