第2話

         二



中央ピンスポ

茫然と立つみのり

質素なブラウス、スカ一卜姿

上着はなし

やせてやつれて目ばかりギラギラしている感じ


 有罪?

 有罪?

 わたしが?

 どうして?

 できる限りやったのよ?

 命まで差し出した。

 それでも駄目?

 どうして?


 私は内定も蹴った。

 自分の疲れを置いて人を思いやった。

 被災者もボランティア仲間も。

 なのにどうして私が有罪?


(長い間)


 カヌンガ。

 劣悪な環境の中での毎日の井戸掘り。

 現地スタッフは笑ったり休んだり。

 日本から来てる人たちもそう。

 一刻も早くきれいな水をあげたいのに、何かと休憩休憩。

 みんな待ってるのよ!

 休んでなんかいられなかった。


 アドビ。

 現地の七才の女の子。

 井戸はいいから遊んで遊んでって。

 私は井戸をつくりに来てるのよ!

 いちど手を振り払ってしまった。

 あれからアドビは寄ってこなくなり、少し離れてはにかんだ笑いをうかべるようになった。


 私のせいじゃない

 私のせいじゃ!


 私はやることやってる。


 やってる。






 夜も寝ないで掘った。

 岩が堅くて掘り進めない。

 器材が止まるほど大岩小岩がごろごろして。

 マラリア蚊も多くて、虫よけの効果もほとんどなくて。

 だんだん現地が嫌いに…


 嫌いに…



 嫌悪感押し殺して

 私…

 テリヴェでいようとした…


 山羊のミルク嫌い。

 とうもろこしパンも嫌い。

 包み蒸し焼きも!

 お寿司食べたい!

 ステーキ食べたい!

 炭酸飲料飲みたい!

 きれいな水のシャワー!!

 わがままが後から後から噴き出して。

 それをテリヴェの仮面で押し隠して…

 心二つなのだもの。

 ストレスたまるの当たり前。

 気がついたら。


 (咳込む)


 (激しく咳き込む)


 変な咳の風邪に…





 それで私死んだの?


 ゼーゼーして


 器材に寄りかかったまま



 倒れた…




(ものすごく長い間)


(ややあって顔を上げる)



 もう少し


 やりようがあったんじゃなかろうか。

 アドビには後でねって言えばよかったし、これキライも小出しに言えばよかったし、疲れたなら寝ればよかったのよ。

 それもしないで根つめて、自分だけ悲劇のヒロインして…

 私が器材に寄りかかったまま死んだせいで、作業はその分遅れたろう。

 その分水なくて困る人が…!


 あああああ!



 私…有罪だ…





 私が…

 作業を…

 妨げてた…



(暗転)



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