テリヴェ

めるえむ2018

第1話

        MさんとMさんへ

         心からの感謝と友情を込めて



         一


中央ピンスポ

浮かび上がる女検事

きりっとした雰囲気

後ろにまとめた髪

内に秘めた女らしさを職業人としてのプライドが覆い尽くし、りんとして美しい

被告席と一目でわかる上手側の柵と、そこにいると思われる下手側の閻魔


(あなたの視線で両者を感じさせてください)


りんとした表情で話し始める


 今ご紹介に預かりました検事の小松崎まいです。

 被告・箕田みのりの罪業(ざいごう)を周知し、なぜ彼女がいまここで裁かれねばならない羽目にいたったかを説明して参りたいと存じます。


水を一口飲む


 箕田みのり。

 31歳。

 岐阜県高山市出身。

 中学高校大学とジャパンレッドクロスに参加しつつ、全国各地の赤十字活動に参加。

 三年前の東日本震災の際には、既に内定していた会社を辞退して、避難所の方々のケアをしました。

 きめの細かい配慮と天性のやさしさで、たくさんの被災者の方に感謝されたのです。


 そこまでは順調でした。

 彼女は人助けを自らの生涯の使命と決め、それからもさまざまの災害現場に出かけて行きました

 人を助け、思い出の品を拾い集め、小さなこどもを笑わせ続けました

 ボランティア仲間を励ますのも彼女でした。

 もうこれ以上ダメってなった人も彼女と話して気持ちを建て直したりする場合が多く、彼女はいつしか災害地の女神というニックネームで呼ばれるようになりました。


 災害支援の現場で、有用な人という噂がひとり歩きするようになった6年目の夏、彼女はとあるNPOにスカウトされたのです。

 事務仕事を二年、そして三年目、現場のたっての要請で、カヌンガに派遣されました。

 マラリアが蔓延している中での、毎日の井戸堀り。

 やさしい彼女には子供たちがむらがります。

 テリヴェ。

 向こうの言葉で女神様。

 彼女はテリヴェであろうとし眠りも削って現地の人に尽くし、22日目に倒れました。

 マラリアではなく、現地特有の風邪でした。

 疲れてなければ命を落とすことなどない、軽い病。

 なのに命を落としたのは、勝手に疲労をためこんだからです。

 箕田みのり。

 あなたは有罪です。



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