禁酒法の街に響く賛美歌 04
さて、前回のおさらいをしよう。
治安の悪いスラム街の裏路地に、銃声という賛美歌と共に赤い雨が降り注いだ。
たったそれだけだ。
アルの下宿にたどり着いたシスターズ御一行だが。
「鍵なんて、ないよな。」
「簡単なのなら開けられますよぉ。」
「マスターキーならここに。」ジャコッ
「いや普通に借りようぜ。」
今まさに大家の部屋にノックしようとしたその時だった。
「やっと見つけましたよ!!」
背後から声が響く。
「誰だ?」
「知らないですねえ。」
「同じくぅ。」
「ルーナ・ミストアイルズと申します。今日からケネス・ヒース探偵事務所にお世話になります!」
「あ、知ってた。そういえば今日来るって書いてあった。」
「よくここまでたどり着けたな?」
「ええ、大体の地域は所長から。あとは、そのぉ…銃声を頼りに…。」
「ですよねぇー。お二人共あんな派手にぶっ放すからぁ。」
「ところで、先ほどそこの角で瀕死の浮浪者とすれ違ったんですけど…。」
「……。」
約1名、血でベットベトのローブを纏う者に、元軍医の探偵は目ざとく気付く。
「その傷は…。ちょっと見せてもらえますか…?」
「……。」
テミスは何も言わない。
「…失礼します。……これは、出血量と傷の範囲、なんで気絶してないんですか???」
「……。」
「っ…。さすがにこれは、まずいですね。応急ですが縫合処置します。すこし痛いでしょうけど、我慢して。」
テミスは黙って処置されている。
触れるルーナの手に驚いた用に体を震わせるも、それだけだった。
縫合中は、静かに、静か過ぎるほどに。
「(こんな小さな子が、声ひとつ上げないなんて…。)」
処置はおわる。
テミスはするするとローブとケープを羽織る。
「はい、これで終わりです。皮膚がつながるまであまり無理はせぬように、ってきっと無駄でしょうけど。」
「察しがいいな。」
「ええ。ローブの中身、弾薬だらけに四次元武器庫でしたから。」
「ほう、どんな感じで収まってた?」
「言葉ではとても言い表せません…。」
「だろうなぁ…。」
さてそんなこんなで。
「そろそろ突入と行こうか。」
いざ意気揚々と大家の部屋に突入しようとしたリックを後ろからつつく指。
その主はメイ。その手には2つの鍵が光っていた。
「…その鍵、どうした?」
「借りてきた。」
「盗ってきたの間違いではなくてか?」
「おじゃましまーすって(心の中で)言ったけど誰も出なかったから、ちょちょっと。」
「うーーーーん…。百歩譲ってまぁいいか。」
「わーい。」
「だが、その手の中の粘土はおいていけ。」
「なんでわかったんですかぁ?」
事実、その手の中には鍵の型を取った粘土が握られていた。
「おまえの考えそうなことだ。なんとなくわかる。」
「私の考えが分かるってことは、あなたも結構な悪党ですよねぇ。」
「(無視しつつ)とにかく、目の前で不法侵入の助長はできん。」
「汚職警官のくせに硬いんですからぁ。」
「だからうまいことやるんだよ。で、なんで2つあるんだ?」
「両方アル・カセッティの名義ですよぉ。2部屋借りてたみたいで。」
「大方、オフィスと私室を分けていたのでは?」
「公私混同は罪です。私事を投げ打ってでも神に使えるべきというものです。」
処置が終わり、道具を片付けた二人が混ざる。
「おまたせしました。では行きましょうか。人数もいますし、二手に別れましょう。」
「では俺と記者がオフィスの方へいこう。シスターと探偵は私室を頼みたい。」
「りょうかーい」
「御心のままに。」
「わかりました。」
一行は部屋へと向かった。
まずはオフィスから描写していこう。
「わー、ほんとオフィスって感じですねぇ。」
「職場だからな。ある程度は整理するだろ。隣はわからんがな。」
整理整頓の行き届いたオフィス。
ファイルキャビネットに書類机と、特に不思議なものは見当たらない。
片っ端から家探しをしていた二人だが、引き出しの一つが鍵が掛かっていることに気が付く。
「<鍵開け>、試してみましょうかぁ?」
スキルを振るわんとするメイだが、流石に多芸の彼女にもタネと仕掛けはあるもので。
「…ダメですねえ。道具がほしいところです。」
「後回しでいいかこの辺は。あいつらと一緒に開けるとしよう。」
「いいですよぉ。何が出るかわかりませんし。怖いものはみんなで見ましょー。」
意気揚々とガサ入れを続ける2人であった。
ONE WAY 赤い月の魔王 @ChaLL
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