第30話

(もし君の友達が殺されたらどう思う?)


憎い


(もし君の家族が殺されたらどう思う?)


憎い


(もし君の恋人が殺されたらどう思う?)


憎いに決まっている。


(じゃあ、もしそのみんなを殺した人が目の前に現れたらどうする)


絶対に許さない


(僕たちも許せなかった)


自分がやってしまったことがどれほどの事か分からせてやる


(そうだ。向こうが先にやったんだからどんなことをやられても仕方ないんだよ)




(だから、君のその苦しみに悶える表情をもっと良く見せておくれ)


そう少年の姿をしたモノは目の前の後に英雄と呼ばれる男へそう語りかける。



☆☆☆


朝の教室内

ソニア先生が教壇に立ち一枚の紙を持っている。

その先生の姿を見ている生徒は皆一様にそわそわしている。


「ではでは、来たる一週間後。クラス対抗戦のメンバーを紹介するよー!」


そう、今日は一週間後に控えているクラス対抗戦のメンバーを発表する日なのだ。当然選ばれるとすれば学校からも認められているとなり自信もつくだろう。

ただ、まぁ。俺は選ばれないんだろうけどね。



「メンバー構成は剣士3人に魔法使い2人です。まず1人目はミアちゃん!」



「はい!」


「ミアちゃんは各先生からの評価も良いし即決だね!本番でも期待してるよ!続いて続いてー」


その後も残った4人を順番に発表していく。

その中には予想通り俺の名前が入っていなかった。それどころか


「じゃあ、朝の挨拶は終わり!それとジーク君は少し来てもらえるかな」


などと呼び出しを受けてしまった。


...


「この学校はどう?」


「え?急ですね。まぁ楽しいですけど」


「そ、ならいいんだけど。んー、やっぱり誤魔化さずにいくか。ねぇジーク君はなんで全力を出さないの?今までの実技の授業、どれも適当に流している感じだったし」


と、直球に聞いてきた。

まぁ、そりゃ不思議に思うよね。やれるのにやらないなんて、じゃあなんでこの学校に来たんだって言われてもおかしくないと思う。


「言えない?」


「言えないっていうよりは、、、喋りたくないっていうのが正直なところです」


喋るとなると嫌でもあの日のことを思い出してしまう。


「そ、ならしょうがないかな。まぁどんな理由があろうとも、もしこの学園に属するに至らないと判断されたらすぐに退学だからそこはしっかり覚えておいてね」


そう言い残し去っていった。


「はぁ、、、」


退学、かぁ。

正直試験の後から少しずつ考えていた。

このまま学園に通ってそれからどうするのかと。目標もないままこの学園に通い、卒業してその後どうするのか、、、


「お悩み事かい?」


「...またあなたですか」


気づいたら目の前にいたのはこの間突然現れ去って行った少年のような姿をしている精霊。


「うん、君が助けを求めている気がしてね。

被加護者には優しく手を差し伸べてあげるのが今の僕のモットーなのさ」


「そうですか。貴方には特に話すことは無いので帰ってもらって大丈夫ですよ。それにここは学園です。今は周りにいませんけどいつ人が来るかわかりませんよ?」


「おいおい、この間より態度が冷たくないかい?それと僕の姿は被加護者にしか見えない様になってるのさ。それにしても本当に僕に冷たすぎないかい?怒っちゃうよ?精霊は怒ると怖いぜ?」


「はぁ、そうですか、、、」


「なんだいその適当な返事は。あーあ、怒っちゃったよ。僕をここまで怒らせたのは君が初めてだよ。少しだけお仕置きが必要みたいだね」


そういうと手のひらを僕の目の前にかざし魔力を込めているのが感じられた。


「じゃあ、いっくよー!これから見せるのはノンフィクションです、うっかり狂っちゃわないようご注意くださいねー!」


その瞬間俺の頭に流れて来たのは膨大な精霊の記憶だった。



______その頃



「ヴァルク、少し話がある」


少年リアルはヴァルクの研究室へと訪れていた。


「えーっと、君は確かリオル君だったかな?

いきなり入ってきて名乗りもせずに先生を呼び捨てにするなんて、少し礼儀を身につけないとね」


「そんなことはいい。単刀直入に言うと俺は未来から来た」


「___続けたまえ」


「お前に俺が未来で見たことについての話をしたい。主に精霊のことだ」


「ほう、それで僕が素直に信じるとでも?未来から来たなんていう馬鹿馬鹿しい話を?」


「お前らの事情も知っている。なぜ精霊を恨むのか。そしてその理由である彼女の事も。

800年前に彼女がなぜ人間と戦ったのかもな」


「なるほどな、どうやって君が未来から来たのかは分からないけどとりあえず話を聞く価値はありそうだね。入ってくれ」


「信じてくれてありがとよ」


こうして2人は真っ暗な研究室へと姿を消していった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る