第22話
「今までほんとにありがとうございました、おばさん」
試験から3日たち今日が入学式。
宿も今日限りとなったためおばさんにお礼を言っていた。
「あらあら、お礼なんていいのよジーク君。
私としても時々リルの遊び相手になってくれたのはありがたかったし」
そう言いながら隣に立っているリルの頭を撫でているおばさん。
撫でられているリル本人は今にも泣きそうになっていた。
「ほら、リルもジーク君に言いたいことあるんでしょ?」
「ーーうん、、、あのねお兄ちゃん」
そう言いながら一歩踏み出して抱きついてくる。
「今日まで遊んでくれてありがとなの。リルね、すっごく楽しかったの。
だからね、お兄ちゃん。また来て欲しいなの」
「うん、もちろんだよリルちゃん」
そう言い頭を撫でてあげるとぱあっと笑顔になる。
「ありがとうお兄ちゃん!大好きなの!」
「よかったわねリル。それじゃジーク君私たちは仕事に行くわね。キツいこともあると思うけど諦めずに頑張ってね」
「はい、本当にありがとうございました」
最後にもう一度お礼をして宿を発つ。
その旅立つ背中を笑顔で見守るマナとリルであった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おおぅ、試験当日とは比べものにならないとは言えやっぱり人は多いなぁ」
入学式当日
式の会場である講堂への道のりはまさに人混みだった。入学式と比べるとたしかに入学生は半分以上減っていたが、今日は自分の子供の大切な日でもあるためほとんどの入学生には保護者が同伴していた。
親との楽しそうな会話。
その光景にやはり懐かしさや寂しさを感じてしまう。
「お母さん、元気かな、、、」
今も村で過ごしているであろう母。
その母の様子も気になり少しだけ感慨に浸る。
トン
すると少し歩くのが早くなってしまっていたのだろうか、前の人の肩にぶつかってしまった。
「あ、すいま、、、」
咄嗟に謝ろうと思いぶつかった相手を見る。
その途端に俺は言葉を失ってしまった。
黒髪黒目の女の子でその見た目は今まで見たことにないほどに可愛らしく、周りがキラキラしているようにさえ錯覚しs
「あの、あまりジロジロ見ないでもらえる?」
「あ、ごめんなさい」
一瞬だった。
少女があの発言をすると同時に俺もなんか謝ってた。
「まったく、入学初日からぶつかられて、さらにジロジロ見られてなんて日なのよ」
そう言いながら名も知らない少女は去っていった。
せめてもう少しだけ解説させてほしかったがそれよりも、だ。
どうしよう、俺入学初日にして同級生をじっくりと舐め回すように見た変態野郎っていう汚名かぶっちゃうのかな。あまり学園で目立ちたくなかったんだけどな、、、あの子言いふらさないでくれるかな、、、
まぁ、信じるしかないだろう。
そう願いながら講堂へと向かう。辺りからはだいぶ人が減っており皆着々と会場へと入場しているのだろう。
そんな中1人見覚えのある人物がいた。
金髪ドリルの少女、リーアである。その側にはまたまた金髪ドリルな女性と、兄だろうか?リーアよりは20cmほど身長の高い金髪イケメンがリーアと談笑していた。
そんな楽しそうな様子を見ているとリーアが俺がいることに気がついたのか顔だけチラッと何度か振り向いていた。
側にいるイケメンはそんなリーアの様子を不思議に思い後ろを見るが当然イケメンにとってはなにもおかしな事はない。
流石にこのままだと周りの人も不審に思うだろうと思い次に振り向いたタイミングで一礼をして早足で講堂へと入っていった。
入り口では式の手続きをしていたため、俺も列に並ぶ。受付の動きはテキパキとしていたために長い列ではあったが早々に俺の番がやってきた。
「本日は式へのご参加ありがとうございます。それでは入学試験時の番号を教えていただけますでしょうか?」
「はい、えっと151番です」
「151番ですね、少々お待ちください」
そう言いながら手元にあるノートをパラパラとめくり確認をしている。そしてあるページで手が止まると途端に受付の人は驚いたような顔をした。
「こんな子があのルート教官に、、、」
小声でなにかを呟いているようだったがギリギリ聞こえない距離だった。
そんな受付の様子に不思議に思っていると我に帰ったのか
「す、すいません、合格が確認できました。それでは会場に番号が書かれている椅子があるためそこに座って式が始まるのをお待ちください」
そう言い椅子の配置が書かれた紙を渡された。
「ありがとうございます」
そうお礼だけ言って紙をもとに自分の座るべき椅子へと向かう。
すでに半数以上の入学生は椅子に座っており、またこの後も続々と生徒と保護者が入ってきているようだった。
ただただぼーっとしながら式が始まるのを待っていた。
その間に何事もなく式は無事に始まるのだった。
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