第21話
「え、見るからに先生まだまだ余裕ですよね、なんで?」
そう、確かに俺の作戦通りにいってダメージを負わすことができた。しかしそれでも倒すには至らず、むしろまだ戦う余力は有り余っているようだった
俺の言葉を聞くとルート先生は苦笑をしながら
「あのな?俺一応教師だぞ?お前みたいな幼い子供とどちらかが倒れるまで勝負なんてやってられるかってんだ」
「あ、はい」
まぁこんな強面の教師が受験生を痛めつけてるっていうのは世間体的にも悪いよな。
「それに、もともと今回の決闘は俺にまともな攻撃を当てたら合格ってことにしてたんだ。まぁ、まさかこんなに魔法に優れてるとは思わなかったが。
それにしてもなぜそれを試験で使わなかった?」
まぁ、それ聞くよね、、、
「えっと、ですね、、、先日色々ありまして大勢の前で魔法を使うのが難しいみたいです」
全部が本当というわけではないが間違ってはいないためとりあえずそう言っておく。
「まぁ深くは聞くまい、それよりも、だ。俺は決闘で負けてしまったのだ。合格おめでとう、ジーク」
そう言いながら手を差し出してくる。
そっか、決闘に勝ったら合格だったんだ。
差し出された手を俺も強く握り返しそして
「いってぇぇ!」
大きな悲鳴が俺の口から飛び出た。
忘れていた左肩の傷。戦いの最中はアドレナリンがバンバンでて気にならなかったが今は強烈な痛みが走る。
「えっと、、よろしくお願いします」
「ああ、これからよろしく頼む。その傷は我が校の保険医に直してもらおう。少し待ってなさい、呼んでくるから」
よかった、、、これで寮生活は確保できた。
お父さん、俺頑張るからしっかり見守っててね、、、、
そんな少年の様子を決闘場の入り口から見ている一つの影があった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「この宿とももうすぐお別れだなぁ」
王都にきてから一週間お世話になった宿、その一室を借りていた。
お金の都合もあり立派な宿という訳ではないが、経営しているおばさんはとても人当たりがよく、子供1人である俺にもとても優しく接してくれた。
ずっとここに泊まりたい気持ちもあるがそれこそお金が無くなるし、寮に引っ越すため諦めなければならない。
「ここにいれるのもあと三日か、とりあえずおばさんには合格したって伝えとかないと」
そう思い一階へと降りる。
この宿[小鳥のヤドリギ]は一階は食堂で二、三階が宿泊部屋となっている。
ここの料理はかなり人気らしく今夜も席が一杯になりそう、というほどには客が、来ていた。
酒を飲んでいるおじさんや、美味しそうに料理を食べている親子やカップル様々な客層だ。
「おにーちゃーん!」
「うわっ、と」
客の様子を伺っていると後ろから突然抱きつかれた。
「リルちゃん、昨日も言ったけど後ろから抱きつくのは少し危ないからやめてね?」
「はーい!」
わかってるのか、わかってないのか元気に返事をしながらカウンターの奥へ戻っていった。
抱きついてきたのはこの宿のおばさんの娘であるリルちゃんだ。まだ4歳でなぜか俺にひどく懐いていた。
俺一人っ子だったし、妹ができたみたいで嬉しいんだけど今の抱きついて、結局すぐに戻った様に何を考えてるのかはよくわからん。
「おばさんみっけ」
少し一階を歩いていると目的の人物を発見した。この宿の女将でもあり、食堂の料理長でもあるマナさん。子持ちとは思えないほどに若々しくおばさん目当てにこのお店に来る男性客もいるとか。
「おばさーん!」
呼んで見るとこちらを見て微笑みながら近づいてくる。
「あら、ジーク君じゃない。帰ってきてたのね、お帰りなさい」
「うん、ただいま」
席に着き料理の注文をしながら試験に合格したこと、三日後には宿を出ていくことを伝えた伝えた。
「あら、すごいじゃない。アイネス学園に合格できるなんて。私ジーク君ちっちゃいから難しいんじゃないかしらって思ってたのよ。それにしても3日後か、寂しくなるわね。リルも悲しんじゃうし、、、まぁ、時間があったらいつでも来てね。腕を振るって美味しい料理をたくさん作ってあげるから!」
「はい!ありがとう!おばさん」
その後は合格祝いということで美味しい料理を振舞って貰った。その料理はここ一週間の中でも特にご馳走だった。もちろん代金も高かった、、、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます