第20話

「では、ただいまよりルート教官と受験生ジーク君の決闘を開始していただきます。ルールは最終試験と同じく相手が戦闘不能、もしくは降参した場合勝利となります。また今回のみ武器は自分の持っているものを使用していただきます」


新しく現れた一人の女の先生が決闘の立会人となりルールの説明を始める。

その説明も終わり相手であるルート先生の様子を見る。腰にはレイピアが下げられており左手にはパリーイング・ダガーが握られていることから相手の攻撃を受け流してのカウンターがルート先生の戦闘スタイルなのだろう。迂闊に攻撃はせずにゆっくりと様子を見るべきだな。


「それでは、決闘を開始します。はじめ!」


合図がかかる、しかし俺もルート先生も動かない。お互いに相手の隙を伺う。相手の一挙一動全てに目をはり油断はしない。その状況も数秒後に終わりを迎える。先に動いたのはルート先生だ。レイピアを前に突き出し突進してくる。肩に届くかといったところで俺は右手に握る剣で弾く。


「いい反応だな」


そう言いながら突きをくりだしてくる。


「ありがとうござい、ます!」


その突きを剣で弾くも、余裕はない。それに対し教官は左手に握ったダガーは使わずなんとも余裕そうだ。カウンター型と思ったがとんでもない、バリバリの攻撃型だった。

その後も余裕な表情で攻撃を繰り返す先生に防戦一方の俺。そんな中一瞬先生の動きが鈍くなり隙ができる。


今だ!


そう思い相手の攻撃を弾き横一線に斬りかかる。

途端に先生の顔に笑みが浮かぶ。


「甘いな」


そう言い左手のダガーで受け止める。

そしてその瞬間には俺の左肩にレイピアの切っ先が刺さっていた。



「ぐっ、、!」


激しい攻防によりすっかりダガーの存在を忘れてしまっていた。

堪らず後ろに下がるが左肩に負わされた傷により俺の力では思うように剣は振れそうにない。


くそっ、どうする!このままじゃまた連撃を受けて終わりだ!どうにか打開しないと、、


「どうした?もう終わりか?」


こちらの様子を伺いながら声をかける。ここで攻めれば確実に勝てるとわかってはいるが俺の様子を見るために何もしないでいるのだろう。


「いえ、続けます!」


そうは言うものの手段が無い、ここから勝ちへと繋げるための手段が。

まだ躊躇っている、そんな俺の様子に大きなため息一つ。


「貴様、そろそろ真面目にやったらどうだ。なぜ魔法を使わない?遠慮をする必要はないんだぞ?」


「、、、っ」


そうだよな、勝つためにはやっぱり魔法が必要なんだ。魔法じゃないとこの先生にはまだ絶対に敵わない。このままやったってどうせ勝てないんだ。それでまた路頭に迷うくらいなら全力でやってやる。


「そうですね、、、このままうじうじしてたってしょうがない。全力でいかせて貰います」


そう宣言し体中の魔力を手のひらに集める。

その魔力をルート先生も感じとったのか


「ほう、面白い。よかろう、全力でこい!」


そう言い先生はダガーを直し今度は大きな盾を取り出した。レイピアには似合わない大きな盾との謎コンビだが関係ない。


ファイアージャグリング


そう小さく呟き周りに現れる何十もの火球。


「いきます!」


両手で指揮をするように一つ一つの火球を操る。その俺の魔法もまるで問題ないかのように盾で一つ一つ防いでいく先生。

一切被弾する様子がない。そんな先生の下へまた火球が飛んでいく。それをまた盾で防ぐ


よしっ

盾で防いだ途端に後ろからも火球が飛んできた。やった、そう確信するも右手に持っていたレイピアで火球を真っ二つに切り裂き、火球は消滅した。

それを見て唖然とする。

え?魔法って切れるの?反則すぎない?

そもそもお父さんならこれだけやったらもうやられてると思うんだけど、この先生強すぎない?

心の中で愚痴を漏らしながらも火球を操り次の手を考える。

このままじゃ決め手に欠ける、、、次の攻撃に全力を注ぐしかない。


「ウォーターボール!」


2mほどの大きな水球を放つ

流石にそんな大きさのものは盾で防ぐこともできないので横へと避ける。その避けた先にもまたウォーターボール、それを避けた先にもウォーターボール。


「どうした!時間稼ぎか?」


単調な攻撃に飽きてきたのか攻撃の構えを取る先生。しかしすでに準備は終わった。

先生の立っている場所を含め辺りは水浸しだ。これは確実によけられないはず!


「いえ、これからですよっ!サンダーボール!」


手を突き出し魔法を放つ。出した魔法は雷球

小さめにして速度を重視だ。

それは先程のウォーターボールによって水浸しになった地面へと着弾、その瞬間にあたり水の中を電流走る?


「ぬっ、これは、、、」


流石の先生もこれを食らって無事という事はなく片膝をついていた。

このまま一気に終わらせる!

先程から地面に放置していた剣を握り先生へと斬りかかろうとした瞬間、


「まいった、俺の負けだ」


その一言が先生の口から漏れた。


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