第16話
「次、、、31、32!」
1人の教師の男が記録表を片手に番号を叫ぶ。
すると大柄の少年とこれまたちっさな少年が教師の前へと歩いて行く。
「31番、ソルです」
「32番、ユーマです」
大柄の少年はソル、小柄な少年がユーマと言うらしい。
自分の番号と名前を伝えた2人の少年は教師へと一礼しお互いに向かいあう。
「では、決闘を始めてもらう。戦闘続行不可能、もしくは降参した場合その者の敗北となる。降参しても攻撃をやめない、また無いとは思うが相手を殺してしまった場合は即失格となるので十分注意するように。
それでは、、、はじめ!」
教師の合図と同時に大柄の男が相性を始める
「炎よ!我が望みに応え敵を討ち滅ぼせ。
ファイアーボール!」
そんな詠唱をしながら右腕を相手に向ける。
するとその手の平からは30cmほどのちっさな火球が飛び出る。
魔法を放たれたユーマはそれに驚き尻餅をつく。火球はそれて直撃はしなかったものの先程の火球を見てなのか降参してしまった。
そして当然と言ったように胸を張るソル。
そんな感じの試合を今のを含めて16試合見てきたんだけど思ったことはただ一つ。
レベル低ない?
だって今までの試合だいたい先にファイアーボール撃ってた人が勝ってたよ?もちろんかわしてからカウンターする人もいた。でもその人も結局撃つのはファイアーボールだよ?
なんなの?ファイアーボールのみなんて規則ないよね?
そーんな感じでぼーっと試合を観てるとようやく俺の番が来た。
「次、、、151、152!」
みんなと同様に教師の前に行き自分の番号と名前を言っていく。
「151番、ジークです」
「152番、レオだ!」
教師に1礼をして向かい合う。
見るからにやる気に満ちている。
「では、、、はじめ!」
途中から教師もめんどくさくなったのであろう、ルールの説明を省き合図のみとなってしまった。
とりあえず俺もファイアーボール撃っておけばいいのかな。そう思い手を出した時には相手はすでに詠唱を終えたところであった。
向かってくるのは50cmほどの火球、おそらく今までの生徒の中でも一番大きい。しかし速度はそこまで早いわけではなかった為難なく回避。するとそれを見たレオは俺がびびって後ろに逃げたと勘違いしたのか
「どうした?俺のファイアーボールにびびってんのか?それならすぐに降参することをすすめるぞ。当たったら軽傷どころでは済まないだろうからな」
なんてことを言い出した。
あの程度の速度なら一生当たらない自信はあるし、当たってもそこまでなさそうな気もするが。
このままいい顔をさせておくのも嫌なので反撃しようかな。そう思い手のひらから火球を生み出そうとしたその途端、脳裏に浮かぶのはあの日の出来事だった。
周りから向けられる視線
自分では気にしていないつもりだった。
それでも心の奥底で思っているのだろう。
もうあんな風に見られたくない、と。
魔法を使えばまたあの視線が送られるのではないだろうか。
そう考えだすと魔法を撃とうとした手は自然と下がっていった。
「ん、撃たないのか?やはり俺のファイアーボールにびびってしまったようだな。降参もするつもりは無いようだがこれで終わりだ!
炎よ!我が望みに応え敵を討ち滅ぼせ。
ファイアーボール!」
また俺に向かって先程と同じ大きさの火球が
飛んでくるがそれをまた軽々と躱す。
魔法発動後のほんの一瞬の硬直の間に俺はまたファイアーボールを放とうとした。
しかし撃てない。撃とうとしたその瞬間に脳内を巡るあの視線がジークの魔法の発動を妨げる。
「いや、だっ」
またあんな目で見られたくない、、、
そんなジークの様子を見て教師も不思議に思ったのか声をかける。
「おい、どうした151番!やる気が無いのならば降参しなさい」
「っ、すいません」
くそっ!こうなったら、、、
ファイアーボール!
レオがまたファイアーボールをこちらへと放つ。その瞬間俺は火球を横へかわしレオに向かって駆けだす。俺が駆けだしたのを見てもう一度ファイアーボールを放とうとするレオ
しかし圧倒的に遅い。
レオが詠唱の中盤に入った時にはすでに俺は懐へ潜り込んでいた。
レオは詠唱を止め後ろに下がろうとするが火球を放つため突き出していた右手を掴みそのまま父直伝の一本背負い。
流石に受け身などができるはずもなく綺麗に投げられてしまうレオ。その衝撃でどうやら気絶してしまったようだ。
「よし、勝者151番。最終試験は同じくこのグラウンドで行われるためこの第2試験が終わるまで待っているように」
「はい、わかりました」
よかった、無事突破できて。魔法組なのに一本背負いってどうなのかとも思うけど、まぁ良しとしよう。
それにしても目下の問題は、、、魔法だよな。どうしてもあの日の記憶が蘇ってしまう。心の持ちようっていうのはわかってるんだけど、二度とあの視線を送られたくないのは確かだ。
「こればっかりは慣れるしかないのかなぁ」
そんな感じで新たな問題にもぶつかってしまったジークであった。
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