第11話
静かに風が吹く少しだけひらけた場所。
そこには一つの墓石とそれに手を合わせる1人の少年。
「お父さん、、、お父さんが愛していた村は僕がしっかり守ったから、、、だから安心して眠って僕のこれからの成長を見守っててください」
先日亡くなった父。
今までの父との思い出がこの墓石を見るだけで永遠とジークの脳内で繰り返されそうだった。
「さて、早く帰らないとね。お母さんも心配してるだろうし」
名残惜しくも墓石から離れ家へと向かうジーク。その道中で思い出すのはあの夜に向けられた村の人々の視線だった。
戦っている最中でもわかっていた。あれが好意的な視線でないことは。何かおぞましいものを見るような、そんな視線。
「やっぱ、7歳の子供があんなに狂気的に魔物狩ってたらみんなからしたらおかしいよね」
きっとこれからこの村で生活していても先日でのことは皆の頭に残り続けるだろう。
ならば、とジークは一つの決心をするのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「お母さん、ただいま」
家にたどり着きドアを開ける。すると待っていたのはイスに悲しそうに座っている母親だった。
「あ、おかえりなさいジーク、、、」
以前の元気な母とは全くの別人のような。
そんな返事が返ってくる。
そんな母に今伝えるべきなのか迷ったが、それでもこれから先延ばしにするよりは今言うべきだろう。そう判断し先ほど決めたジークのこれからについて伝える。
「お母さん、ぼくこの村を出て王都に行こうと思ってるんだ。お母さんとお父さんが今まで見てきたものを見て、感じてみたいんだ。この世界にどんなものがあるのかも。
なによりこの村にいると村のみんなも先日の件で僕を怖がっちゃうかもしれない。
だから、僕はこの村を出ようと思うんだ」
そう伝えた。
今自分が思っていることを。
それを聞いた母は驚いたような顔をしながらも納得しているような、そんな雰囲気だった。
「ジークならね、きっとそう言うと思ってたわ。マルクスとも話しあってたの。もしジークがこの村を出たいって言ったなら笑顔で送り出してやろうってね。だから今マルクスの分も一緒に言うわ。行ってこい!ってね」
先程の悲しそうな顔ではないどこかマルクスを感じさせる、そんな笑顔で頭を撫でてくるサラ。
「あのね、ジーク。私はあの夜正直ジークが怖かったわ。今まで見たことないジークの一面に恐怖した。言い訳するつもりもないし、それは変わりようのない事実よ。私にはあなたの親である資格もないのかもしれない。それでも私はあなたのことを大切に思ってるわ。だからもしどうしようもない!って時はいつでも私を頼りなさい。お母さんがどんなことでも助けてあげるから。だから、だからねジーク頑張るのよ」
涙を浮かべながらも頭を撫で続けながらそう伝えるサラ。それを聞いたジークも感じた。本当にサラとマルクスが両親でよかったと。
「ありがとう、母さん」
そうただ一言返事を返す。
それを聞きサラもまた微笑む。
こうしてひとりの小さな少年は旅立ちを決めたのだった。
「まったく、使えんやつだったの」
一つの小さな小屋
その中で若者と老人が話し合っていた。
「村一つろくに潰せず、あげく子供に殺されるとはな」
老人の先程からの愚痴に笑みを浮かべている若者。
「まぁ、今回はそのお子様が少々イレギュラーだったようで。それに私の一つの目的であったマルクスは殺せたのでよしとしますよ」
「ふん、ワシとしては村が消えることが望みじゃったのだが、、、まぁいいだろう。マルクスを消した時点であの村に脅威はほぼ無いも同然じゃからな。潰そうと思えばいつでも潰せるじゃろう」
「ははは、ほんとに恐ろしいお方だ。自分が住んでいた村を平然と潰そうとするとは、
ねぇ、アステラ村、村長様?」
「ワシがあんな村の長で満足するわけがなかろう。もうじきノイルン王国の中枢までに上り詰めてみせるわ」
それを聞きさらに深い笑みを浮かべる若者
そんな2人の会話を聞くものはもちろん誰一人としていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます