第9話
村の中は既に慌ただしくなっていた。
中央には多くの人が集まっておりこれからのことを話しており中には武器を身につけている者もいる。
それらを見たジークは父への心配が一層強くなる。
「早くお父さんのところに行かないと!
"浮遊"! からの "加速"!」
宙に浮きながら全身に魔力を送り加速をかける。
そして訓練所に行こうとするがサラに引き止められる。
「待ちなさい、ジーク!危険すぎるわ。
あなたはおとなしく家で待ってなさい」
「でも、お父さんを助けないと!もしかしたら今も危険な状態にあるかもしれないのに」
「だからと言ってジークが行く必要はないでしょう。わたしだって心配よ。でも私たちが行くことであの人に迷惑がかかることもあるかもしれないわ」
母の言葉に本当に行くべきか迷う。
しかし先ほどから感じている嫌な予感が気になる。
本能が行けた叫んでいる。
今行かないと絶対に後悔する気がするんだ。
「ごめん、お母さん!絶対にお父さんと二人で戻ってくるから!」
全速力の浮遊魔法で訓練所へ向かう。
「あ...ジーク!待ちなさい!」
サラの言葉はもう届かない。
「お父さん、絶対無事でいてねっ...」
祈りながら魔力を全力で放出し目的地に向かう。
あと少し...
「着いたっ」
上空から訓練所を見下ろすジーク。
その目に映ったのは不気味な笑い声を上げているハート、数匹の魔物。
それに背中に大きな爪痕をつけられ瀕死の状態のまま倒れているマルクス。
「お父さんっ!」
ジークはすぐさま地上に降り立った。
「お父さん!お父さん!」
涙を浮かべながら何度も父親の名前を呼ぶ。
するとうっすらと目を開けたマルクス。
そして小さく口を開けながら
「...おぉ、ジー、くか。本当におっきくなった、な。お前は本当にお、れたちの立派な息子だったよ...」
苦しそうに途切れ途切れの言葉を発する。
今にも事切れそうなその命で伝えようとしているのであろう。自分の思いを。
「おれぁな、お前にすげぇ魔法の才能がある、って初めて知ったとき、は、すっげ、不安だったんだ。お前がその力でたくさん、の人を守ろうとして、そしてお前が、危険な目に、、あうんじゃねえ、かってな。
でもな、お前は自分の力におぼれないで、毎日俺の修行を真剣に受けてくれた。
だからさ、俺おもっ、たんだ。お前ならきっと大丈夫だってな。お前ならきっと後悔しない道を選べるってな。
だから、俺からお前に受け継いで欲しいことはただ一つなんだ。
俺にとってのアステラ村のみんなや、サラ、そしてジーク、そんな大切な人を守れるようなひとになれっ。国の為になんて考えなくてもいい。自分が心から守りたいとそう思えるものを見つけ守るんだ」
泣いてるジークの頭に手を置き撫で回す。
「泣きたい時は泣いていいんだ。
人はなそれを乗り、こえるたびにつよ、くなれるんだ」
マルクスの腕から力が抜けジークの頭から手がずれ落ちる。
「俺は、お前の父親で本当によかった、、、よ...」
最後にそう放ち目を閉じる。
「ねぇ、お父さん。嘘だよね?またみんなでお家でお話しして、みんなでお出かけして、お祭りにいったりして楽しく過ごすんでしょ?だから返事してよ。ねぇってば、お父さん...お願いだからなんとかいってよぉ」
大量の涙を流しながらマルクスの体を揺らす
しかし何の反応もない。
「まったく、ようやく別れの言葉が終わりましたか。無駄に言葉を並べてもどうせ今から息子も妻もすぐに後を追って行くと言うのに、今まで待ってくれた私に感謝してくれていいんですよ?」
「………」
「だいたい、身の程を弁えてほしいものですよ。あの程度の力で大切なものを守るなど片腹痛い。それに結局魔物に敗れてますし」
「………黙れ」
「そのくせ戦う前には自分に誇れるだの最高にかっこいいなどくだらないことばかり言う。依頼者の言うほどこの男も大したことはありませんでしたね」
「てめぇみたいなクソ野郎が父さんを馬鹿にするなぁ! 」
叫びながら手をかざしファイアーボールを発動する。
五発の火球が現れ周りにいた魔物を全て焼き尽くす。
「お前に父さんの何がわかるっ...」
ハートを睨みながら殺気を漏らすジーク
その殺気にあてられ息をのむハート。
そのハートに一歩、一歩と少しずつ近づく。
するとハートは突然懐から紫色のお香を取り出した。
「小僧!それ以上近づくとこのお香を割るぞ!この魔道具は俺でもテイムできないような大型の魔物も引き寄せる。もしこれを壊すと村もろとも終わりだぞ!」
それを聞き足を止める。
それをみて臆したと思ったハートは邪悪な笑みを浮かべながらジークから離れる。
「ったく、ガキが調子に乗ってんじゃねぇよ。お前なんてただ魔法が使えるだけのガキだろ?大人に敵うなんて思ってんじゃねぇよそもそもお前らが邪魔しなきゃもっと楽に済んでたのによ。無能のくせに調子にのりやがって。あのバカみたいな男は子供すら教育できねぇからすぐに魔物に殺されんだよ」
その言葉でジークの中の何かが切れた。
「てめぇは絶対に殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」
呪詛のように殺すを連呼しながら手に握るは炎魔法のファイアーランス。
ハートに飛びかかり握っている槍をハートの腹に刺しこむ。
「ぐわぁっ!っくて、めぇ。くっ...そ。
せめててめーら、もいっ、しょに地獄にきてもら、おう、か」
持っていたお香を叩き砕くハート
「ふ、は、これで、村、も終わり、だ、ざま、ぁみろ」
そして全身の力が抜け目を閉じるハート。
ハートの死を確認し、ジークは父の死体の元へ行く。
「待っててねお父さん。今から来る魔物を倒したらしっかりお母さんと弔ってあげるから。だからもう少し待っててね。
それと僕に少しだけ力を貸して欲しいんだ。
だからこの剣を借りるね」
マルクスが死してなお手放していないその剣を取るジーク。
再び魔力を振り絞り村へと戻るジークだった。
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