第7話
「よし!今日の訓練終わり!」
ジークとの剣の撃ち合いをやめそう言うマルクス。
「やっと終わったぁ。疲れたぁ。お腹すいたぁ。」
地面に座り込みダラダラとこぼすジーク
現在7歳にまで育っており魔力量はここ二年でさらに増え既に宮廷魔導士を超えている。魔法操作もまた、サラの指導でさらに上達しつつある。
「ほら、そんなことはどうでもいいからさっさと帰るぞ」
ジークのダラけた姿を見下ろしながらそう告げる。
ジークも家に帰り着きベッドで寝転がりたいため肯定する。
「うん、わかったー」
こうしてたわいのない話をしながら家へと向かう二人。するとジークが狼の魔物であるワーウルフ五匹に囲まれている馬車を見つけた。
「お父さん!」
「ああ!」
二人は同時に駆け出し魔物の排除に向かう。
「ファイアーボール!」
ジークが得意のファイアーボールを手を前にかざし発動する。ジークの手のひらからは1メートル程の炎の球が3連続で発射されワーウルフを襲う。着弾後には焼け死んだワーフルフの死体が残っていた。マルクスも残っていた二匹のワーフルフを鉄剣でから殺した。
「すいません、助かりました!」
突然声が馬車の中からかけられる。
すると恰幅のいいおじさんが馬車から降りてくる。
「いやぁ、本当に助かりましたよ。御者台で馬を歩かせてたら急に魔物に囲まれましてな。馬車の中に篭りながらも死を覚悟してましたぞ」
たいそう嬉しそうに先程までのことを話す御者。そのテンションに少し違和感を覚えたマルクスだが大したことはないだろうと話を続ける。
「そういえば、そろそろ商人が来る時期だったか。今年はワンドさんじゃないんだな」
ワンドとは毎年アステラ村に訪れる商人の名前である。王都ではあまり有名な方ではないがワンド商会の会頭であり、その交渉術は大手の商会の会頭にも負けないだろうとマルクス自身が身をもって知っている。
「実は最近ワンド商会が波に乗り始めまして会頭も大忙しなのです。そのため一応ワンド商会の三番手をやらせていただいております私ハートがアステラ村に参らせていただきました。どうぞよろしくお願いいたします」
そう言いながらとても気品のある優雅な礼をするハート。
「はい、こちらこそよろしくお願いします。どうせなら村まで護衛致しましょうか?私たちも丁度村に戻るところでして」
ちょうどいいと思いそう提案するマルクス
「それはそれは、是非ともよろしくお願いしますぞ。あなたもお子さんもとてもお強いご様子ですしね」
「ははは、俺なんてまだまだですよ」
そう笑いながら否定するマルクス
そんな後も王都の話を聞きながら村へ戻る三人。
ジークは村へ帰るまでずっとハートに違和感を感じていたがその正体は分からなかった。
毎年連れてきていた護衛が今年は一人もいなかったということに...
「よし着きましたよ。ここが村長の家です」
村長の家まで案内してマルクスとジーク
「ありがとうございました。後ほどお礼に参りますね。お二人のお陰で何事もなくこうして村に来れましたので」
「いえいえ、そんなに大したことないですよ。結局魔物も現れませんでしたしね。
それでは、私達はここで。行くぞジーク」
「うん!じゃあねおじさん」
「あぁ、またね小さな魔法使いさん」
笑顔でジークに手をふるハート。
それを無視してマルクスの下に走っていくジーク。
ハートと別れた二人は我が家は向かう。
そんな二人に鋭い視線を送るハートだった。
「ねぇ、お父さん。なんかあのおじさん嫌な感じがしなかった?」
ジークが先程から感じていたことをマルクスに尋ねる。
「ん、そうか?俺は別に感じなかったが。
気のせいじゃないのか?」
「そう、だったのかな」
マルクスにそう言われるもやはり気になってしまう。それほどにあの男に不気味な何かを感じたのだ。
何にそんなことを感じたのか。
思い出せっ。あの時の状況を。助けに行った時なぜ5匹のワーウルフは動いていなかったのか。なぜハートはまだ襲われていなかったのか。なぜ...
「護衛がいなかったんだろう」
毎年ワンドは最低でも3人の冒険者を護衛として雇っていた。それもそのはずだ。ここ大地の森は多くの魔物が生息しておりいつ襲われてもおかしくない。それを護衛なしで武器も身につけないなんてまずありえない!
「おとうさん!やっぱりあのおじさんは怪しいよ!ワンドおじさんならあのおじさんに絶対護衛をつけるはずだし、ぼくたちが助けた時にまだ襲われていなかったのもへんだよ。
囲まれていたのに馬車の中に一つはあるであろう武器も身につけていなかったし!」
出会った時から感じていた違和感の正体にようやく気付いたジークが口早にマルクスへと告げる。
「っ!それもそうだな。俺たちが見つけた時もワーウルフは一切動いていなかった...
俺は今からもう一度村長の家に行ってみる。お前は今すぐ家に帰ってサラと待っていろ!」
ジーク持論を聞いてすぐさま村長の家に行くべきだと判断したマルクスはジークにそう支持する。
「まって、僕も行くよ!」
「ダメだ!俺たちの気のせいかも知れないし、もし何かしらのことが起きたらお前がサラを守るんだ!わかったか?ジーク。
お前は俺たちの立派な子供なんだそれくらいできるよな?」
そういい笑顔でジークの頭を撫でる。
マルクスの言葉を理解したジークは大きく頷いて
「わかった!絶対僕がお母さんを守るから。
だから、お父さんも気をつけてね!絶対帰ってきてよ!」
「おうよ!」
こうして全力で走り出すジークとマルクス。
二人とも振り返らずただただ全力で走った。
「そっか、それで帰ってきたのがジークだけなのね。何事も無ければいいのだけれど」
ジークは家に帰りすぐにサラに今日の出来事とマルクスがいない事情を話した。
「とにかく私たちは家であの人の帰りを待ちましょうか。ジーク、夕食を作るから手伝ってちょうだい」
「うん、わかったよお母さん」
こうしてマルクスの帰りを待ちながら夕食の準備をする2人。
その後夕食を作り終えマルクスを待つが一向に帰ってくる様子はない。この時間になっても返って来ないということは十中八九なにかあったのだろう。そうあたりをつけて2人ともそわそわしている。
「ねぇ、お母さんやっぱり僕一回村長の家を見に」
様子を見に行く
そう言おうとした瞬間部屋にドアがノックされる音が響く。
「あら、やっと帰ってきたのね、あの人ったら」
そう言いながらドアを開けるサラ。
するとドアの向こうに見える姿はマルクスではなく村長の妻でありサラの母親であるミラだった。ミラは荒い息を吐いており急いで来たことがうかがえる。
「大変よ、サラ!」
「ど、どうしたのよママ?そんなに慌てて」
マルクスは今村長の家にいるはず。
その家に住んでいるミラが慌てた様子でうちに来た。
そのことに嫌な気がしながらミラに尋ねる。そんなサラに一番聞きたくないセリフが投げられる。
「マルクスくんが、このままじゃ死んじゃう!」
そう聞き頭の中が真っ白になるサラ
そしてすぐさま家から飛び出すジークだった。
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