第6話

ジークの目に映るのは美味しそうな匂いを漂わせる屋台、踊っている人々、お酒を飲みまくっている人など様々な人達だった。


「わぁ!一年前と同じでとっても賑やかだぁ。ねぇお母さん!」


目に入るもの全てが輝いて見えるジークは気分を高揚させながら歩き回る。


「ふふふ、ジークったら。あまりはしゃぎ過ぎないようにね?それと私からあまり離れないようにね。迷子になっちゃうと探すのが大変になっちゃうから」


「はーい!」


我が子のはしゃぎように思わず笑みをこぼしながらも注意をするサラ。その横でもはしゃぐジークを笑顔で見ているマルクス。


「ほんっとに、こういう場面だけだと他となんら変わらないただの可愛い子供なんだけどなぁ。いつから俺の扱いが酷くなって生意気になっていったのか...」


「それもあの子が成長していってる証拠じゃない。それに私にはとても素直で可愛いわよ?」


「それはお前が怖いか「何か言ったかしら?」お前が優しいから懐いてくれたんだろうな、うん」


サラが怖いという事実を言おうとしたその瞬間に女の物とは思えないほどの殺気を帯びた声に必死に取り繕うマルクス。

その返事を聞き満足そうな顔をして分かればいいのよ。などど御満悦な様子のサラ。


「それにしても本当に元気でいい子に育ってくれたわね」


ジークを見る目に優しさを宿す。

そんなサラを見てマルクスもまた笑みをこぼす。


「あぁ、本当にな。俺たちの自慢の子供だ。これからもずっとな」


「えぇほんとうに」


「おとうさーん!おかあさーん!早く早く!

あ、あとおかあさーん!このお肉食べたい!」


「わかったから、ちょっとまってなさーい!ほら、あなた行くわよ」


「あぁ!」


こうして祭りを楽しんだ三人だった。


その後



「はぁ〜祭り楽しかったなぁ。料理もいっぱいあって美味しかったし!来年もまた絶対行こうね!」


「あぁ、また来年もまた三人で行こうな。

ところでジーク、サラはどこに行ったんだ?」


先程から姿が見えないサラが心配になりジークに尋ねるマルクス。


「んーっとね、お母さんならお酒の瓶を持ってお部屋に行ってたよ〜?」


先程サラが高価そうな瓶を持って部屋に行っていたちめ印象に残っていたジーク。

それを聞いた瞬間マルクスの顔は一気に青ざめた。


「な、なんだと!ジーク!それは間違い無いのか!?」


摑みかかる勢いで問いかけてくるマルクスを不思議に思いながらも


「うん、多分間違いないと思うよ。瓶に付いていた紙にお酒って書いてたし。お母さんもお酒久しぶりに飲むわぁって言ってたし」


「そ、そうか...」


それを聞き諦めたような顔をして俯くマルクス。そして覚悟を決めた顔をして


「ジーク。俺は今からサラの部屋に行ってくる。お前は今すぐ部屋に戻るんだ。いいな?絶対にサラの部屋に入ってくるんじゃないぞ!」


鬼気迫る勢いのマルクス。


「う、うん」


「よし、じゃあ行ってくる。ジークよお前は長生きするんだぞ!」


そういいサラの部屋へ向かう。

結局今のはなんだったんだろう?と思いながらも父の言いつけ通り部屋に戻る。

そして寝ようとするが


「うぅ、おしっこぉ」


トイレに向かうジーク

ジークの部屋からトイレに向かうにはサラの部屋を横切ってしまうがドアも閉まっているし大丈夫だろうと判断したジークは突き進む。そして、サラの部屋を横切った瞬間


ぐわぁ!


父の悲鳴が聞こえた。

すぐさまサラの部屋の扉のドアノブに手をかけ一瞬開けるのをためらったが、すぐさまドアを開ける。


「お父さん!何かあったの?!」


そして目に入るのは


「うへへぇ、こらぁまるくすぅ!情けないぞぉ。

そんなんだからジークにも負けちゃうのぉ。だから私が鍛えてあげるぅ。ほらほら早く立ち上がってまだまだいくよぉ」


酒瓶を振り回す酔いに酔った母とその母に足蹴にされる父。


「がっ、うぅ。ジーク...助けてくれぇ」


ドアを開けて入ってきたジークにすぐさま助けを求めるマルクス


「あらぁジークじゃなぁい。ひっく。ジークもいっしょにおとーさんをいじめちゃおー」


そう言いながら手招きするサラ

それを見てジークはすぐさま


「"加速"ぅ!」


部屋へと逃げた。


「あぁ、ジークぅ」


逃げるジークの背中を見て悲しげな声を上げるマルクス。


「ごめんお父さん!僕は無力だ」


こうしてサラにしばかれて泣くマルクス。

そんな中ジークにとって5回目の祭りの日を終えるのであった。

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