第4話

「よし、いくぞ!ジーク」


剣を構えマルクスがジークに斬りかかる。

その一閃をかろうじて弾くジーク。

そのことに笑みを浮かべながらマルクスは再びジークに斬りかかる。

辺りに響き渡る木剣が叩き合う音。


「ちょっと、お父さん。大人気なくない!?」


マルクスの攻めを全て辛うじて交わしながら5歳の我が子に容赦遠慮なく斬りつけてくる我が父に叫ぶジーク。


「ははは!今日はジークが魔法を使わないで剣の実力だけでの訓練の日だからな!こういう日に勝っとかないとなんだよ。魔法使われたら俺普通に負けるし。

はぁ、5歳の我が子に手加減してもらってそれを全力に潰しに行く親ってなんなんだろうなぁ...」


絶望したような顔をして呟くマルクス


「あのねお父さん?一応今試合中だよ?」


そういい呆れたような顔をしながら剣の先をマルクスの横腹に当てるジーク。


「あぁ!ジークてめぇ!汚ねぇぞ!」


「いや、お父さんがぼーっとしてるからじゃん...隙だらけすぎだし、何より敵の隙を見逃すなって言ってたのはお父さんだったじゃないか」


じゃあ、もう一回!あと一回だけでいいから!」


ついには駄々をこねだすマルクスとそれを何とも言えない目で見ているジーク。


「僕今ので疲れたからいやだよぉ」


「いいじゃねえかよぉ、ジーク。勝ち逃げしないでくれよぉ。このまま負けたままじゃ恥ずかしくて外も歩けねえよ」


「今のあなたの姿が一番恥ずかしいわよ!

ねぇ、マ・ル・ク・ス?」


そう言い姿をあらわすサラ。


「な、なぜサラがここに...」


「あら、愛しの夫と我が子に弁当を作ってきたのよ。ちょうど昼ごろだしね。いつもジークも帰ってすぐお腹すいた!って言ってくるしお弁当があった方がいいかなって思ったのよ。じゃあ私が来た説明もしたし今あなたがやっていたことの説明もしていただきましょうか?」


表情はとても優しい笑顔だ。

だがジークとマルクスは一瞬で察した。


((これはヤバい笑顔だっっっ))


サラは普段はとても優しい。

だが時々怒る時はまさに鬼だ。

表情は変わらないが普段と感じるオーラが異なり今にも殺られるんじゃないか。という殺気すらも放つ。

そのためジークとマルクスは極力サラを怒らせないようにしようと話していた。

訓練の時間はいつもサラは来ない。

そのためマルクスは油断していたのだろう。

まさかあの痴態を晒している瞬間にサラが現れるとはっ...。

現状理解そして解決の為の手段を即座に考えるマルクス


「い、今のは違うんだよ、サラ。ジークの訓練の一環でな相手がどんなに下手に出てきても絶対に油断するなっていうな。

なぁ、ジーク?」


ジークに助け舟を求めるマルクス。

視線を受けたジークはマルクスの意図を瞬時に察してすぐさま...


「そうだったの?でも僕に負けた時お父さんほんとに悔しそうだったよ?あれが演技だったとは思えないし...」



すぐさまマルクスを売った。

今回に関してはジークになんら非は無い。

しかしこれ以上マルクスを庇うと自分に飛び火がくるかもしれない。

瞬時にそう考えたジークはマルクスにとって詰みの一言を放ったのだ。


「お、おい!ジーク!お前俺を売りやがったな!」


「ふふふ、じゃああなた今からゆっくりお話ししましょうか。ジーク弁当はここに置いておくからゆっくり食べてていいわよ〜」


「うん、わかったお母さん!あんまりお父さんをいじめないようにね〜」


「ええ、今日はいつもよりは抑えめにしといて残りは家でするわ」


満面の笑みで答えるサラ


引きつった笑みを浮かべるマルクス


「な、なぁサラ?冗談だよな?今からの説教で終わりだよな?そうだよな?!俺はお前を信じてるぜ!?」


必死の形相で訴えるマルクス。

その言葉にサラは


「あら、私嘘だけはつかないわよ?」


ただの一言。

しかしその一言でマルクスを絶望させるには十分だった。

顔が青くなるマルクス。

これからの説教のことを考え絶望しているのだろう。

マルクスは藁にもすがる思いでジークに助けをもとめた。


「なぁジーク!!!!助けてくれ!」


そういいマルクスはジークがいる方向を向く。

視線の先では...






「ん〜。このお肉すんごく美味しい!」


幸せそうにお弁当を食べていた。


「じぃぃくぅぅ...」


「さぁ、じゃあ行きましょうか?」

サラに引きずられて森の奥へ行くマルクス

その後「ごめんなさい!!」という叫び声がジークの下に何度も届いた。


「ん〜。このおにぎりもおいしいや!」




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