第2話
「ふぁいあぼーる!」
幼なさを感じさせる声。
すると1m程の大きさの火球が現れ岩に向かって飛んで行く。
声の主であるジークは2歳になっている。
今は母であるサラとともに魔法の修行をしている。
「はぁ、、、」
サラはジークの魔法を見て大きなため息を一つ
「1歳でスラスラと喋れるようになったと思ったら次はその半年後には魔力操作。
2歳でファイアーボール発動って...」
一般では子供が魔力操作ができるようになるには4歳ごろからだ。そのため魔法発動となるとどんなに早くとも5歳程度からだ。
それをジークは僅か2歳という異常な速さで成し遂げた。それだけでもすでにおかしいのだが...
「ただでさえ魔法使えるのがおかしいのにこの威力...か」
サラの視線の先には先程まで5メートルほどあった岩が粉々に崩れていた。
「初級魔法のファイアーボールで5メートルの大岩を粉々なんて宮廷魔法士並みじゃない。それを2歳の子供が...」
一言で表すなら"異常"だ。
サラも魔法士であるがファイアーボールで壊せるのは精々2メートル程度だ。
「2歳の子供に既に魔法の威力で負けてるのかぁ あはは... はぁ...」
自分の子供が異常なほどに魔法に優れていることに素直に喜んでいいのかが分からないサラはまた大きなため息を一つ。
「っと、悪いなサラ。薬草がなかなか見つからなくて少し遅れちまった。」
ジークのことを考えながら憂鬱になっていたサラの下に日課である薬草採取を終えたマルクスがやってきた。
「ん?そんな顔してどうしたんだよ?」
サラのなんとも言えない表情に疑問を持ったマルクスはサラに訪ねる。
「んーっとね、とりあえずあれを見て。」
そう言いながらサラはジークが先程粉々にした大岩を指差す。
「これは...また見事に粉々になってるなぁ。何があったんだ?」
「...ジークよ」
「...ん?」
サラの言葉の意味が分からずつい聞き返してしまう。
「ジークがやったのよ」
「...は?」
二度目にしてようやくサラの言葉の意味が分かった。しかしそれでも分からない。
2歳の子供が5メートルの大岩を?
「それに使った魔法は初級魔法のファイアーボールよ」
「...は?」
サラの言葉にさらに困惑する。
それも当然だろう。なにせ我が子はまだ2歳だ。
サラから聞いており魔力操作が出来ることは聞いてはいたが、既に魔法が発動できるとは思ってもいなかった。
それに加えてマルクスの記憶が正しければこの大岩は5メートルはあったはずだ。
それを初級魔法ファイアーボールで。
つまりすでに宮廷魔法士に匹敵するほどの魔法の威力だ。
そのことを考えれば考えるほど混乱していく。
「まじかよ。たしかにジークはすごいとは思っていたがこれは...」
化け物
マルクスは出かけていた言葉を飲み込む。
どんなに異常でも大事な我が子。
妻がお腹を痛めて産んでくれた子供だ。
それを化け物など言えるはずもない。
「まぁ、たしかに異常だけど使い方を間違えなければいいのよ。むしろ2歳でこの威力よ?大人になったら本当に英雄になっちゃうかもしれないわね。」
サラが微笑みながらそういう。
それもそうだ。我が子が間違えた道に進まない様にするのが親の務めだ。たかが少し魔力操作に長けているだけで何を臆する必要がある。
「それもそうだな。俺たちがこの子を導いてやるんだよな。」
「ええ。あなたも子供に負けないようにもっともーっと強くならないとね?」
サラはマルクスを見ながら茶化すように言う。
「う、勿論だ!子供に負けたら親の面目丸つぶれだし...」
「ふふ、とりあえず今日はもう帰りましょうか?」
「ああ、そうだな。おーい、ジークそろそろ帰るぞ...ぉぉお!?」
マルクスの目の前には浮遊魔法を使い3メートル程浮いている我が子がいた。
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